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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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 ケセアレは破壊されかけた天井に輝く星々を見る。天井画の女神がルクレツィアに見え、それが自分を迎えに来たように思える。
 愚主であった父の代わりにヴァレンティノ家の当主として、側近達から帝王学を叩き込まれ、母の愛を知らずに育ったケセアレにとっては、妹のルクレツィアの存在だけが救いだった。そしてミケロットと三人で過ごす短い時間だけが、幸せなひとときだった。しかし、そのルクレツィアは家を出た。置き去りにされた、そうケセアレは苦しんだ。そして赫夜を初めて見たとき、ケセアレは自分とそっくりだと思った。野蛮で愛を知らぬ少女。五千年封印された日陰者の十二星華。暗い目をした孤独の少女。
 だが、ルクレツィアや真珠と過ごして、人間らしくなっていくのを見て、激しい嫉妬に苦しんだのだ。
(結局の処、私は嫉妬に狂い、自分の孤独に耐えられなかったおろか者よ。…しかし、もう、それも終わる…)
「ルクレツィア…最後は来てくれたんだな…この愚かな兄のところへ」
 ルクレツィアが微笑んだように見えた瞬間、王座の間は崩れ落ちた。



第4章 帰る場所



 ニセフォールは脱出の誘導にあたっていた。
 最初の方は
「はーい、こちら外で待機中の小型飛行艇ですよー。そろそろそこも本格的にヤバいみたいだから、脱出しないと駄目よーん」
 とおかま口調で余裕を見せていたが、浮遊島がゆっくりと降下して行くにつれ
「はやくしろ! 時間がないぞ!」
 男言葉へと変わっていった。

 それほど、事態は切迫した状況だったのだ。

 周や邦彦、アンジェラ隊も格納庫にあった飛行艇に乗り込むと、すぐさま、浮遊島から離れる。

 月詠 司(つくよみ・つかさ)はすでに退路を作成していた生徒達と連絡を取り合い、大型飛行艇を動かし、『王座の間』近くに接岸し、天井にドラゴンアーツで穴を開けて、怪我人をまず収容した。
 ラートレアもそれをバックアップして回る。
 司自身は自分は小型飛行艇で脱出するが、シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)が空飛ぶ箒で近付いて、後ろからツカサを蹴り落とそうとする。
「ちょちょっと、いきなり何をするんですか、シオンくんっ!?」
「ん〜、足が滑っちゃったみたい。なんかね、前回の風を作る際に馬鹿にされた気がしたから…」

 ウォーデンはあらかじめ、大型飛行艇に用意してあった小型飛空艇を必要数、発着させ、使用者に渡す。

 北都はHCより仲間に脱出路と格納庫までの位置を送信。乗り遅れが居ないか確認して蒼空学園の大型飛行艇に乗り込む。
 しかし、崩れ落ちていく浮遊島の速度は思った以上に速かった。

 格納庫からは仕方なく離れていくケセアレの部下達の大型飛行艇や小型飛行艇が瓦礫を避けながら、離陸する。
 同じように脱出路のマッピングに協力していた比島 真紀(ひしま・まき)から北都へ連絡が入る。
「どうしたんだい?」
「赫夜たちが未だ、脱出できていない様子だ」
 連絡を入れる真紀。
「え…? それは本当かい?」
「私は今格納庫にいる。赫夜や真珠たちの姿は確認できていない」
「…しまったな…よし、こちらでなんとかしてみよう。真紀、君もすぐに脱出するんだ。足は持っているかい?」
「小型飛行艇を一機、確保している。なに、私はシャンバラ教導団の生徒だ。この程度では死ぬ事はありえない」
「頼もしいね」

 静麻は、脱出してくる生徒達のために一足先に大型飛空挺に帰り、城崩落ギリギリまで待って離陸し、司たちと話し合い、『王座の間』近くに大型飛行艇を接岸させ、その情報を携帯やHCで一斉送信する。
「まずいな…浮遊島自体の落下速度が思ったより速い」
「静麻さん! 赫夜たちが未だ『王座の間』から逃げ切れていないの!」
 アリアや美羽が駆け込んできて、状況を伝える。
「…ケセアレとの決着に時間がかかったんだな…知らせてくれてありがとう! 大体の人数はわかるか?」
「赫夜に真珠ちゃん、それに佑也さん、正悟さん、にゃん丸さん…リリィさんだと思う。あと陽太さんともう一人仮面の人がいたけれど、あの人達は小型飛行艇を持ってるはずよ」
 同時に北都からも
「赫夜たちが帰ってきていないのが確認された」
 と報告がもたらされる。
「わかった。…。限界高度まで脱出する人等を受け入れる体制で動かすか、あんたの判断でパイロットに指示を出してくれ」
 大型飛行艇に戻っていた黒龍に静麻は頼む。本来、黒龍は格納庫でギリギリまで赫夜たちを待つつもりだったが、司たちが『王座の間』近くで退避路を作ったことで、一旦戻っていたのだ。
「了解したが、閃崎、おまえはどこへいくんだ?」
「主役達を助けに行ってくる…小型飛行艇が数機、余っていたな」
 事情を悟った黒龍は
「その主役達の人数では、小型飛行艇も何台かいるだろう。私も手伝う。パイロットへの指示は清泉と虎鶫、二人に頼む…私たちが飛行艇で飛び立ったら、浮遊島からの離陸を始めてくれ。そうしないと、この大型飛行艇に乗っている多くの怪我人や生徒が犠牲になる」
「分かったよ。涼、協力を頼むよ」
「もちろんだ…閃崎、天、赫夜たちを助けてきてくれ」
「任せてくれ」

 その間にも浮遊島の落下は止まらない。
 レオポルディナ・フラウィウス(れおぽるでぃな・ふらうぃうす)は玲と協力し、救助活動に精を出していた。
「みなさん、頑張ってください…! わたくしのヒールで治して差し上げます!」
 天華も乗り遅れていた人々を空飛ぶ箒にのせ、大型飛行艇に乗せてやる。
 そこには敵も味方もなく、ただ、ひたすらに救助に当たる生徒達の姿があった。

 にゃん丸たちはマッピングされた情報を元に、『王座の間』近くに接岸された大型飛行艇のところへたどり着いた。