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リアクション
ニルヴァーナの戦い 3
ニルヴァーナの大瀑布にて。
「来てくれるって信じてたぜ」
シャムシエル・サビク(しゃむしえる・さびく)を見据えて、
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は言った。
「そうまでして、ボクにケンカを売るなんて、たいした度胸だよ。
腐れ縁っていうのも、ここまでくると、
いっそすがすがしいものなんだね」
「お前を一人寂しく忘れた存在になんてしてやらないって言ったろ?」
シャムシエルに、シリウスは笑みを向けた。
(これが最後だ。
本当の最後の戦い。
必ず、ボクは、こいつと決着をつける!)
シリウスのパートナーのサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)が、
決意の下、油断なくシャムシエルの様子を伺う。
「じゃあ……」
シャムシエルの身体が、一瞬、消える。
「遊んでやるよ、寂しがりなキミたちのためにね!」
死角からの一撃をシリウスが受ける。
「……そうこなくっちゃな!」
口元から血を流しつつ、シリウスが反撃を加える。
3人の影はめまぐるしく交錯する。
そして、やがて、シャムシエルの視線を、
サビクが捉える。
「止まれ!」
サビクだけの能力、花嫁掌握により、
剣の花嫁である、シャムシエルの動きが止まる。
「ぐ……!」
その隙に、シリウスは、シャムシエルを押さえつけようとするが。
「これで終わりだ!
シャムシエル!」
しかし、次の瞬間、シリウスの身体は宙を舞う。
目の前で、シャムシエルが、狂気に満ちた目を見開き、笑みを浮かべていた。
「しまっ……!」
シリウスは、シャムシエルに、
もろともに、崖に落とされてしまったのだ。
「シリウス!?」
大瀑布の水音が、響き渡る中、
サビクが絶叫する。
「シリウスーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
「どうにも、運命って奴は、
面白くできてるもんだぜ」
聞こえてきた声に、サビクが視線を送ると、
シリウスは、崖から突き出した枯れ木に服が引っ掛かり、
落ちずにすんでいた。
リトル・ウィッシュの力だった。
シリウスは、最後に見た、シャムシエルの表情を思い出していた。
大瀑布に落ちていく時の、シャムシエルは、
それまでとは一転して、
何かから解放されたような顔をしているように思えたのだ。
「馬鹿野郎が。
こんなふうになってまで、変わってなかったな……」
シリウスはひとりごちる。
大瀑布に落ちた、シャムシエルは、
そのまま行方不明になったのだった。