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男子生徒全滅!?

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男子生徒全滅!?
男子生徒全滅!? 男子生徒全滅!?

リアクション


―プロローグ―

 雨が降り続く蒼空学園は、夕暮れ時を過ぎ夜を迎えていた。
 ほとんどの生徒はすでに帰宅しており、屋内での部活動していた生徒も、腹ペコのお腹を少々のお菓子や飲み物でごまかしながら、傘を揺らして帰って行った。

 これは、その少し後の話である。

 校庭の池をしげしげと眺めていた生徒が、目的のモノが発見できなかったのであろうか、黙って立ち去ろうとしたその時、池の水面にまるでキノコが生えるかのごとくニョキッと出てくる緑の物体。
 水かきの付いた手をサッと男子生徒の方にむけたと思うと、写真のフラッシュのような強烈な光が弾ける。
 何気なく振り返った男子生徒が首をかしげていたが、何故かハッとした顔で自らの体をまさぐり出す。
「あああぁぁっ……な、ないっ!?」
 ゆっくりと、だが確実に。ちょうどコーヒーに溶けていくクリームのように、生徒の表情が困惑からやがて絶望へと変わっていく。
「ああっ、神様、僕が何か悪いことしましたか!?」
 そう言って膝まずき天を仰ぐ男子生徒の背後から野太い声がかかる。
「やだわっ、ちょっと! 神様ですって!? 他力本願もいいとこよね!」
「貴殿‥…あ、いや南臣ちゃん。言い過ぎではないか?」
 男子生徒がサッと声の聞こえた方向を振り向くと、ローグの南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)とドラゴニュートでウィザードのオットー・ハーマン(おっとー・はーまん)、他数人が立っている。
 男子生徒の目からは、何故かまばゆい光に包まれていて二人以外の全容はわからない。しかし、逆光気味のシルエットから全員が明らかにスカートを履いた集団であることはわかる。
 にしても大きい。女性で身長がこんなにある者がいるのだろうか? そう思う男子生徒の心を読んだかのように、オットーが自身の体を抱きしめ、モジモジと動く。
「ぬおぅ、野郎の視線がそれがしの柔肌を這い回る……貞操の危機か!? しかし、しかし、ちょっとだけなら……それがし人肌脱いでしまうかもしれぬ」
 ……恐らく思春期の少女のような恥ずかしさをオットーは感じているのだろうが、如何せん身長が220あるドラゴニュートである。傍から見ていると、岸にマグロが打ち上げられてピチピチと跳ねているのと大差ない。
「ハーマン! 何言ってるの!? こういう時こそ南臣ちゃん達の出番でしょう! そう、そこのアナタ、ほら、アナタよ!!」
 きょとんとした男子生徒の方へ、腰に手を当てた南臣が、恐らくパッドで増築したであろう胸を突き出すように歩いてくる。
「ひっ!?」
 と、男子生徒の顔に恐怖の色が浮かぶ。
 それもそのはず、黒色の肌と乳白金色でシャギーの髪をもち、何故かチアガールの衣装を着ている南臣は、誰もが一瞬で「敵だ!」と判断できる容姿であった。
 ちなみにオットーを含め、全てのシルエットがチア衣装であり、視界に入った時のインパクトは半端ではないが、ミニスカートから伸びた足は、全員、元からなのか体毛があまりない。
「アナタも池にアレ見に来て、そんなのになっちゃったんでしょ!? わかるわ! だって興味あるもんね?」
「え……いえ、僕は」
「でもね、人生何が起こるかわからないのよ!? だから南臣ちゃん達と一緒に、チアやらない?」
「……チア?」
「そうしなさいよ! 大丈夫、南臣ちゃん達も、つい昨日ユニホーム作ったばかりなのよォ! ね?」
 南臣が一団を振り向くと、訓練された兵隊の如く一斉に頷くシルエット達。
 ただし、オットーだけは自分の妄想の中で悦に浸っている。
「で、でも、誰を、応援するんですか!?」
「そうねェ……」
 と、乙女のように頬に手を当てて考える南臣。
「南臣ちゃんは、どっちでもいいんだけどね。この事件を解決させようとしている生徒達が居るみたいなのよォ! ね、その人達にエールを送っちゃいましょう!!」
可愛くないウィンクをする南臣に、男子生徒は戦慄を覚える。
「あの……それ邪魔に」
「そうよ!! それがいいわ!!」
 グッと拳を握り空を見上げる南臣。
 流れ星でも落ちてこないかなと、乙女チックに空を見上げているオットー。

 やがて南臣率いるチアの一団は、男子生徒と強引に肩を組み、ゆっくりと闇の中に消えていった。
 その後ろ姿を見ていた河童は何故か皿の無い頭を抱えて水の中へと消え……失礼、沈没していった。