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闇世界の廃校舎(第1回/全3回)

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闇世界の廃校舎(第1回/全3回)

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第10章 切り取られし顔

-AM5:30-

「さっきからゴーストばっかり・・・まったく、きりがないじゃないか!」
 ランスで連撃をくらわすものの、怯まず向かってくるゴーストたちに向かって美雪子は愚痴をこぼす。
「俺は今・・・燃え滾る不屈の戦意で一杯だ!キミのフトモモに誓って、力の限り戦い抜く!」
「いいから!真面目に戦わないと絶対に死にますわよ!」
 美雪子に向かって無駄なアピールをする仁を、ミラが叱り飛ばす。
「着いたぞ・・・ここだ」
 速人は数時間前に、急に気分が悪くなった冷凍庫を指差す。
「開けるぜ・・・」
 謎解きで得た鍵を使ってラルクが冷凍庫を開く。
 そっと中を開けるとそこには、斬り取られた人の顔が保管されていた。
 生徒たちは思わず目を逸らした。
「顔が沢山・・・顔が・・・あは・・・あはは」
「いけない!ラルク・・・そっちに行っては!」
 冷凍庫の中にある顔、未練と妄執の塊に触れようとするラルクをオウガが彼の腕を掴み止める。
「俺は一体・・・」
「おそらく死者の念に引き込まれそうになったのだな」
 我に返ったラルクを、オウガは心配そうな表情をしながら言う。
「何か聞こえないか?」
 イーオンの言葉に生徒たちは耳を済ませて聞く。
「―・・・やっと・・・やっと返ってきた・・・。私の・・・ボクの・・・俺の・・・顔・・・が」
 ボソボソと呟くような声が、室内のあちこちから聞こえる。
「奪われた顔をようやく取り戻せたということか」
「もしかして・・・この顔の持ち主・・・霊の声でしょうか?」
「そうかもしれないでござるな・・・」
 問いかけるようにぽつりと言う陽太に、ゲッコーは霊たちの喜びの声を聞きながら言葉を返した。



 生徒たちがしばらく霊たちの声を聞いると、冷凍庫に保管されいた顔はパキィンッと音を立てて割れ、溶けるように消え去った。
「これでのっぺらぼうたちはもう現れないのよね」
「たぶん・・・そうですね」
 月夜の言葉に刀真が答えるように言う。
「そろそろ夜が空けるな・・・トンネルの方へ行こうぜ」
 調理室の外で待機していた武尊が生徒たちに声をかける。
 校舎の外に出ると、生徒たちはトンネルの方へ向かった。

-AM6:00-

「なぎちゃん大丈夫?もう少しだから一緒にがんばりましょう」
 幸は眠たそうに目を擦るなぎこと手をつなぎ、転びそうになる彼女をおんぶしてあげた。
 なぎこは幸の背中でスヤスヤと寝息をたてる。
「誰だよ今の・・・脅かそうとしたってそうはいかないぜ」
「えっ、何も言っていませんよ?」
 不思議そうに首を傾げて言うアリシアに、レナードは顔を青ざめさせる。
「・・・ないで・・・・・・行かないで・・・・・・」
 行方不明者の未成仏霊が、彼らをこの町に引きとめようと声をかけてきたのだった。
 歌菜が蠢く影に向かって鉄パイプを投げつけると、葉が擦れ合うようなザワザワッと不気味な音がトンネル内に響く。
「これで沈めるっ、唸れ、私のランス!いっけぇーっ!」
 影に向かって、ランスで連撃をくらわす。
「歌菜ねーちゃん、ボクたちで先陣切っちゃおう!みんなが安心して通れるようにさっ!フォローよろしくね〜。ダーッシュ!」
「よっし!リーズちゃん、行こうか!道は私たちで切り開くっ」
 生徒たちは先にトンネルの外へ駆け出ていった。
「本体がない影だけの相手じゃ倒しきれないか・・・」
 歌菜とリーズも、トンネルの外へ出てた。