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【海を支配する水竜王】捕らわれた水竜の居場所を調べよ

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【海を支配する水竜王】捕らわれた水竜の居場所を調べよ

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第7章 悪女を遠ざける対策

「エラノール、マッピングデータはどうなっているの?」
 四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)は牢屋までの最適なルートを通ろうと、エラノール・シュレイク(えらのーる・しゅれいく)に銃型HCのマッピングデータで、その割り出しをさせる。
「えぇ、割り出しましたですよ」
 割り出したルートを唯乃に教える。
「ですけど、これで要領オーバーなのです」
「まぁ、仕方ないわね。これだけ大きな建物だし」
「本当に最適ルートでいいんですか?一応、迂回ルートも割り出しましたですよ」
 エラノールは不安そうに首を傾げる。
「そうよ、どうして?」
「もしかしたら大量のゴーストが見張っているかもしれないってことでしょうか」
 ルイ・フリード(るい・ふりーど)が横から口を挟むように言う。
「うーん・・・それじゃあ、迂回ルートの方がいいかもしれないわね」
「安全策を取るなら多少遠回りになっても、そっちのほうがいいでしょう」
「そうね・・・」
 彼の提案に頷いた唯乃は、捕縛されている生徒を助けようと、地下4階へ降りようと階段の方へ走る。



 3階の資材置き場へ行ったアシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)は、廃材置き場の中で潜伏している。
「少し部屋の外の様子を見ているので、もしここへ生徒が逃げ込んできた時、手当てをお願いします」
「分かったよ」
 ラズ・シュバイセン(らず・しゅばいせん)は頷き、避難してくるかもしれない生徒をいつでも対応出来る準備をする。
「誰か来る・・・この足音は・・・」
 聞き慣れた足音を聞いたアシャンテが、ドアを開ける。
「敵兵が来たのかい?」
「いえ、違うようです。これは・・・あの人ですね」
 超感覚で耳を澄ませ、近づいてくる相手を探知したアシャンテは、ラズの方へ顔を向ける。
 その足音は廃材置き場の前でピタリと止まる。
「・・・クルード・・・お前もここに来ていたのか・・・」
 見知った顔を見て、ほっと息をつく。
「あぁ・・・牢屋に捕まっている者たちを助ける手引きをしようとな・・・・・・」
 牢屋へ生徒を助けに向かう者たちの手引きしようと、クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)は1階のあちこちを爆破し、2階に潜伏していた。
「・・・何かするのであれば手伝おう・・・。黙って見ている気はない・・・」
「丁度いい・・・・・・少し手伝ってもらいたいことがある・・・」
 他の生徒たちが行動しやすいように、董天君を引きつけておこうと提案する。
「ふむ・・・では、他の生徒が混乱しないようにしておこうか」
 アシャンテは野性の蹂躙により、ネズミのような小さな獣を使役し、獣の尻尾にそのことを書いた手紙をくっつけた。
 獣たちは狭い通気口を通り走る。
「来たか・・・・・・」
 聞き覚えのある董天君の足音を聞いたクルードは、野性の蹂躙で呼び寄せた猿のような魔獣たちに、銀色のカツラにを被せて放つ。
 銀髪野郎と喚き散らしていた董天君に、わざと狙わせようと考えたのだ。
「ラズ、ここから出ないでください」
「無理しないようにね」
「えぇ・・・分かっています」
 それだけ言うと、アシャンテはドアを閉めた。
「おらおら侵入者ども、出て来い!今なら槍で串刺しにしてやる程度で簡便してやるぜっ」
「―・・・相変わらず女と思えないほどの口の悪さだな・・・・・・。まぁ・・・ヤツを放っておいたら犠牲者が出てしまうかもしれないからな・・・」
 クルードは物陰から様子を見ながらため息をつく。
「フンッ、やっと見つけたぜ。銀髪野郎ーっ!」
 角を曲がって逃げ込む相手の背を、董天君が槍で貫く。
 ドシュァアアッ。
 鮮血が壁に飛び散る。
「ん・・・?あいつじゃねぇえ!」
 貫いたヤツをよく見ると、クルードが放った魔獣だ。
 息耐えた獣から槍を引き抜いた董天君は、怒りのあまりグシャアッと踏みつける。
 その隙にルイと唯乃、エラノールの3人が2階へ降りる。
「ちくしょう・・・どこにいやがる」
 彼らが2階へ降りたことに気づかず、苛立ちながら周囲を見回す。
「そこか!」
 逃げていく銀髪の相手を追いかけ槍で刺した。
「―・・・フンッ、そこまでもムカツク野郎だ」
 槍を握り締めて歯を噛締める。
「(相手の動きが止まった・・・・・・どうしたんだ・・・?)」
 クルードは隠れながら相手の様子を窺う。
 何を思ったのか董天君は、ゆっくりと階段を降りていく。
「―・・・・・・どこへ行くんだ・・・」
 彼は気づかれないよう、足音を立てないように後をつける。
「こんな子供騙しみたいなことに、いつまでも騙されるわけねぇだろ。今から地下牢の様子でも見てくるか!」
 わざとらしくクルードに聞こえるように大声で言い、董天君は地下牢のフロアへ走っていく。
「まずいな・・・気づかれてしまったか・・・・・・。助けにいった者たちが、ヤツに捕まらなければいいが・・・・・・」
 引き付けておく作戦が相手にバレてしまい、牢へ救助に向かった生徒たちが無事助かるよう願った。



「やっと牢にたどりついたわね」
 見張りの兵に向かって唯乃が光術を放ち、相手のポケットから鍵を奪う。
 一瞬の隙をついて緋音とシルヴァーナが地下へ進む。
 体力を温存しようと2人は、地下5階で休息する。
「受け取って!」
 唯乃は奪った鍵をルイに投げ渡し、美央とジョセフを助け出す。
「美央さん、ジョセフさん助けに来ましたよ」
「ちょっと遠回りになってしまいましたですよ」
 鎖とロープから解放してあげようと、エラノールが星輝銃を撃つ。
 拘束を解き、2人を床から起き上がらせる。
「くそっ、侵入者め!」
 目晦ましをくらった見張りが、他のゴースト兵を呼ぼうを無線で連絡する。
「やばい!皆、早く上の階へ急いでっ」
 唯乃たち5人は3階の資材置き場へ向かい、自分たちが隠れていた廃材置き場へ駆け込んだ。
 やっと休める場所にやってきたルイは、互いの情報を教え合う。
「ここらで1度情報の交換と行きましょう」
「私からいいですか?」
「はい、言ってください」
「董天君の戦術についてです。あの態度、調子にのるタイプと見ました。こっちが弱いと見せかければ油断するかもしれません」
 静かに聞いている生徒はなるほどと頷く。
「成功法では勝てない相手みたいです」
「で、その方法とは何?」
「私が見たところ、相手は緊急時に弱いかもしれないんです」
 首を傾げて問う唯乃に言う。
「笑っていられるのも今のうちでしょう」
 美央は死ぬまで存分に嘲笑っているがいい、と心の中で呟いた。
「他に誰か情報は・・・といっても、合流出来る状況でもなかったですからね」
 会話の結果、情報収集はそれだけだった。