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半透明な少女の願い

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半透明な少女の願い

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 傾いた日が伸ばした影が、辺りを黒く染めてゆく。
 不明者は全員救出され、金品目的に攫った犯人達は、逃げた数名を追うものの、殆どを捕獲していた。

「……居たわ」

 秘めたる可能性から見鬼を発動しているセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が、その横に居るセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)へ向けて言った。
 事件はほぼ解決となった古城内で、2人は少女の幽霊を探している。

「ねえ」

 普段の水着姿ではないのが激しく……    いや、少々残念ではあるが、国軍の制服姿でセレンフィリティは少女の背へ声を掛けた。

「あー、待って」

 驚いて振り返る少女へ、セレンフィリティは続ける。

「あたしたち、別に怪しい者じゃないよ? ところであなた、名前は?」

 ゆっくりと少女へ近寄るセレンフィリティを、セレアナは少しの警戒と共に見ていた。
 少女は俯いたまま、首を振る。

「嫌な事は言わなくてもいいから、とりあえず、あたしの話、聞いてくれる?」

 セレンフィリティの言葉に、少女が頷くのが見えた。

「はい、こちらセレアナ」

 セレアナの銃型HC弐式に通信が入り、少女とセレンフィリティを視界に入れながら、セレアナは2人と少し距離を置く。

「ラズィーヤですわ」

 シリウスから魔法携帯【SIRIUSγ】V2を借り、連絡をしてきた。セレアナは今、目の前で幽霊と会話をしているセレンフィリティの事を伝える。

「実はその幽霊ですけれど……」

 ラズィーヤの声に戸惑いが混ざる。

「生きていらっしゃいますわ」
「え……っと、どう言う事かしら……」

 所謂生霊と言うやつか。シュリーが調べて行き着いたのは、墓所ではなく、とある病院のベッドだった。
 残念な事に、後は死を待つのみの老婆――、それは、今セレンフィリティの目の前に居る少女の本当の姿なのだ。
 学院と城で起きた誘拐事件。何とか阻止しようと頑張るのだけれど、夢だからか触れられなくてね、と、老婆の中では『夢の中の出来事』を、訪れたシュリーに話した。そして、かつては住んだ城の思い出も。

「……判ったわ、有難う」

 セレアナは通信を切った。セレンフィリティはゆっくりと、少女の話を聞いている。

「セレアナ」

 こちらへ向かってくる姿に気付き、セレンフィリティは言った。

「この子の願い、叶えてあげられないかしら……」