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「封神計画」封神台の材料を確保せよ

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「封神計画」封神台の材料を確保せよ

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第4章 基本は土台作りから・・・

「ねぇ皆、今のうちに担当を決めておかない?」
 材料を持ってきてもらう前に担当を決めておこうと、レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が土台作りをする生徒たちに話しかける。
「オレは作りやすいように平らな場所を探しておく。角度とかしっかり計測するところも手伝うつもりだ」
 瓜生 コウ(うりゅう・こう)は基本となる場所を探しと計測を担当をする。
「私もまずは場所探しをします」
 コウと同じく幸も場所探しを手伝うことにする。
「資材搬入をする予定だけど、何かあれば他のことも手伝うわ」
 ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)と彼女のパートナーたちは、土台の形状を整える作業を担当する。
「ねぇ簡単な堀や塹壕とかを作ろうと思うんだけど。いいかしら?」
「うんあったほうがいいかも。えっとね、この辺りとかなら大丈夫かな」
「直径10cmから外に作ればいいのね、分かったわ」
「いっそのこと、封神台を囲うようにして柵等を設置して護りを固めるのも一つの案やも知れぬな」
 襲撃されて壊されないようにグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)が提案する。
「そうねそうしましょう」
「んーじゃぁ、ボクは材料を溶かす作業とかその辺りをやろうかな」
 レキは土台となる材料の石を、熔鉱水をかけて溶かす役回りと、その他をやることに決めた。
「簡単に作ったものなのだが、これくらいしっかり固定しておけば大丈夫だ」
 細い木を数本斬り倒し、櫓状に組んでロープや重りを取り付け、グロリアーナが簡易クレーンを作る。
「戻ってきたみたいですね、お疲れ様です」
 簡易資材置き場としてビニールシートを草の上へ敷き、材料を取りにいった生徒たちの帰りを待っていた風森 望(かぜもり・のぞみ)がシートの上から立ち上がる。
「ただいま持ってきたよ」
 北都とクナイが1番始めに戻って来た。
 袋に詰めた招石をシートの上に置く。
「敵が来るかもしれないから、僕たちはここで見張りしてるね」
「お願いしますね」
「やっと戻って来れたわ」
「洞窟は我にとって窮屈なところネ〜」
 ヘキサポッド・ウォーカーに乗ったスクルトとランツェレットの後から、シュペールが洞窟から出てきた。
「招石は左端へ、熔鉱水は右端へ置いてください」
「アイ・サー」
 望が言う位置に採掘した招石と、美羽とベアトリーチェから預かった熔鉱水を置く。
「あーっ、いたたっ」
「ご苦労様、ランツェレット」
 ずっと屈んで採掘していたランツェレットの腰を、スクルトが労をねぎらいマッサージしてやる。
「わたくしの役目は、これで終わりですよね」
「終わった訳じゃないからまた呼ぶかもしれないわ。その時はまたよろしくね」
 スクルトはランツェレットを学園へ送っていく。
「暗いとからいきなり出ると眩しいわね・・・」
 洞窟から出た美羽とベアトリーチェが眩しそうに、片手で顔を覆うように日に光を遮る。
「持って来ました、どこへ置けばいいですか?」
 資材置き場へやって来た陽太が、どこに置いたらいいか望に聞く。
「えっとそこへお願いします」
「分かりました」
 陽太はトナカイのソリから容器を降ろし、指定された場所へ置いた。
「明珀石を取って来たよ」
 採掘を終えた綺人たちが戻って来た。
「黒龍、・・・重い」
「あぁっ、そこじゃなくてこっちです!」
 コートに包んだ明珀石を草の上へ置こうとする葛葉に、望が慌てて声をかけて止める。
「―・・・重い」
 葉はもう1つ避難用袋に入れたやつも、教えてもらった場所へ置く。
「持ってきたぜ、どこに置けばいい?」
 彼らの後に洞窟から戻ったナタクたちが、望に置き場所を聞く。
「明珀石が置いてある右隣にお願いします」
「ここだな」
「それじゃあ私はラスさんの隣に。ちょっとここで休みましょうか」
 ラスとソニアは月雫鉱を置き、シートの上で休憩する。



「さて、建築開始と参りましょうか」
 ルフナから借りた設計図を手に、望たちは土台作りに取りかかる。
「くぅ、何でわたくしがこんな力仕事を・・・・・・」
 招石を抱えて現場へ運ぶノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)がブツブツ文句を言う。
「雑に運ばないでくださいよ?余裕が無いんですから」
「このような単純な作業は、わたくしには似合いませんわ!土台作りに参加させなさい!」
「何言ってるんですか。面倒臭がって、角度や長さを適当に測って組み立てるのがオチなんですから。お嬢様の出来そうな仕事は、資材運びか見回りぐらいしかありませんよ?」
 ギャァギャァと苦情を言うノートに対して、言葉でぎゅむっと捩じ伏せる。
「ママ、正確な図面があった方がいいよね?設計図を作図出来ないかやってみるね」
 メタモーフィック・ウイルスデータ(めたもーふぃっく・ういるすでーた)が財産管理と籠手型HCの情報端末で地図を作成出来ないか試してみる。
「うーん複雑すぎて出来なかったよ」
「あとでルフナさんに聞いてみましょう」
 しょんぼりするメタモーフィックの髪を幸が優しく撫でてやる。
「念のため氷術で90度の計りの型を作るか。基礎はやっぱり、きっちりかっちり水平な場所で作らないとな」
 コウは騒ぎ声が聞こえないように耳栓をし、パソコンを使い先端テクノロジーで計算する。
「潮風が来ない場所・・・なるべく森側にしませんか」
 幸が肩をトントンと叩き声をかける。
「あっ、すまない。少し騒がしかったから耳栓をしてたんだ」
 耳栓を外しコウは画面から幸の方へ視線を移す。
「そうだな・・・土台から先を作っている途中で、潮風に煽られて足場から落ちしてしまうかもしれないからな」
 考慮に入れようとコウは計算し直す。
「あとそれ以外にも知っておかなければいけないことがありますね。ちょっといいですかルフナさん」
「ほい、なんどすか。メガネのお嬢はん」
「構造とか欠点、耐久年数などを知りたいのですけど」
 メモしようと幸はペンと紙を取り出す。
「土台もやけど外と中の枠組みを作らへんとな、それとしっかりした足場があらへんと。完成した後、魔法でも武器とかでも壊せへんから欠点はあらへん。耐久はずーっと、永久どすな」
「枠組みと足場・・・やっぱりそれも大事ですよね。足場は工事現場でよく見かけるあれくらい作らないと危険ですか?」
「そうどすな」
「欠点がなく永久式・・・と。地球が崩壊でもない限り、封神台に異変が起きたりしなさそうですね?」
 聞いたことを確認しながらメモに書く。
「なるほど、欠点はないのか。しかし、だからといって傾いた形にしていいというわけではないからな」
 傍でコウも設計について話しを聞く。
「それと封神台の封印から出る手段ってあるのでしょうか」
「まだ身体に魂が残っとる再生可能の善なる者は、上層地で復活の時を待つことが出来るんどす。その逆に邪なる者は下層地で永遠に苦しむ、死の地獄行きやな」
「ということは姚天君たち、つまり十天君はそこへ魂と身体ごと封じ込められるってことですか」
「そうどす」
「今度こそ・・・彼女を倒せるということですね」
 悪女を野放しにするものかと、幸はペンを握り締める。
「ちょっといいか?」
 話しかける間を窺っていたコウが幸に声をかける。
「あっ、すみません。台を作る場所ですよね、どこかいいところありますか?」
「計算によると、あの平原が良さそうだな。森も近いし、そんなに潮風の影響はないはずだ」
「今のところ風は強くないみたいですね」
 布をつけた木の棒で大丈夫そうか風速を確認する。
「なら、この辺りでいいな。きっちり水辺だし問題ない」
 コウは計りとパソコンをつなげて、もう一度水平か確認する。
「ボイド管は紙で作るより、氷術で型枠を作ってしまったほうがいいな」
「えっと、平面図と寸法を聞いたんで見てください」
「これの縮尺はいくつだ?」
「さすがに原寸は書けませんから50ですね」
「チムチムにも見せるアル」
 チムチム・リー(ちむちむ・りー)が横から覗き込む。
「カーボン紙に書きましたから、これをどうぞ」
「ありがとうアル。レキ、資材置き場にあるやつを借りてきたアルヨ〜」
「じゃあまずは作る場所の枠をスコップで線を引こう」
「八卦形にするためにはまず正八角形になるようにしないとな。まずは縦横幅10mの十字の印しをつけるか。一辺の長さは約3.8mだな」
 メジャーで図った幅から八角形になるようにコウが目印をつける。
 レキは大きなスコップを持ちコウに計測してもらった目印に沿って八角形の線を引く。
「次は、氷術で作ったボイド管を配置する場所の線引きしたあと、そこを平になるように掘るんだね」
「メジャーの片側の端を持ってくれ」
「分かりました、もうちょっとこっちですね」
 幸はメジャーの片側を持ち、もう片方をコウが持つ。
「それを土の上に置くんだ。―・・・よし水平だ」
 斜めに曲がらないようまっすぐにメジャーを置き、レキとチムチムに等間隔の線を引いてもらう。
「キレイに引けたね!今度はそれを目印に、このスコップで高さ50cmの深さに掘るっ」
「レキ、ちょっと待つアルッ」
「ん?」
「スコップの位置が、曲がってるアルヨ!」
「あっ!」
 チムチムの声に手を止めると、危うく斜めに掘ってしまうところだった。
「溶かした招石を流し込むボイド管の直径と高さはどれくらいですか?」
 基礎の支えとなる円柱のサイズがどれくらいか、菊が傍にいるケレスに聞く。
「支えが直径20cm・・・高さ50cmですから、それに丁度いい大きさを作ってください・・・。あ、流し込んだ後もう一度術で蓋をするように、ボルト用の穴を作っておいてください」
「目印おっけいアル〜」
「その型がとれるくらいのサイズを作ればいいんですね」
 菊はチムチムがスコップの先でつけた目印のところへ氷術で型枠を作る。
「くっ、こんな重労働。なんでわたくしが・・・!」
 招石が入っている袋と熔鉱水を、ノートは足をふらつかせながら重そうに運ぶ。
「お嬢様、招石を溶かす容器がありませんよ」
「うぅ・・・、わたくしだけ荷物運びなんてあんまりですわっ」
「それだけしか出来ないじゃないですか、お嬢様は」
「―・・・くぅううっ、望のいぢわるーっ!」
 ノートは資材置き場へ泣きながら猛ダッシュする。
「これに乗せて運ぶといい」
「ありがとうございます、助かりましたわ!」
「1人じゃ大変でしょう、手伝うわ」
「こんな重たいの無理でしょうから、一緒に運びましょう」
「うぅっ、ありがとうございます」
 上杉 菊(うえすぎ・きく)にも手伝ってもらい、望の酷い扱いと天と地の差もある嬉しさのあまり、ノートは涙する。
「やっぱり数人で運んだ方が効率いいわね」
「そうですわね♪」
 グロリアーナに簡易クレーンへ材料を乗せてもらい、ローザマリアたちと協力して運ぶ。
「とりあえずこれくらいかな?わぁ〜どんどん溶けていくね」
 レキは鉄製の容器の中に招石を入れ、熔鉱水を注ぎ溶かす。
「熔鉱水は石と混ざらないで気化しちゃうんだね」
 容器を抱え固まらないうち型に流し込む。
「他の型枠はこっちで作りましょう」
「術の氷が気化した後、長さは八角形になるように合わせて、幅20cm・・・厚み5cmになるようお願いします」
「分かりました、ボルト部分の穴も出来るようにしておきますね。それとボルト用の型枠も作っておきましょうか」
 菊は氷術でボルトと支えの型枠を作る。
「出来ました、溶かした招石を流してください」
「じゃあ流し込むよ」
 溶かした招石をレキが型枠に流し込む。
「チムチム、こっちがわ持つから誰か持ってほしいアル」
「組み立てるの?じゃあちょっと手伝おうかしら」
 ローザマリアは基礎作りを手伝おうと、もう片方の方を持つ。
「さてもう1本、ライザそっち側を持って」
「こっちを持てばいいのだな?了解した」
 グロリアーナも協力して円柱の支えの上へ運ぶ。
「ではボルトを締めますね」
 望は日曜大工セットからドライバー取り出して締める。
「設計を元に八卦型の厚み10cmのやつが出来ました。指定通り内側に5cmほど小さい、3cm幅の八角形の溝をつけておきました。ボルト用の穴もちゃんとありますよ」
 菊が作った石板を生徒たちが基礎の上へ運び、彼はさらにその上へ直径8m、厚み20cmの丸い土台用の型枠を氷術で作りレキがその中へ溶かした招石を流し込む。
「8箇所締めればいいんですね。ぎゅっと締めたので、これで外れないはずです」
 氷術が気化して丸い土台が出来る間に、ボルトを望がドライバーで締める。
「この線は乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤を示す文字なのね」
 熔鉱水をつけた彫刻刀で、ローザマリアはそれらの文字を示す線の溝を各8辺つける。
「あとは基礎の支えが見なくなるくらいに埋めましょう」
「分かった、ママ!」
 幸とメタモーフィックは2人で掘った土で支えの基礎を埋める。
「形状に歪みもないようだし角度も完璧だ」
 水平かどうか角度をコウが確認し、生徒たちはようやく土台部分を作り終えた。