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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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「影野!」
「クイーン・ヴァンガード特別隊員」の風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)がそこへ駆けつける。
 優しげな風貌の黒髪の少年、優斗は陽太を仲間に任せ、ミルザムと赫夜の前に立ちはだかる。『轟雷閃』や『アシッドミスト』、『氷術』、それら剣技と魔法を併用し、赫夜がミルザムに近づけないように戦う。
「指一本、ミルザムさんには触れさせない!」
 優斗はそういいながらも、赫夜が真珠を操っている者たちから解放されるすべはないのか、それを模索していた。
 だが、それも虚しく、赫夜は優斗を倒そうとする。
「優斗殿、あなたにとってミルザムがかけがえのないものであるのと同様、私には真珠がこの世で一番大事なのだ」
「だけど、他の手立てがあるはずです!」
「…確かにそうかもしれない。だが、今はそれを考えている余裕はない」
 そして赫夜は再び星双頭剣を構え、ぐるりと廻すと優斗を飛び越え、ミルザムの頭上から剣を振り下ろそうとする。
「しまった!」
「ミルザム殿! お命頂戴つかまつる!」
「くっ!」
 さすがにミルザムも一瞬、覚悟し、目をつぶり両手で自分の頭部を覆った。
 だが、その瞬間、ミルザムと赫夜の間にはいり、『ブライトグラディウス』で赫夜の星双頭剣を防いだものがいた。
アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)!」
「ミルザム様、ここは私が食い止めます…! 早く逃げて!」
 アリアの言葉にミルザムと駆けつけたクィーン・ヴァンガードたちはその場を離れる。
 天城 一輝(あまぎ・いっき)はミルザムを死守する。ローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)は一輝の発砲音を合図に、サイドカーにはコレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)を乗せ、急行してきた。
「一輝! 『ポリカーボネントシールド』よ!」
 コレットは一輝に『ポリカーボネントシールド』を渡すとローザの軍用バイクのサイドカーに乗ったまま、バイクの前に『モップ』を突き出してスキル『ハウスキーパー』を使い、バイクの進路を確保すると、さらにスキル『光術』を赫夜の目前にいきなり出現させた。
「うぅ…!」
 目くらましにあい、片手で光を防御しようとする赫夜に一瞬の隙が生まれる。
 そこにユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)が一輝達と合流すると特技『指揮』を発揮、一輝の『ポリカーボネントシールド』に『タワーシールド』を並べ、すみやかにユリウス・ガイウス・カエサルの百人隊長として、ローマ軍にいる時に使い馴れた鉄壁の『亀甲陣』を展開する。
 さらにスキル『ディフェンスシフト』『アイスプロテクト』を交互に掛けてミルザムを死守した。
 しかし、目くらましから回復した赫夜は亀甲陣で張られた『ディフェンスシフト』『アイスプロテクト』を次々と切り倒していった。
 だが、その隙に一輝達たちはミルザムを連れて、その場をすでに離れていた。
 息も荒く、一旦剣を降ろした赫夜は目の前にいるアリアに仮面の奥から視線を向けた。
「アリアさんか…」
 真っ黒な装束に身を包み、仮面を被った赫夜には一瞬、不気味なものをアリアは感じた。
(…こんなの、あの優しい赫夜さんじゃない…それに今、説得は出来るけど、真珠さんの安全が確保されていない限り、赫夜さんが戦闘を止めるのは逆に危険だわ。赫夜さんが苦戦すれば、姿の見えない敵も焦りで行動を起こすかもしれない…だから、私は私のできることをする!)
「赫夜さん、私、全力であなたと戦う…! それがあなたを救うことになるのだと信じる…!」
 『ブライトグラディウス』を構えたアリアは、赫夜を真正面から見つめた。
天穹 虹七(てんきゅう・こうな)はアリアの側でサポートを担当する。
「ことちゃん……虹七、ことちゃんのこと忘れてないよ……だから頑張って……虹七も、ここで頑張るから」
(すぐにでもことちゃんのところに駆けつけたい…でもみんなを信じて赫夜さんと戦うお姉ちゃんを信じる! そして、ことちゃんを助けるんだ! 絶対に、絶対に!)
 霜月や恭司、ショウたちも駆けつけてくる。
 アリアは仲間たちと一緒になって防戦しつつも、『ブライトグラディウス』で、星双頭剣の力を殺ごうとする。
 身軽な分、アリアは赫夜に次々と打ち込んでいく。
(一太刀一太刀、剣に想いを乗せる! 赫夜さんに届け! この思い!)
 そこに恭司も星双頭剣を破壊しようと、『ブライトグラディウス』でダメージを与えることに集中した。霜月も同じく、『ブライトシャムシール』で星双頭剣を狙う。
 霧雨 透乃(きりさめ・とうの)もそこへ駆けつける。爆炎波を繰り出し、赫夜の星双頭剣にダメージを与えようと、全力で戦いを挑む。
「ねえ、赫夜ちゃん、私は、ミルザムちゃんを殺したところでミケロットを何とかしない限り真珠ちゃんを助けることはできないと思ってるよ。だから、本当に立ち向かわなければならない相手は誰なのか、そして、赫夜ちゃんは既にその相手に屈しているんじゃないの?」
「…透乃さん…それでも私は戦わなければならない。貴方たちに何をいわれても、罵られても、今はそうするしかない」
 赫夜はそう答えると、星双頭剣を槍のように頭上で回すと、生徒達を遠ざける。
 霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)は透乃のサポートに全力を尽くしていた。
(透乃ちゃんは言葉だけでなく、拳に気持ちをこめて自分の想いを伝えようとしているのだろう。それだけなら一対一のほうが伝わりそうではあるが…恐らく私達に助けを求めたのは、1人で駄目だったのなら誰かの助けを借りればいい、そのことを伝えるためだろう。それにこれほどまでの仲間もいる。それに比べて、赫夜はひとり、孤独だったのかもしれない。私と透乃ちゃん、そして陽子さんのように、なんでも話し合える友がいなかったのだろう…哀れだが、ここはミルザムの護衛と透乃ちゃんのサポートに集中するぞ!)
 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)も、似たようなことを考えていた。
(透乃ちゃんは、気持ちを赫夜さんに伝えたいんですね…だから、私も頑張るです!)
 『アルティマ・トゥーレ』を繰り出し、赫夜に攻撃を仕掛ける陽子。

 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)
「今までの中でティセラとの関わりを思わせる流れはなかった。もう執事さんの言葉に嘘があるとも思えない。だから迷う理由はないわ。望まぬ殺戮なんてさせないよ。例え1人じゃ敵わなくても、想いを同じにしてくれている仲間がいる限りはあきらめない。2人の希望が見つかるまでは、何としても止めてみせるわ! これ以上、哀しい剣を赫夜、あなたに振るわせるわけにはいかない! ただ、あの真珠が赫夜と僕たちの戦いを見ている…真珠こそが、赫夜くんの監視者なのかもしれないね…」
 パートナーのアストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)
「やっぱりさ、学生の時間って友達と遊んだり恋人とデートしたりするべきだと思うわけよ。だから、もし、そんな赫夜ってネーチャンの時間を邪魔するんだっていうんなら、壊すぜ、その星双頭剣とやら。だいたい自分の命より大事な武器なんてあってたまるかっつーの。こういうことは俺みたいな奴に任せてりゃいいんだって! いくぜ、リカイン、おっと、バカ女か!」
「バカとはなによ!」
 言葉の応酬をしながらも、リカインとアストライトは協力して、星双頭剣を壊そうとする。