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【第七章 最終決戦】


……デスクエスト内、終わりの魔城……
 涼司のデータが消えてしまうというハプニングはあったものの、『迷妄の盾』を取り戻した一同は、解析班の割り出したとおりのコマンドを入れ『欺瞞の冠』も手に入れた。こうして『絶望の剣』『迷妄の盾』『悪意の鎧』『欺瞞の冠』の四つのアイテムが揃った。そして一同は最後の敵、魔王がいる『おわりのまじょう』へと降り立つ。
「みんな、これが最後の戦いだ! セーブデータ消されちまって俺はあまり役に立てないかもしれないが、絶対にクリアしようぜ!」
『おお――――!』
 涼司の言葉に一同が応える。そして魔城の入口が開かれた。
「な――」
 中の光景に涼司が息を呑む。扉を開けたそ先から城内はモンスターで溢れていた。さすが鬼畜ゲーだ。クリアさせないつもり満々である。
「や、や、やってやらぁ!」
 一同が圧倒されている中、やけくそ気味に涼司が突っ込んだ。それを皮切りに一同も魔城へと突入していく。こうして最後の戦いの火蓋が切られた。
「ぎゃー」
 しかし涼司はすぐにやられてしまい、もう一度セーブポイントからやり直すのであった。

 多くの戦闘不能者が出たが、一同は魔王のいる部屋へとたどり着いた。大きな部屋の向こう側に魔王が座っている。
「にんげんどもめ よくきたな。われは まおう ザルシオン。おまえたちなど わたしが あいて するまでも ないわ!」
 魔王ザルシオンが立ち上がり、持っている杖を振るう。すると魔法陣が生み出され、そこから『絶望の剣』のガミスピラと『悪意の鎧』のメルキオスが現れた。
「ふはは。おまえたちを たおすために じごくから もどって きたぞ!」
「しぬが いい!」
 なんとも最悪な組み合わせだ。しかし一同はデスクエストをプレイしていく中で、精神的にも強くなっていた。だから気後れすることはない。むしろ一度戦ったことのある敵なのでチャンスだとさえ思っていた。
 メルキオスが前回同様に魔法陣で防御壁を作り、火球を降らせてくる。
「ソルジャーの方、集まってください!」
「スプレーショットで打ち消すんだ! 手伝ってくれ!」
 メルキオスと戦闘経験のある久沙凪ゆうと渋井誠治が率先し、スキルを使って一斉掃射する。その間に他の生徒が魔法陣を破壊し、防御壁のなくなったメルキオスへと攻撃を加えた。
「ザルシオンさまああああああああ!」
 一同はメルキオスを何もさせることなく倒してしまう。
 ガミスピラの方も同様だ。
「ガミスピラの弱点は雷です。雷術か轟雷閃を使える協力お願いします」
「右手の剣に注意して! あれは受けることも出来ないんだ!」
 橘恭司と十倉朱華が指揮をとり雷属性の攻撃を浴びせダメージを与えていく。
 そのとき。
「ガミスピラアアアアアアアア!」
「美羽ちゃん!?」
 美羽は前回の戦いでの雪辱に燃えていた。ベアトリーチェにスキル・パワーブレスをかけてもらうと、地面を強く蹴って跳躍、
「ここで会ったが半日めええええええええ!」
「みじかっ! てかその使い方は間違ってるよ!」
 朱華が突っ込む。美羽の締まらない決め台詞は置いておいて、剣の方はガミスピラの額へと突き刺さった。
「ぐあああああああああああああ!」
 ガミスピラが崩れるようにして消えていく。
 こうして一同はあっという間にガミスピラとメルキオスを倒してしまった。
「さあ、次はお前の番だぜ」
 そこにちょうど前回セーブしたポイントから戻ってきた涼司が現れ、肩で息をしながら言った。そして涼司がザルシオンに切りかかる。
「何!?」
 涼司の攻撃がザルシオンの身体をすり抜けた。しかし相手の攻撃は涼司へとあたる。
「またか――――!」
 涼司はデータと化し消えていった。おそらく今頃は前回のセーブポイントへと戻されいるころだろう。
「ぐっはっはっは! わたしは おまえらと ちがうじげんに いるのだ! きさまらの こうげきは きかぬわ!」
「ここにきてなんというチート……」
「それじゃああいつを倒せないってことかよ!?」
 當間兄弟がうなるようにして言った。これには一同もまいってしまい、停滞ムードが漂う。
 そのとき。
 一同が集めた『絶望の剣』『迷妄の盾』『悪意の鎧』『欺瞞の冠』が独りでに宙に浮かび上がった。そして漆黒の表層が崩れていきまばゆい黄金の輝きを放つ。
「うわっ」
 光が収まるとそこには四つのアイテムを装備し、神秘的な光に包まれた一人の男が立っていた。
「お おまえは! なぜ ここにいる!?」
 余裕の笑みを浮かべていたザルシオンが一転して困惑した表情になる。
「あなたはもしかしてタニード王!?」
「いかにも わたしは タニードおうだ。ふういんされし わが あいてむ よくあつめて くれたな」
 椎名真の問いにタニード王と名乗る男が答えた。そう、一同が封印されていた四つのアイテムを集めるたことにより、タニード王の英霊を呼び起こしたのだ。
「ゆうき ある ものたちよ。いまいちど  ザルシオンを たおすため きみたちの せいぎの ちからを わたしに わけてくれ! わたしに むかって てを かざすのだ!」
 タニード王が剣を構える。一同はタニード王に向かって手をかざした。すると彼らの身体が淡く光りだし、それが帯状となってタニード王へ集まっていく。
 タニード王の剣が激しく発光し刃の部分が伸び上がる。
『いっけええええええええええ!』
 一同が叫ぶ。
「や やめろ! よせ!」
「むに かえれ ザルシオンよ!」
 タニード王が剣を振り下ろした。剣から放たれた閃光が次元の壁を突き破りザルシオンを呑み込む。
「おのれええええええええ! このわたしがあああああああ!」
 そして魔王ザルシオンは消え去った。

……蒼空学園、デスクエ攻略合宿場……
『お――――!』
 場内が歓声に沸く。
 ザルシオンを倒したデスクエスト内ではエンディングとスタッフロールが流れている。とてもチープなエンディングだったが、一同にとっては感慨深いものがあった。感動して泣き出すものもいた。エンディングが終わると一同の携帯電話からデスクエストのアプリゲームが消えた。呪いが解かれたのだ。
 一同が祝賀ムードの中、ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)が合宿場に現れた。
「私もデスクエストに呪われちゃってたんですけど! ……あれ?」