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魔法薬からの挑戦状

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魔法薬からの挑戦状

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 惚れ薬のゴーレムをあたしが止める! あたしがやらずに誰がやる!
 それはかつて、惚れ薬のゴーレムに立ち向かう前に滝宮 沙織(たきのみや・さおり)が語っていた言葉だった。
 けれど、その惚れ薬のゴーレムが身体をすりぬけていった、その後に。
 沙織には、とある感情が湧きあがっていたのだった。
 その視線の先にあるものは、武骨な鋼色の巨体。
 塗装などされておらず、鋼色の輝きを剥き出しにした野性味溢れる姿。
 武骨でありながら、頼りがいのある身体。
 無表情な顔すら、クールに見える。
 いや、実際。
 物言わぬ彼は、クールなのだろう。
 その冷徹な頭脳には、やはりクールな思考が宿っているのだろう。
 考えれば考えるほど、沙織は混乱してくる。

「あれ? 何だろ、この気持ち……何だか胸がそわそわする……」

 沙織に宿った、その気持ち。
 目の前の彼に伝える術を、今の沙織は持っているのだろうか。
 いや、この気持ちは何という気持ちなのだろうか?
 ああ、鋼の彼よ。
 ああ、アイアンゴーレムよ。

「何だろ、やだ、ゴーレムの顔がまともに見れない……」

 あくまでクールで無表情なアイアンゴーレムの精悍な顔が、キラリと光る。
 それは、まるでウインクのように見えて。
 沙織の胸は、激しく高鳴っていく。

「アイアンゴーレムのこと意識しちゃってる……。あたし顔が熱い?」

 これって、もしかして……。
 その気持ちに、沙織は気づく。
 これが、恋。
 これが、好きって気持ち。
 でも、どうしよう。
 彼はゴーレム。
 彼は、武骨なゴーレム。
 彼は、アイアンゴーレム。
 どうしたら、彼にこの気持ちを伝えられるのだろう。

「好きって、気持ち、伝えたい。でも、恥ずかしいよぅ……。あ、あたし、どうすれば、いいんだろ……」
 
 もじもじする沙織を、辺りの生徒達は扱いに困った顔で見ている。

「この愛を伝えるために、クロスカウンターしないといけないんだけど、あたし、そんな勇気、とても出せない……」

 なんでだよ……というツッコミは恋する沙織には聞こえない。
 恋する乙女は余計な音はシャットダウンである。

「って、ゴーレムさんをいじめちゃ駄目! この人はあたしの大好きな人! 大好きな人をいじめたら、許せないんだから!」
 
 そう、あたし以外は、そんな事をしちゃダメだ。
 魔法薬の効果で、沙織の思考はそちらへと軌道修正される。

「あたしの想い、届け……!」

 そして放たれる、拳と拳。
 アイアンゴーレムの放つ鋼の拳と、沙織の放つ愛の拳。
 壮絶なクロスカウンターの後、沙織はアイアンゴーレムの拳にキスをする。

「好きだよ、あなたのこと」

 そう言って、真っ白に燃えつきながら。
 ちなみに全部薬の効果なので、目が覚めたら正気に戻る。
 アイアンゴーレムに熱血告白をした記憶と共に。