リアクション
◇第IV部◇ 第8章 ハルモニア解放後 ハルモニアは、黒羊軍の占領から解放された。 解放軍は、奪回したハルモニア城に本陣を移す。 まだ病み上がりの、【ぶちぬこ隊】隊長御凪 真人(みなぎ・まこと)。だが、まだやらねばならぬことはある。病床から指示を出す。 まず、桐生 ひな(きりゅう・ひな)に、敗走してゆく黒羊軍の追討が命じられた。御凪は、これにぶちぬこ35匹を割り振った。 そして、ハヴジァからの敵増援に対する牽制のため、50匹を国境に配備する。 ハルモニア全土の被害状況を調べ、それに対処すべく、20匹。 各班への伝令と、本陣雑務に、5匹を残し、各々、任務へと発った。 ぶちぬこの数が当初より、増えている気もするが(GM(マスター)がガイドにそう書いた)……おそらく、今回参加していないこれまでのMC・LCもその中に、けっこう含まれているから(匹で数えられてる……?)。かもしれない。 「ふう……」 「やあ御凪。だいじょうぶか。無理はするな」 バルニア(ばるにあ)が花を持って病室へ入ってきた。 「……。え、ええ。まあ。あ、ありがとうございます」 バルニアさんのせいというよりは、更に個性的過ぎるうちのメンバーのせいなんですけどね。と、御凪は胃のあたりをなでた。……ま、隊長ってのは苦労するものと相場は決まってますからね(俺自身が苦労性なだけかもしれませんけど)。 「じゃあな御凪。おっと、おまえたちの方は、桐生ひなを追討隊に選んだらしいな。 俺たちの方も、選抜メンバーで、一気に黒羊郷にまで攻め上がるつもりだ。今後も、共によろしくね」 バルニアは出て行った。 8-01 ハルモニア解放後 ヴァルキリーらの方も、会議がもたれ、すぐさま、敗走する敵を駆ってそのまま黒羊郷へ攻め入る……といった案が出された。 解放軍の副官、ルミナ・ヴァルキリー(るみな・う゛ぁるきりー)がその積極案を述べ、皆はおおむね、賛同した。ヴァルキリーの若者たちは、わりあい好戦的なようだ。 黒羊郷入りした後は、パートナーにヴァルキリーのいるためもあって主にヴァルキリー勢と共に敵にあたってきたことになる、高月 芳樹(たかつき・よしき)。彼はこの戦いではとくに、進んで参戦することを申し出た。ハルモニアの黒羊軍は追い出したが、敵の関所は固く、それを抜けても、正面から黒羊郷に攻め入ることになる。高月は、それは容易ならぬことと、斥候を買ってでたのだ。 「敵の攻撃をしのいだとは言え、まだまだ予断を許さない状況です。 僕たちは、空飛ぶ箒を使っての斥候任務がメインとなるでしょうが、必要とあらば、ハルモニア兵と共に、黒羊軍への反攻のための戦力ともなります」 「ありがたい。頼もしいことだわ」 ルミナは、同じヴァルキリーのアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)ともしっかり、握手した。 「アメリアです。砦攻めの際の、あなたの勇姿、見ていましたよ。よろしくお願いしますね」 「副官のルミナよ。ええ、どうぞよろしく!」 ルミナは、ご機嫌でもあった。だって、前回のユウの発言があったから……。 ルミナは、会議が終わると、城の食堂へ行く。 そこでは……メイドになった主、パートナーら三人が、メイドとして給仕に大忙し。 ユウ・ルクセンベール(ゆう・るくせんべーる)が、連戦の疲労を隠せない兵らのため、解放した食糧庫から、存分に食糧を振る舞っているのだ。更に、ハルモニア城の食堂は、ユウの士気によって、半ば、メイド喫茶と化していた。 もとがメイドのルゥ・ヴェルニア(るぅ・う゛ぇるにあ)はこなれたもの、ミニスカメイドことみっちゃんになった柳生 三厳(やぎゅう・みつよし)は、恥ずかしそうにしながら、料理を運ぶ(見えそうで見えない、柳生の動きで素早く給仕! 「みっちゃん、みっちゃん。何故 スカートの中が 見えないの♪」「それは それはね 柳生だからじゃない♪」)。 メイドナイトとして甦ったユウ・ルクセンベール(ゆう・るくせんべーる)も勿論、メイドだ。 それに、食堂に入ってきたルミナも、メイド服だった。前回以降、ルミナもずっとこの格好でいるのであった。会議の間も、そうだった……。 ルミナも調理を手伝おうとするのだが……みっちゃんは顔を青くし、ルゥは、「同志を殺したくなかったら自重してください」とすかさず止めて、「決してこの前ユウといい雰囲気だったのを嫉んでいるわけではないですよ?」と付け加えておいた。が、しゅんとしたルミナは、ルゥがきちんとユウと味見のし合いをしたり間接キッスを狙ってはりきっているのを見て、少し心が荒んだ。 しかも、ルミナはその夜、みっちゃんがユウに抱きしめられて眠っているのを目撃する。い、一体どういうこと、どうなっているの……これは夢? そうじゃなければ、ぐぐぐ、……ルミナの怒りは砦攻めに向けられることになる。 明日は戦いだ。 * 病室で、これまでの報告に目を通し分析する御凪。 「む……一つ、気になることがありますね。 黒羊の将マリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)がヴァシャ方面に抜けていったと。さて、何が目的でしょうか? あちらには、ナナさんが行っていますし、俺たちはいざというときに動けるように……」 「御凪隊長殿!」 「ごほ、ごほ……どうしましたか?」 「ああ、すみませぬ。しかし、一大事ですぞ。 なんと黒羊の将マリー・ランカスターが残兵を糾合しつつ、こちらの方へ向かっておるとの報が、ぶちぬこより」 「な、何と。……マリーが戻ってきた。これは捨ておけませんね。しかし、すでに追討軍は出てしまった。 このままでは、ひなさんがマリーとぶつかることになるかもしれませんね……く」 「御凪隊長殿! だいじょうぶなのですか、無理に起き上がられては……」 御凪は、武器である杖を支えに、立ち上がった。緊急の状況ならば、自身が現場で指揮を執る必要がある、と。 それに、相手があのマリー将軍であるなら……部下の命を守るのも隊長の役目! 「御凪、隊長殿!!」 御凪は、ゆっくりと病室を出た。まだ、胃の穴が痛むが。 8-02 信仰の姉妹よ 騎馬から城を仰ぎ見る、マリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)。 「何と。ハルモニア城は、本当に奪還されておったのか……むぅぅ!」 そして、マリーの後ろには、この男?の姿が。 蘆屋 道満(あしや・どうまん)! 「マ、マリー。何しに来た」城塔から、御凪が現れる。「それに、道満……? 何故」 「……」 「ふふり、ふふり」 それは、こういうわけであった。 前回、人質にとられている逢様と地下を進んでいた道満。解放軍の、ハルモニア・ニケ(はるもにあ・にけ)と朝霧 栞(あさぎり・しおり)に遭遇した。 「にゃはは……道満、知ってるか? マリーは黒羊軍から離れて、独自に行動を始めたらしいぜ。それでも黒羊軍のために戦うのか?」 「……そうか。フ」 音羽 逢(おとわ・あい)は、道満のその様子を見て剣を収めた。 「マリー殿のもとへ行かれるならば行かれよ。拙者は道満殿をどうこうする心算は御座らぬ。 逃げたとしても、拙者のうっかりとでも言うておくで御座るよ」 「逢さん。いいの、かしら……?」 ニケも、突きつけていた剣を、すっと下げる。 「……そうか。フ。すまぬ、恩にきるぞ」 こうして、道満は闇のなかへ消えた。(逢様は彼女を救ったニケ、栞ら二人と解放軍に戻るのだが、その後また行方が見えなくなる……。) ともあれ、しかし、マリーは道満のことを忘れてはいなかった。 「危うし、信仰の姉妹たち。待っているでありますぞ!」 マリーはしっかりと、新パートナーとなった道満を、助けに来たのだ。 しっかりと、道満を抱きとめる、マリー。 「蘆屋さん」 「(情けは人の為ならずとは言うが、マリちゃんの施策に助けられるとは。 そゆわけで、マリちゃんが迎えに来ても素直に胸に飛び込めないツンな俺。)」 だっだかだっだか。 馬を馳せ、ハルモニア城を後にする、ランカスター党。 「さあ、お次はチェルバラであります。待っているでありますぞ、我が信仰の姉妹よ!」 「ま、待て。マリー!」 だっだかだっだか。 |
||