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【十二の星の華】想う者、想われる者

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第7章


 洋館の地下室では、ほとんど決着がついていた。
 ウィングの治療に専念するグロリア、レイラ、アンジェリカ。
 それを守るようにリースとノワールが囲んでいる。
 そして、ティセラと対峙していた円、オリヴィア、ミネルバはもうぼろぼろになっている。
 ティセラを守るためにいる人達は攻撃を一切してこなくなった。
 いや、戦闘が始まってまともに攻撃をしたのはナナリーぐらいだろう。
 他の人達が手を出すまでもなく、女王の幻覚を見せられたティセラが暴走状態で自分から攻撃をしてしまっているからだ。
 ティセラが最後の止めを円にしようと星剣を振り被った――
 突然、天井から瓦礫が落ちて来て、天井には大きな穴が開いた。
 穴から顔を出したのはリュシエンヌだ。
「ティセラ、ホイップの洗脳は解けたわ。もうここにいる理由もないんじゃない?」
 そう問いかける。
 それでも、まだ攻撃をしようとするティセラを祥子とティアが腕を掴んで止めた。
「あなた達も邪魔をするつもりですか?」
 ティセラの鋭い眼光が2人を射抜く。
「違います」
「違うよ、ティセラおねーちゃん」
 祥子とティアはめげずに言うと、だんだんティセラも落ち着いてきたのか、ビックディッパーを降ろした。
「今は玄武甲を入手できただけでも良しとしようよ? ね?」
 ティアがそう言うと、ティセラは少しだけ考え、頷いた。
「そうですわね……ここで無駄な時間を使っている場合ではありませんわね」
 ティセラが言うと、祥子は自分のユニコーンの後ろにティセラを乗せた。
 穴から部屋を出ていく。
 その後ろを巽、ティア、綾香、アポクリファが着いて行く。
 屋敷を出ると丁度、コウと出くわした。
「天秤の砦は蒼空の輝きの女王たちにより天より落とされるだろう」
 コウはティセラと目が合うと不吉な予言を吐いた。
 他の人達もティセラが出てきたことに気がつくと追おうとしてきた為、祥子とティアが煙幕ファンデーションを投げつけた。
 それにより、追う事が困難となってしまった。
 煙が晴れると、ティセラ達の姿は無かった。

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 洋館の前では少し離れていた為にティセラ達に気が付かなかったシャガ捕獲組がいた。
 シャガはフォルクスの氷術により、腕の辺りと足首をぐるっと氷づけにされていた。
 これではなかなか逃げることは難しい。
「くっそ……」
 シャガは悔しそうな表情を浮かべる。
 天音のそばに移動しようとしたブルーズが誤ってシャガの足の指を踏んでしまった。
「あ、すまん」
「あふん!」
 シャガから気持ち良さそうな声が出るとブルーズは思わず飛び退いた。
「……こんなのが気持ち良いんだ? 君、とんだ変態だね」
 それを見逃す天音ではなかった。
 天音は妙に手なれた足付きでシャガの右頬を踏み、ぐりぐりと足の裏をこすり付けた。
「ふんっ! そんな慣れた踏みつけなど気持ちよくもなんともないわーーーっ!」
「もう、どうしようもないくらい変態なんじゃない?」
 シャガの叫びに天音は楽しそうに返した。
「ところで早川も踏んでみる?」
 近くにいた呼雪に声を掛けると、呼雪はつかつかとそばに寄ってきた。
「こうやって、しっかりと……そう、かかとでやるのも良いよ」
 手取り足とり、天音は呼雪に教える。
「おぅふっ!」
 呼雪が蔑んだ視線を送ると快感が増したのか声が出た。
「こんなのが良いなんて……本当に変態だな、あんた」
 そんな呼雪をファルは見なかったことにしたらしい。
「なんか楽しそうだな。俺もちょっと踏んでみたい」
 呟いたのは樹だ。
「君もやってみる?」
 天音がそう声を掛ける。
「……や、俺にそんな趣味はないし、いくらシャガさんがマゾでも男に踏まれるのは嬉しくないと思う。……踏んでみてもいいか?」
 好奇心が勝ったようだ。
「樹、やめておけ。お前の足が汚れるだけだ。そんなに踏みたいのなら……我の――」
「待った! やめるから! なんかそれ以上は言ったらいけない言葉な気がするから!」
 樹が慌てて止めると、フォルクスは満足そうだ。
 突然、煙幕ファンデーションが投げ込まれ目の前が真っ白になる。
 なにかが動いた気配があったが、こうも白いと確認が出来ない。
 暫くして煙がなくなると、地面に転がっていたはずのシャガが消えていた。


 シャガを連れだしたのはポニテを解き、ブラックコートを纏い、帽子をかぶっていたミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)だった。
 今まで光学迷彩と隠れ身で姿を消して戦闘の行方を見守っていたようだ。
「何故助けた!?」
 シャガが声を荒げる。
「私は味方だ、ティセラ派さ」
 ミューレリアがそう言うと、胡散臭そうに見つめる。
「ほら、これで信用できるだろ?」
 氷漬けにされていたところを怪力の籠手で無理矢理外す。
 おやじの手と足はこれで自由になった。
「ところで、私はティセラの連絡先を知らない。今度、彼女に手を貸す時、不便だから教えてくれないか? それともう1つ、あのキメラはどこから連れて来たんだ?」
「…………」
 ミューレリアの質問にシャガは疑いの眼差しを向けた。
「頑固だな……これで話す気になるだろ」
 業を煮やしたミューレリアは高周波ブレードをシャガの首へと突きつける。
「くっ……な〜んちゃって!」
 シャガは素早く鞄の中に手を突っ込むと煙幕爆弾を地面に投げつけた。
 辺りは一面の白。
 さきほど、自分が使った手と同じ手段でミューレリアはおやじを逃がしてしまったのだった。
「……これで諦める私じゃないぜ!」
 辺りをキョロキョロと見回すとシャガの足跡を発見した。
 追っていくと、着いたのは『ジィグラ研究所』だった。

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 こうして一段落した面々は秘湯へと戻っていったのだった。