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大決戦! 超能力バトルロイヤル「いくさ1」!!

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第16章 闘いの中で生きる

 超能力バトルロイヤルは、10人の「勝利者」が認定され、終了した。
 校長の結界は消失し、残されていた生徒たちも、激しい噴火を繰り返すガガ山に追われるように、順次撤退していく。
 生徒たちがいなくなった後も、ガガ山は継続的に噴火を続け、ついに、地元でも立ち入り禁止となってしまった。

 今回のバトルロイヤルを通じて、多くの強化人間たちは、自分たちの生のよりどころを発見したように感じていた。
 強化人間たちは揃って、「闘いの中にこそ、自分の生がある」と主張するようになった。
 まるで、闘い以外に生はないというように。
 コリマ校長は、強化人間たちのカリスマとなり、その力強い言葉は、多くの強化人間にとって、励ましとなった。
 学院内には超能力特訓用の闘技場が開設され、サイオニック、強化人間ともに、暇さえあれば特訓に励むようになる。

(うまくやったな。おぬしは、我々の張った結界を飛び越えて、集団テレポートまで行うのは難しいと踏んだのだ)
(だから、自分だけテレポートすることにして、横島沙羅に「勝利者」になり、他の生徒を助けてもらうよう校長に頼むことを指示したのだ。生徒たちが助かる、最も安全なやり方をとったというわけだ)
(それにしても、考え抜かれた人選だな。横島沙羅なら、確かに「勝利者」の認定を問題なく受けられる。我々は彼女の破壊傾向を評価しているし、学院幹部も疑義を唱えない。そして、「勝利者」の頼みなら我々も聞く)
(さらに、お前の周囲の生徒たちは、「勝利者」である横島の知人でもあるから、上層部に敵対するかに思われた生徒たちも、今回の件は大目にみてもらえるというわけだ。まあ、今回だけだがな)
(我々も受け入れざるをえないやり方を考えるとは、たいした奴だな。できれば、おぬしに本物の「戦士」となってもらいたいところだ。いまからでも遅くはない。よく考えることだ)
 コリマが校長室から仕掛ける感応に、海人は答える。
(いったはずだ。設楽カノン。あの子をあんな風に扱ったお前に、協力はしないと。むしろ、求めたい。お前が考えている、今回の成績不良者に対する「処分」を、いっさいとりやめろと)
 海人の要求に、さすがのコリマも驚いた。
(自分の立場がわかっているのか? いったい何だって、お前の要求を我々が聞かなければならない? 何の取引もなしに?)
(なぜなら、僕は論理的におかしいことを指摘していて、お前も認めざるをえないからだ。今回のバトルロイヤルは、山頂に先にたどり着いて指輪を手に入れ、テレポートして認定を受けた者が「勝利者」になるのであって、超能力スキルの素質や実力とは関係がない。今回の「勝利者」は、あくまで目安なのであって、超能力スキルの客観的な評価基準にはならない。それに、取引ならある。僕をまた、拘束するがいい。要求がかなうなら、受け入れよう)
 海人の言葉をじっと聞き、深い考察の末、コリマはいった。
(なるほど。確かにそうだ。我々も、1回のバトルロイヤルで全ての評価を下すのは性急だった。おぬしの意図は抜きに、アドバイスとして受け入れ、「処分」は保留にしよう。そして、監禁させてもらうぞ、サンプルX。自己犠牲も辞さないとは、どこまでも甘い奴だ)
(くれぐれも、勘違いするな。拘束を受け入れるだけで、お前に協力するといった覚えはない)
(わかっているさ。それに、説得する必要も、そのうちなくなるのだ)
 謎めいた言葉を残し、コリマはほくそ笑む。
 強化人間「海人」は、再び管理棟の奥深くに監禁され、一般の生徒たちから隔離されることとなった。
 海人は、最初から、指輪の力がなくても、自分一人なら校長の結界を越えてテレポートできるだけの力を持っていたのである。
 にも関わらず、最後まで生徒たちを現場で見守ろうとした点に、多くの者が指摘する彼の「甘さ」があるのだった。

 そして。
「みんな、おはよう!」
 設楽カノンは、今日も元気に学院に登校していた。
 あの後、意識が回復したカノンは、精神が若干落ち着いた状態になっていたのだ。
 パラ実生との闘いで力を1度使い果たしたことが、かえって精神を安定化させたようなのである。
 もちろん、また精神不安定に陥るのも時間の問題だが、しばらくの間、カノンの「小康」は続くのである。
 しかし、カノンは、「死楽ガノン」でいたときの記憶はなくなっているようだった。
 周囲の生徒たちも、カノンの中のもう1つの人格について、決して口にすることはなかった。
 いつの日か、再び「ガノン」は現れるかもしれないが、そのときまで、カノンには絶対秘密にしようと、暗黙のルールがつくられたのである。
 もうひとつ、暗黙のルールができた。
 バトルロイヤルの中でパラ実生に乱暴されたトラウマが、カノンの中ではまだくすぶっているのだ。
 いまでも、スケベ根性丸出しの男子をみると、カノンが目の色を変え、精神が不安定になることがある。
 だから、周囲の生徒たちは、カノンの前では下ネタひとついうにも気をつかおうと誓いあったのである。
 そう。
 たったいまも、ニヤニヤ笑いを浮かべながら、廊下で女子のスカートをめくって悦に入る無邪気な男子の姿をみかけたとき、カノンの様子がおかしくなった。
「もう、あの人、エッチなんだからー」
 同級生の女子が、困ったもんねとカノンに笑いかける。
「そ、そうね。ああいう人って……殺す。コロスコロス!」
「えっ、いま何ていったの?」
「な、何でもないわよ。ふふ」
 取り繕ったような笑みを浮かべるカノンだが、周囲の生徒は、みたのだ。
 一瞬、カノンの目が、狂気に満ちた表情で、スカートめくりの男子を睨みつけたことを。
 その目に、「死楽ガノン」を思い出す生徒もいたという。

担当マスターより

▼担当マスター

いたちゆうじ

▼マスターコメント

 今回は抽選の時点で激戦になっていて驚きました。「勝利者」に認定された方々は、今後、コリマ直々の指導を受けるような展開も考えています。
 感じたのは、超能力中心のバトルは、超能力者の「心」の問題を描くことにもウェイトが置かれるので、心理描写が多めになり、結果として文字数が多くなるようです。
 気合の入ったアクションばかりで、いろいろ考え込みながらのマスタリングになりましたが、いかがだったでしょうか。

 お話としては、強化人間として設楽カノンと海人を対照的な存在として描写し、さらに超能力者たちの指導者として、コリマ校長と海人を対照的に描写するようにしました。つまり、「カノン」「海人」「コリマ」の3者を柱として物語が展開し、3者それぞれとの関わり具合でキャラクターの立ち位置が決まるようになっています。

 コリマについては、極悪人として描くよりも、腹黒い側面を持ちながらその主張には正論も含まれていて、超能力者たちの力強い指導者としての一面を持った、深みのある人物にするよう努めました。

 カノンは、既に他のマスターのシナリオにも何度か登場しているので、設定をふまえ、「いたちナイズド」しすぎないように配慮しました。ですが、「死楽ガノン」はやりすぎだったでしょうか? 私はこういうキャラが好きなので、今後もカノンを描いていけたらと思っています。

 また、山葉涼司については、諸事情により最初登場する予定はなかったのですが、アクションに呼ばれるかたちで登場することになりました。人気がありますね。


 最後に、今回の「勝利者」一覧を示しておきます。

※いくさ1「勝利者」
【01】SFM0004139(藤原優梨子)
【02】SFM0012751(鬼崎朔)
【03】SFL0026212(ラヴィーナ・スミェールチ)
【04】SFM0023778(端守秋穂)
【05】SFL0025941(結城真奈美)
【06】SFL0028941(メルセデス・カレン・フォード)
【07】SFM0024591(オリガ・カラーシュニコフ)
【08】SFM0026844(茅野茉莉)
【09】SFM0025643(グンツ・カルバニリアン)
【10】SFL0026704(横島沙羅)

 それでは、みなさん、参加頂き、ありがとうございました。