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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)
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リアクション

 

 本営では、引き続き、慌しく出入りが見られることとなる。
 ウルレミラの兵舎……
 北の森で発見され保護と治療を受けた一条 アリーセ(いちじょう・ありーせ)は、一日も休むと復帰を果たした。
 一条は、草原地方方面へ向かう林田にお礼と挨拶を済ますと、三日月湖に残る騎狼部隊の指揮に戻る。
「以上のこと、お願い」
 パートナーの久我 グスタフ(くが・ぐすたふ)に任務を託している。
「あ、ああ。わかった。
 ……。それにしても、その、大丈夫なのか……?」
「何が」
「な、何がって。(……心配したんだぜ? ったく、こっちはほんとに。どれだけ騎狼を飛ばさせたか。まァ、アリーセの身に何かあれば、俺だって……だから、無事だとはわかっていたけどな。)」
「……。泣いた?」
「ま、まさか! って、それはないにしてもまぁわかってるんじゃないか」
「じゃあ、行ってきます!」
「……ああ。無理はすんなよ」
 一条の目的は、本陣から各地の戦況把握、補給路の安全確保、各人での情報共有のサポート。
 このために、騎狼部隊の利点を生かすことにした。
 預かった20騎の内、12騎を北(岩城/龍雷連隊)、8騎を東(東河/湖賊・水軍、および東の谷)へ配分する。
 つまり、どの部隊・拠点にも、連絡用の騎狼がいるようにするという状況が理想、と考えたのである。
 戦線が前進するのに伴って、連絡線も延長することになる。例えば、現在は北方の国境警備にあたる龍雷連隊が北進した場合、派遣する8騎の内、半分を部隊付にして、半分は拠点に残していく、といった具合だ。
 久我は、その中心となる三日月湖でこの騎狼の連絡線を管理するため、本陣に残された。(「置いていかれた……って感じなんだけどな。俺としては……」)
 東の谷へは、一条自身が騎狼を引き連れて移動する。一条には、一条自身の目的や思いもあった。
 一条は、本営を訪れる。
「連絡線の途絶えている東の谷へ偵察に向かいます」
 そこには、他にも東の谷へ派遣される者たちの姿があった。
 まず見えるのは、ちょうど同じく北の森から帰還した道明寺 玲(どうみょうじ・れい)だ。道明寺も一日もすると精神・体調共に元通りになり、本営チームに復帰した。
「一条アリーセ。またお会いしましたな。……いや、ほんの少し前、夢でお会いしたような気が。ともあれ」
 オークスバレー奪回や兵站維持などに努めるクレーメック少尉、南へ赴いたクレア少尉らの他方で、東への差配は戦部少尉が執り行うところであった。が、また些か調子を崩した戦部に代わり、道明寺が、東の谷関連の書類などに目を通すのに大忙しというところであったのだ。
「東の谷ですか。実は、ちょうど本営から物資を届ける船を出すつもりでしてな」
「物資を。なら、湖賊のところにも寄りますね? ちょうどいい」
「一条殿も行ってもらえるなら、助かりますな。騎狼部隊なら東の谷でもよく動けますからなぁ。
 物資の護衛は、すでに見つかったところだったのです、ちょうど今さっき」
「!」
 入室した一条の斜め後ろ、壁際に背の高い兵が屹然と立っている。
「騎兵科所属、鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)
 ええ、まあ騎狼には乗りませんが、今回は船で物資を東の谷へ届けます。もっとも、船が出なくても馬で積めるだけ積んで向かおうと思っていたのですが、俺にしても本当にちょうどよかった」
「鷹村さん。よろしく」
「ええ。こちらこそ」
「それがしも共に、参ります」
 道明寺も、にこやかに言う。
「ほう」「道明寺さんも? ここの仕事は大丈夫なのですか」
「やはり、本営のことは、戦部少尉に復帰してもらわないと。それがしは、今度こそ戦場に……ええ、この目で現場の状況を確かめたく」
 そこへ、また一人入ってきた。 
「あ、……会議中……でしたか?」
「いや……もうあらかたのことは決まって。もっとも、今ここで話しているのは別に正式な会議でもなく……」
「何が決定されましたか?」
「東の谷へ行くことですな……。もしかして、迦 陵(か・りょう)あなた……」
「ええ」迦陵は、静かにしかし強く主張するように言った。「東の谷へ、私も同行させて下さい」
「しかし……」
「あ、私は、戦えませんけど、マリーウェザーなら、魔法が使えます、それに……」
「ええ。迦陵……一緒に、行きましょう。東の谷へ。
 しかしまた、ご一緒ということになりますな」
「え」
「いや、こないだ夢で……」
「ああ。私も、そんな気がします」
「……何のことだろうな」鷹村が何を話しているのやらと、一条に問いかける。
「さあ。夢の話じゃないですか」
「夢。……。??」





 今月の行方不明者:
 ミヒャエル・ゲルデラー博士(みひゃえる・げるでらー)アマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)ロドリーゴ・ボルジア(ろどりーご・ぼるじあ)イル・プリンチペ(いる・ぷりんちぺ)