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隠れ里の神子

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隠れ里の神子

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第2章 接戦!? 鏖殺寺院との戦い

「いやー、それにしても、ピクニックを兼ねた馬術訓練って割にはさ、どうもこの森薄暗くってかなわないね」
 タシガン馬術部のクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)は先頭で馬をゆったりと走らせながら、隣で走っているパートナーのクリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)に言った。
「確かに。ジャタの森って、こんなに薄暗い森でしたっけ?」
 クリスティーは生い茂る木々の葉をしげしげと眺めながら言う。
「いいや、前はこんなんじゃなかったと思うんだけど……」
 そう言ったのはタシガン馬術部にこれから入部しようとしている久途 侘助(くず・わびすけ)だった。彼はタシガン馬術部のピクニックを兼ねた馬術訓練という名目で参加はしていたが、本当はレティーフたちが密猟を企て、隠れ里に潜入していることを聞きつけ、自分が戦っている鏖殺寺院というのが一体どんな奴らなのか、自分の目で見ることを目的としていた。だから、入部もまだなのに馬を借りて、クリストファーたちに同行しているのだ。また、鬼院 尋人(きいん・ひろと)と彼のパートナーである西条 霧神(さいじょう・きりがみ)呀 雷號(が・らいごう)も侘助と同じ目的を持っていた。しかし、4人ともなぜたかそれを口に出そうとはしなかった。
「それにしても、風が気持ちいいね。森が薄暗い分、風も幾分か涼しいし」
 尋人が誰にともなく言った言葉に完全な雪豹の姿で馬に乗っていた雷號は、
「そうですね。基本的にジャタの森は空気がキレイですし」
 とにこやかに答えた。
「そう言えば、雷號はジャタの森の出身でしたよね」
 吸血鬼の霧神はその外見にふさわしく、落ち着いた様子で静かに言う。
「まぁ、でも、ジャタの森に来るのは最近ではタシガン馬術部の馬術訓練くらいになってしまいましたけれど……」
 雷號の返答を最後まで待たずに、遠くから銃声が聞こえた。
「今のは何だ?」
 クリストファーは眉根を寄せて、馬を止める。
「銃声……だよな……」
 侘助の顔がかすかに緊張で強張った。
「銃声のした方に行ってみるか」
 尋人の一言に「まあ、それもアリですかね」と霧神は応え、それを合図にタシガン馬術部員たちは、銃声が聞こえた方角へ馬首を巡らせた。



「出会っていきなり発砲とは無礼にもほどがあるのではないか?」
 鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)は怒りを抑えながら、レティーフを睨みつける。真一郎の隣では彼のパートナーである獣人の鷹村 弧狼丸(たかむら・ころうまる)が鋭い目つきでレティーフを見据えていた。レティーフは涼しい顔をして、ライフルを持ち、周りに従えた数十匹というゴブリンを見回した。
 真一郎と弧狼丸は、鞠乃たちが隠れ里に向かうという話を聞きつけ、彼女たちの邪魔をする密猟者であるレティーフたちを止めようと、鞠乃たちより一足先にジャタの森へとやってきていたのだ。
「俺たちの勘が当たったっていうことだな、コロマル」
「そうみたいだな」
「あのさ、こっちは隠れ里に行くの急いでるんだよね。邪魔しないでくれる?」
 言って、レティーフはライフルを構えた。その瞬間、真一郎は剣を抜き放ち、横に跳ぶ。真一郎と弧狼丸の間を一発の弾丸が通り抜けていった。
「密猟をやめろ、と言ったところで話が通用しないみたいだな」
「そうみたい。じゃあ、遠慮なく、行きますか!」
 言うが早いか、弧狼丸は走り込みレティーフへと一気に間合いを詰める。それに気がついたレティーフは咄嗟に後ろへ跳び退り、その合間にゴブリンがレティーフの前に躍り出た。
 弧狼丸はダガーでゴブリンを切りつけようとするが、ゴブリンの方がほんの数秒だけ動きが早く、弧狼丸のダガーは空しく空を切る。
「ちっ!」
 弧狼丸は舌打ちをすると、後ろへ退く。弧狼丸がちらりと横目で真一郎を見ると、真一郎はゴブリンを1匹倒し終わったところだった。そのまま、弧狼丸は視線を前方へと向ける。その視線の先には1本の大木があり、その木陰からメイコに抱きかかえられているプットが見え隠れしている。メイコはプットが傷つくのを恐れ、プットを戦火の中に行かせないようにしっかりと抱きしめていたのだ。
――ったく、ヘマしやがって。
 プットと同じ獣人である弧狼丸は溜め息をつくと、目の前にいるゴブリンに走り込んでいった。



 数分が経ち、真一郎と弧狼丸は数匹のゴブリンを倒したが、やはり数では圧倒的に鏖殺寺院の方が有利だった。肩で荒い息をしながら、真一郎と弧狼丸はゴブリンたちと間合いを取る。
「おやおや。もう降参ですか? 口ほどにもない」
 レティーフが厭味たっぷりに言い放った瞬間、どこからともなく、レティーフを狙った帯電した弾丸が飛来した。それを間一髪レティーフは避ける。
「外したか。オレとしたことが……」
 瓜生 コウ(うりゅう・こう)は自分の撃った弾が外れたことに嘆息する。彼女が今放ったのは、雷術で銃身に電流を流し、ライトニングウェポンによって帯電した弾丸だった。電磁加速することによって射程を伸ばすことが出来る為、今のように多少の距離があっても、十分相手を狙うことが出来る。
「まっ、そういうこともあるでしょ。コウ、好きなようにやっちゃっていいよ。あたしがちゃんと援護するから☆」
 彼女のパートナーである猫の獣人ドゥリン・ダーラ(どぅりん・だーら)は、そう言うと、ダガーを構えて戦闘態勢に入った。
「あなたたちは一体……?」