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ミリアのお料理教室、はじまりますわ~。

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ミリアのお料理教室、はじまりますわ~。

リアクション

「……大体ですね、いつもいつも身勝手なんですよ。自分ごと事件に巻き込む原因になってたり、年上だからってすぐにお姉さん風吹かせたり、かといって都合が悪いと女の子だからって猫被ったり、家事手伝いなのに手伝いをしなかったり、やることなすこと全てが面白さ至上主義過ぎて危なっかしいんですよ」
「共感出来る部分もあるんだな。身勝手なところとか、事件の直接の原因を作ったりとか、いつもは下僕扱いするのに困った時だけ頼りにするとか、ボクに家事の全部を任せたりとか、やること全部メチャクチャで付き合うボクの身にもなってほしいんだな」
 桜の下で、白砂 司(しらすな・つかさ)とモップスが日本酒を、サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)が用意したおでんをツマミにして飲み合い、最初はモップスのああ哀れなゆる族生活について話し合っていたものの、段々エスカレートしてやがてはパートナーの愚痴を言い合うようになっていた。
「……サクラコちゃん、ヒールお願い出来るかな? リンネちゃん、二人ともぶっ飛ばしてあげないと気が済まないんだけど」
「リンネちゃん、そう思うのは分かりますけど、ここはぐっ、と我慢ですよ。大人な女性は、パートナーの愚痴を知らない振りして聞き流してあげるのが優しさってもんです」
 『ファイアー・イクスプロージョン』の準備に入ろうとしたリンネを、サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)が涼しげな表情で宥めにかかる。
「それにですね、相手のことを話すには、相手のことを十分理解していないと話せないんですよ? リンネちゃんはモップス君のこと、話せますか?」
「……う〜ん、そう言われちゃうと、話せるだけ理解してない、んだろうな〜。サクラコちゃんは司ちゃんのこと話せるの?」
「そりゃあもちろん……話せないねっ!」
「ダメじゃん!!」
 ツッコミを入れるリンネに、あははと笑ってサクラコがはぐらかす。
「ま、あまりに酷いこと言うようならお仕置きしてやりますよ。お姉さんとして礼儀はしつけてあげないと」
「そうだよねっ! リンネちゃんも後でいーっぱいこき使ってあげよーっと! さっきは疲れたなんて言ってたから優しくしてあげたけど、もう容赦しないよ!」
 不敵な笑みを浮かべるサクラコとリンネを差し置いて、司とモップスの酒の勢いは止まらない。
「あまり心配をかけないで欲しいですね、できの悪い姉を見ているみたいで――」
 直後、飛んできたおでんの鍋の直撃を受けて、司が地面に伸びる。本当はその後、「――放っておけないんですよ」と続くのだったが、その言葉は放たれることはなかった。
「ま、こんなところですかね」
 サクラコが満足気な笑みを浮かべたところで、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)エイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)の声が届く。
「さあ皆さん、ピザが焼き上がりましたよ。熱い内にどんどん召し上がってくださいね」
「甘くて美味しいデザートピザもあるよ!」
「冷たいスムージーで、喉を潤してくださいね」
 その漂う香りに、ふんふん、と鼻をひくつかせたサクラコが思わず駆け飛んでいく。残されたのは、酒に酔ったモップスとのびた司、それに両手に炎を燃え上がらせたリンネ。
「リ、リンネ、待つんだな」
「問答無用ー!!」
 ボン、と爆発が起こり、後はぷすぷす、と煙を上げるモップスの姿が残った。司は既にサクラコからの『躾』を受けていたので見逃されたようだ。
「ちらし寿司も用意しましたよ」
「たくさんありますから、お好きにどうぞ」
 段々と集まってくる生徒を前に、神和 綺人(かんなぎ・あやと)沢渡 真言(さわたり・まこと)の用意したちらし寿司が振る舞われていく。その内誰が持ち込んだのか、酒瓶が宙を舞い、一帯はかつてのひな祭りのようにすっかり出来上がってしまっていた。
(こ、これだ……! これこそが俺の求めていたフロンティア! イルミンこそつるぺた幼女のパラダイス! ……ああ、転校してきてよかった!)
 そんな混沌とした様子をカメラに収めながら、神野 永太(じんの・えいた)が歓喜の思いを抱く。
(さあ、こうしちゃいられない! 待ってろよつるぺた幼女!)
 何やらとっても不純な、でも同意してしまう動機を抱えながら、永太がそれぞれのところへ挨拶に行く。

「まず私のところに来るとは見込みがあるの。心置きなく撮るがいいぞ」
「ありがとうございます!」
 もう流石に見飽きたであろうアーデルハイトのポーズも、永太にとっては至高の一品であった。

「えっと……こう、ですか?」
「そう、そうだよ、ミーミルちゃん!」
 言われるがまま、腋を強調したポーズを取ったミーミルを写真に収める永太。いいセンスしてます。

「よく観光客にポーズを頼まれましたー」
「イイ!! とてもイイ!!」
 『ヒノ』を構えた豊美ちゃんに感涙しつつ、永太がシャッターを切る。ミーミルはともかく、アーデルハイトも豊美ちゃんも酔っ払っていたのか、随分とノリがよかった。

「ふふふ……最後は最高のつるぺた幼女、エリザベート様に挨拶に行くぞ!」
 意気込んだ永太の『つるぺたセンサー』が、近くにつるぺた幼女の存在を知らせる。まるで新人類の如くそちらを振り向きカメラを向ければ、見事なまでにぺったんこな幼女が二人。
「素晴らしい! やはりイルミンはつるぺた幼女のパラダイス! これほどまでにつるぺた幼女が揃っていようとは――」

「「……誰が、つるぺた幼女ですって?」」

 永太の声を耳にした赤羽 美央(あかばね・みお)ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が振り向く。
 彼女たちから発される例えようのないプレッシャーに、永太の全身は凍り付く。

「好きでこうなったんじゃないわよっ!!」

 ばきっ、と鮮やかな音が二つ響き、そして永太が地面にうつ伏せに倒れていた。
「へへへ……つるぺた幼女……破壊力抜群だぜ……」
 それでも永太の表情は、どこか満足気だった。

「どのお料理も美味しそうね。……でも、その中でも一番、ミリアちゃんが美味しそうだわ」
 楽しい一時を過ごしていたミリアのところへ、アルメリア・アーミテージ(あるめりあ・あーみてーじ)が何やらいかがわしい感情を抱きながら近づいてくる。だが、アルメリアのその感情は決して理解出来ないものではない。年齢不詳、しかしまるで少女のような可憐さと可愛さを併せ持つミリアを、誰が狙わずにいられようか。
「あらあら〜、ご冗談が上手いですわ。そんなアルメリアさんにははい、どうぞ♪」
 背後から忍び寄り、柔らかそうな耳たぶを甘噛みしてやろうと企んだアルメリアの口に、すっ、と振り向いたミリアが何かを差し入れる。指先がアルメリアの唇に触れ、その感触で無意識にアルメリアが身を引く。
「な、何を……あら、あらら?」
 口の中で何かが溶けていく感触と同時に、アルメリアの意識も蕩けていく。
「リキュールを中に入れたチョコレートを作ってみましたの〜。大人な味わいのチョコですわ〜」
 そう説明するミリアだが、既にアルメリアは聞いていなかった。ちなみにミリアは既に4つほど食しているが、表情に変わった様子は見られない。
「ああっミリアさん、俺にもその大人な味を口移しで味合わせてな〜」
「うふふ♪」
 唇を突き出して迫ってきた日下部 社(くさかべ・やしろ)にも、ミリアの作ったチョコレートが投入され、そして10秒も経たぬ内に社は夢の中にダイヴしていく。おそらく彼の夢の中では、幼妻のミリアとの新婚甘々生活が繰り広げられていることだろう。
「ミリアさ〜ん」
 そこに、神代 明日香(かみしろ・あすか)がやって来る。様子からして誰かを探しているようだった。
「あのぉ、エリザベートちゃん知りませんかぁ? トイレに行ったまま帰ってこないんですぅ」
「あら〜、それは困りましたね〜。ちょっと見てきましょうか〜」
「手伝いましょうかぁ?」
「いえ、大丈夫ですよ〜。明日香さんはここで帰りを待ってあげてくださいね〜」
 ミリアが立ち上がり、歩き出す。その足取りは、まるでエリザベートがどこにいるかが分かっているかのようだった。

「ヒャッハァ〜! 料理酒がダメなら日本酒だぁ〜! これにはエリザベートも無防備だぜぇ〜!」
 酔っ払ってすやすやと眠りについたエリザベートを後ろに乗せて、南 鮪(みなみ・まぐろ)がバイクを駆って走り出そうとする。
「……っと、飲み過ぎちったか。トイレトイレ」
 便意をもよおした鮪が、近くにあったトイレに駆け込む。しばらくしてスッキリした顔でトイレから出てきた鮪は、そこで思いも掛けない光景に遭遇する。
「あらあら〜、こんなところで眠られては風邪を引いてしまいますよ〜」
 どこからこの場所を割り当てたのか、ミリアがバイクの背からエリザベートを抱き上げ、自らの背中に背負っていた。
「あっ!! テメェ、何しやがる! そいつは俺の料理だ!」
 声を荒げる鮪なんてまるでいないかのように、エリザベートをまるで自身の子供であるかのようにミリアがあやす。
「……テメェ……俺を無視しやがるとはいい度胸じゃねぇかぁ!! 女子供だからって容赦しねぇぜ!」
 ミリアからエリザベートを引き剥がすべく、鮪がミリアに襲い掛かる。相手はただの女性、簡単に事が運ぶと思っていたのだが――。

「お料理の楽しい時間を乱す人は、めっ、ですよ?」

 あくまで微笑んだまま、ミリアがすっ、とお玉を手にする。
 そこからのことは、鮪にも、エリザベートにも、そしてこれを書いている作者にも分からない。ただ事実として、頭にお玉の一撃を食らったと思しき痕を残して、鮪が仰向けに倒れていたことだけがあった。
「……さあ、帰りましょうね〜」
 何事もなかったように微笑んで、ミリアが一歩を踏み出しかけ、思い出したように立ち止まり振り返る。
 ミリアの手には、ジャムのようでいてしかし、うねうねと動いているように見えるゲル状の何かが詰まった瓶が握られていた――。

「エリザベートちゃん! よかったですぅ〜」
「う〜……私眠ってたみたいですぅ。もう少し眠るからアスカ、枕になれですぅ」
 言うが早いか、エリザベートが明日香にもたれかかるようにして眠ってしまう。
「ミリアさん、ありがとうございますぅ」
「いえいえ〜」
 エリザベートをあやす明日香に礼を言われ、ミリアが微笑む。
「おっ、鮪はんどこ行っとったんか?」

「チッチッチッ……僕は『きれいな鮪』です。そんじょそこらの鮪とは一緒にしないでいただきたい」

「……お前、元々おかしかったが、ついにおかしくなったか?」
「失礼な、僕は至って正常です。おかしいのは今の混沌とした世の中です! ああ嘆かわしい嘆かわしい……」
 何かをぶつぶつと呟きながら去っていく鮪を、土器土器 はにわ茸(どきどき・はにわたけ)と信長はただ呆然と見送るだけであった。

 こうして、少々のトラブルはありつつも、無事に『ミリアのお料理教室』は成功に終わった。
 これからもミリアのところには、料理を好む者たち、そしてミリアを目当てに多くの者たちが訪れるであろう。
 
「うふふ♪ 楽しいですわ〜」
 そんな日々を思って、ミリアは微笑みを浮かべるのであった。

END

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

『どうして俺を出し忘れた』
 『どうして俺を出し忘れた』
  『どうして俺を出し忘れた』
   『どうして俺を出し忘れた』
    『どうして俺を出し忘れた』
     『どうして俺を出し忘れた』
      『どうして俺を出し忘れた』
       『どうして俺を出し忘れた』
        『どうして俺を出し忘れた』
         『どうして俺を出し忘れた』


「うぎゃーーー!!」


フン。俺を蔑ろにした報いを受けるがいい。

……ああ、申し訳ない。飛鳥 馬宿だ。
なに、うっかり俺を出し忘れたとのたまった猫宮 烈とやらを懲らしめたところだ。気にしないでくれ。

お料理教室とやらは楽しんでいただけただろうか。
イルミンスールの催しは大体、混沌とするな。まあ、それが校風なのだろう。
俺も最近は悪くないと思っている。……なのにこいつときたら……!

はっ、いかんいかん。

一応、こいつの代わりにお知らせを言っておこう。

俺やおば……豊美ちゃん、その他こいつのシナリオによく出てくるNPCの、お前たちの呼び方は、シナリオ中でこいつが判定した結果決めることもあるし、「○○って呼んで」というアクションで決めることもある。
基本的には皆仲良くしたがりのようだから、名前で呼んでしまうことが多いようだ。俺も、お前たちがそれでいいなら、呼んでやる。
把握はこいつに任せるから、何度も書かなくていいぞ。間違ったらこいつに文句を言え。

豊美ちゃんへの魔法少女な名乗りは、豊美ちゃんがシナリオに登場していればいつでも構わんそうだ。好きな時に言え、把握はこいつに任せる。
こいつが多忙で、魔法少女なシナリオをいつ運営出来るか分からんと言っていた。まったく、言ったことには責任を持ってほしいものだ。

なに? 『精霊がいると何が出来るかの判定が難しい』?
こいつめ、何弱気なことを書いている。

まあ、俺はよく知らんが、お前たちにとってはアクションの幅が広がるのだろう。
あまりに身勝手なもの、悪意のあるものでなければそれでいいのではないか?
俺も、豊美ちゃんもそんなやつは嫌いだ。言っただろう? 皆、仲良くしたがりだからな。

……とりあえずはこんなところか。
ま、俺や豊美ちゃんが出てこれるのも、こいつのおかげだからな。
一応、感謝しておいてやろう。

ではな。