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十五夜お月さま。

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十五夜お月さま。
十五夜お月さま。 十五夜お月さま。 十五夜お月さま。

リアクション



第十二章


 せっかくの、月の綺麗な十五夜だと言うではないか。
「そうだ。お月見しよう」
 そう決めた無限 大吾(むげん・だいご)は、ケータイを取り出してメールを打つ。
 仲の良い友達に、一緒に月を見ないか? と。
 答えはすぐに返ってきて。
「お月見するぞ!」
 大吾は、パートナーたちに笑顔で伝えた。

「お月見といえばお団子だね〜、あたい、作り方知ってるよ〜。料理もできるよ〜。教えてあげるよ、みんなで作ろ〜」
 ゆるゆるとした調子で、廿日 千結(はつか・ちゆ)は提案した。
 月を見るなら、団子とお酒、お茶は必須だろうと。
 そして、作るのならばみんなで作った方が面白いし、楽しいし。
「うん、作る作る。教えてー」
 真っ先に提案に乗ったのは、緋王 輝夜(ひおう・かぐや)。ちゃちゃっとエプロンを着て、髪もまとめて。
 それに続いて、西表 アリカ(いりおもて・ありか)もエプロンを着る。
「団子ですか? 作るのなら私も――」
 と、セイル・ウィルテンバーグ(せいる・うぃるてんばーぐ)がにんまり笑ってキッチンへ入ろうとしたのを、
「セイルは駄目だっ!」
 慌てた様子の大吾が止める。
「……なんでです? 私だって、毎日練習してるから、きっとかなり上達したはず」
「自己認識だろ? お前の料理は、危険だ」
 その料理の危険さは、よーく知っている。身をもって、知った。そしてもう、知りたくない。さらには、大切な友人をそんな危険な目に合わせるわけにはいかない。
 なので大吾は、キッチンへ入ろうとするセイルを必死に止めた。
「……そうですか」
 思いのほかあっさりと、セイルは身を引く。あっさりすぎて、大吾が「え?」と素っ頓狂な声を上げるほど、引き際が良かった。
 そして、キッチンから聞こえてくる、
「普通のお団子もいいけど〜、どうせだし今日は中にこしあんを入れて作ろう〜」
 という、千結ののんびりとした声を聞いて。
 羨ましそうな、寂しそうな眼を向ける、セイル。
 止めない方がよかったか? と大吾は一瞬焦るのだけど、
「……いいですよ、ふふふ……」
 地の底から響くような、低い低い笑い声に。
 ああやはり、止めて良かった……よな? と、自分の選択の正しさを、自分に問うた。

「千結さん! 今日もとてもお美しいですね……!」
 団子作りの始まったキッチン内で、場違いにもナンパを繰り広げるはエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)
「ほんわかゆるゆるとした、見ている者を眠くさせるような、副交感神経に訴えかける美……素晴らしいです」
「はい、わかったから料理の邪魔っ!」
「そげぶ! ……輝夜さんの愛は強烈ですねぇ、うぅ」
「うっさい、邪魔!」
 二発目のグーを輝夜から受けつつも、エッツェルは笑う。
 ああ、みんな楽しそうだ。
 楽しそうな皆が、可愛い。
 可愛いから頬が、緩む。
「エッツェルちゃ〜ん」
「はいはい?」
 その、可愛いの中心でお団子をこねている千結に声を掛けられ、にこやかに返答。
「あたいじゃ力が足りなくて上手く団子粉こねられないから、手伝って〜」
「お安いご用ですよ!」
 団子作りの輪にも入れてもらえて。
 もしかして、私も可愛いの中に入れますか!? なんて、一瞬だけ夢を見たけど。
 まぁ、一瞬だけだ。
「どうぞ」
 こねたら、下がるさ。
 だって私は、
「邪魔になっちゃいますからね」
 あくまで笑顔で、
「あとは女性陣にお任せしますよ。美味しいお団子、愛情込めて作ってくださいね!」
「うっさいもー、早くどっか行くっ」
 道化を演じながら。

「うー、エッツェルが邪魔するから。調子狂うー」
 輝夜は、ぶつぶつ言いながらも教えられた通りに団子をこねた。
 そして、餡子を詰める。
 ……上手くいかない。はみ出る。
 むぅ、と頬を膨らませると、
「最初なんてそんなもんだよ〜」
「うん、ボクなんて、見てよこれ」
 千結とアリカの声。
 見て、と言われて見てみたら、
「……なんか、ゲームのスライムみたい」
「だよねー? スラりんとかスラぼうとか、そういう名前つけられる類だよね」
 アリカの生成した団子は、ぐにゃりぐにゃりと形を留めていなかったり、餡子がはみだしたり、それが生地と混ざってマーブルになっていたり。あまり見た目がよろしくなかった。
「お団子作りって難しいんだね。もっと簡単にできるものだと思ってたよ」
「ね、難しいや。なんで千結はそんな上手く作れるかなー」
「アリカちゃんも輝夜ちゃんも、料理に慣れてないだけ〜。やってればすぐ上手になるよ〜」
 相変わらずの口調でフォローしながらも、千結は団子を手際よく丸めていく。月のようにまんまるで、可愛らしいお団子だ。
 それを見て、少しでもあの形に近づけたいなと、憧れとやる気が湧いた。
「よっし!」
 気合を入れ直すように声を上げると、千結が笑む。
「その調子、その調子〜」
「輝夜さん、やる気だ。ボクも頑張るぞー」
 触発されて、アリカもそう声を上げて。
 ころころ、ころころ。
 丸かったり、いびつだったりする団子が、出来上がっていく。

 そんな一方で。
 セイルとルーシェン・イルミネス(るーしぇん・いるみねす)は、大吾とコルセスカ・ラックスタイン(こるせすか・らっくすたいん)に見張られていた。
 理由は、『危険だから』。
 セイルの料理は、大吾が。
 ルーシェンの料理は、コルセスカが。
「恐ろしいからな……」
「ああ、折角の月見の場。食中毒など、出させんぞ!」
 その怖さを知っているから。
 見張るのだ。
 見張られている側としては、良い気分はしない。
 セイルもルーシェンも、料理の勉強をしたし練習もした。
 だから、そんな怖い目で見られるような料理は作らない……と、思う。
「千結や輝夜の手伝いをしたいだけなのですが」
「ね、あたしたち、『へいわしゅぎしゃ』だしっ」
 だから手伝わせろ、とアピールするが、
「「駄目だ」」
 ハモってまで止めなくてもいいだろう。
「諦めましょう」
 先に音を上げたのは、セイル。
「え」
 思わず驚きの声を上げる、ルーシェン。
 諦めるんですか? と目で問うと、嘆息された。諦めるつもり、なのだろうか。
 そんな様子を見ていた大吾とコルセスカが、顔を見合わせてあからさまにほっとした様子。
「大丈夫なら……ススキをとってきたりしようか」
「月見のお飾りだな。手伝うぞ」
 そして、そんなことを言い出す。
 さっきまでは、見張りから動こうとしなかったのに。
「……クク……チョロイもんですね……」
 二人が背を向け遠ざかった瞬間、セイルの黒い声。
「セ、セイルちゃん……」
「作戦ですよ、ルーシェン。
 まぁ、離れて行ったとはいえ……私達が台所に入ろうとすれば、止められるのは火を見るより明らか。
 ならばどうするか……クク、策はありますよ?」
 セイルは、怖い。
 だけど、味方にすれば、恐ろしく頼もしい。
「セイルちゃん、あたしもお団子、作りたいよっ」
「でしょうね。ですから、ルーシェン。貴方にもその策を伝授します」
 耳に口を近づけて、ひそり、ひそり。
 堂々とした、けれど秘密の、作戦会議。
 終わった頃には、二人の顔には笑みが浮かんでいて。
 その笑みは、悪戯っ子と称するにはあまりにも黒い笑みだった。

 さて、そういった彼女らの黒い企みには気付かぬまま、団子は完成した。
 完成したところへと――セイルとルーシェンは、忍び寄る。
 そして、団子が並んでいる皿に、『特製』の団子を盛り付けた。あぶれた団子は別の皿へ。
 行動を終えると、実に俊敏な動きで撤退。
「? あれ〜、誰か居た〜?」
 千結に気付かれないまま、混ぜ込むことに成功した。
 ニヤリ。顔を見合わせて、二人は笑う。
「千結ちゃん、お皿多くない?」
「本当だ。一皿余ってるね〜、人数分しか用意してないのに……」
「じゃ、お供え用にしておこうよ。お月さまがお団子欲しがったんだって、きっと」
「かもしれないね〜、じゃあ、そういう方向で〜」
 ゆるゆるな千結の声と、アリカの声と、輝夜の声と。
 気付いていない様子にまた、くすくす。
「ぬっふっふ。あたしの料理の上達ぶりに驚くといいのよっ!」
「私達の自信作です。きっとド肝を抜いてくれるでしょう。ふふ……」
「何を笑っているんだ?」
 大吾の声に、ドキィとした。バレたら、だめ。食べるまでは、バラしてはならない。
「お団子が美味しそうで、つまみ食いしちゃおうかっていう相談ですよ」
「何っ、つまみ食いは許さん!」
「そうですよ、お行儀悪いですからね」
 エッツェルが介入したことで、言い訳の自然さが上がった。
――ふふふ……全ては計画通り、ですよ……。
――そう、計画通りなんだからねっ! セイルちゃんの計画に狂いもないんだから!
 心を通わせた二人は、「「つまみ食いしないでーす」」と同時に言って、謝るふり。
 そうこうしている間に、団子が机に並べられた。
「なにしてるの〜」
「お団子できたよ! ほら、美味しそうでしょ」
 千結が並べ、輝夜がてきぱきとお茶も準備し。
 アリカは崩れたお団子を持って、席に座り。
「アリカ? なんだそれ」
「自分で作ったお団子。不格好で恥ずかしいから……自分で食べるつもりで」
「そうか? 初めてにしては、上出来じゃないのか」
「そ、そんなことないよ。……大吾は優しいね、ありがとっ」
 むぅ、私にはあんな優しい言葉をかけなかったくせに。
 嫉妬ではないけれど、セイルの心にとげが生える。
 それだけ不味かったということか。だったらいっそそれはもう、武器として個性として扱ってやろうとも、思える。
「さ! みんなお団子あるねーお酒やお茶もあるね?」
「ありますよ〜」
「輝夜さんが入れてくれたお茶は美味しそうですね。もちろん、千結さんが作ったお団子も」
「うん、エッツェル、くどい」
 輝夜にエッツェルが一蹴されつつ。
 全員席に着き、「いただきます」と挨拶し、団子へと手を伸ばす。
「美味しい!」
「うん、こしあん入れたの正解だね〜、甘くて、美味しい〜」
「そこにお茶の和な苦み。うーん、月を見ながら団子とお茶と、いいね」
 アリカが、千結が、輝夜が、舌鼓を打つ中で。
「!? こ……これは……まるで……」
「ぐっ!? み……味覚が……!?」
「闇よりも黒いものが……ガハッ」
「味覚が、いや、味覚の……バイオハザード……だ……」
 エッツェルと、大吾が、倒れ伏した。
「なっ!?」
 コルセスカが、団子に伸ばした手を引っ込めてルーシェンを見る。
 ルーシェンは、セイルほど役者ではなかった。そっぽを向いて、吹けない口笛をひゅぃひゅぃ、吹いて知らぬふり。
「ルーシェン……いつの間に自作団子を混入していたんだ……!? 食中毒は出さないつもりだったのにっ!」
 ああっ、と頭を抱えるコルセスカを見て、セイルは笑う。
「どっちがどっちのを引いたんでしょうね?」
「わかんないねー、もうちょっと味にレパートリーつけとけばよかったね」
 一方で、全くと言っていいほど懲りていない二人。
「次はさせんぞ!」
「う〜ん、お団子を美味しくいただいてもらいたかったんだけどな〜」
「大吾、大丈夫……?」
「こら、二人とも! ちょっとは反省しなさい!」
 全員が口々に物を言い。
 お団子パーティなんか、していられない感じになった。
「だって除け者にするから」
「寂しかったんですよ?」
「そんな可愛い言い訳が通じるダメージか?」
 コルセスカが倒れた二人へ視線を投げる。
「……あら」
「や、やりすぎちゃった?」
 完全に気を失って、うわごとを言うエッツェルと、大吾。
 二人を見て、ルーシェンは、
「うーん。ごめんなさい」
 素直に謝り。
 セイルは、
「これは……本格的に、武器化できますね……」
 むしろ自分の腕前に感心し。
「そういう問題じゃない〜」
 さらに追加で、怒られる羽目となった。

 そんな、ロシアン団子は幕を閉じ。
 静かになった頃、エッツェルは一人、外に出る。
 月を見ながら盃を傾けるのも乙なものかと思ってのことだ。
「おや、起きていましたか」
 同じような考えなのか。外には、大吾とコルセスカも居て。
 成人しているコルセスカは酒を、大吾は甘酒を、飲んでいた。
「綺麗な月だよな」
 大吾が言う。
 倒れている間に、月は空高く昇っていた。
 それはそれは、大きくて、とても綺麗に輝く月。
「二人とも、大丈夫なのか? あの団子……」
「もう二度と食べたいとは思わないが、大丈夫だ」
 コルセスカの問いに、うんざりと大吾が答えたのに笑う。
 なんだよ、と疑問符の浮かんだ視線に「失礼」と詫びてから、
「私は、楽しかったんですよ」
 と、ぽつり。
「本当に……楽しい日々です。いつまでも続けばいいと、思いますよ」
 無理でしょうけど。
 自嘲気味に笑って、酒を呷る
 それから己の左腕を見て――禍々しい鼓動に、また笑う。
 無理だろう。
 この手がある限り。
 無理だろう。
「?」
「続くだろ?」
 けれど、友人二人はさも当然のことのように、「何を言っているんだ?」なんて言うから。
「……続きます?」
 思わず、期待の問い。
 期待するだけ馬鹿だって、知ってるのに。
「続けないつもりなのか?」
 大吾がなぜ? と首を傾げ、
「望むなら、そう行動するべきだ」
 至極当然な、真っ直ぐすぎる痛い意見を、コルセスカ。
「……そうです、よねぇ」
 少しくらい、あがいてみても。
 いいですよねぇ?
 だって月がこんなに綺麗だもの。
 願えばひとつくらい、何か叶いそうなほどに、見事なのだもの。
「楽しい日々、続けて――いきましょうね」
 非定形じゃなくて、疑問形じゃなくて。
 自分で動く。
 自主的な答えを、言葉にして。
 見上げた月は、なんて温かい。


*...***...*


 十五夜。
 見事な月を、観賞できた。
 これ以上ないほどに、大きくて、明るくて、強く温かな月。
 空に浮かんでいながら、人々を包み込むような、不思議な月。

 そんな月を見て、何を思ったか。
 綺麗?
 大きい?
 丸い?
 兎が居た?
 それとも、
 また、見たい?

 月はいつでも、空で輝いている。


担当マスターより

▼担当マスター

灰島懐音

▼マスターコメント

 お久しぶりです、あるいははじめまして。
 ゲームマスターを務めさせていただきました灰島懐音です。
 参加してくださった皆様に多大なる謝辞を。

 今回は、灰島シナリオ初の100人越えとかで。
「あ、あれ? 昨日バイトから帰ってきた時は、追加33人くらいじゃなかったっけ? あれ?」
 とか、リアルに口に出して驚いていました。
 いつもながら、ご参加ありがとうございますと改めて。

 さて内容です。
 前回の花火よりはいくらか落ち着いたボリュームとなって……なかった! 増えてた! 5000文字くらい!!
 おかしいな、前回書きすぎかなって思ったから、自重したつもりだったんですよ? これでも。
 できるだけ行動をまとめたりとか……とかとか……してたはずなのに、あれー?
 書きたい事がいっぱいあったんですね。だって皆様の行動が素敵だから、漏らせないんだもの。
 そういうわけで、相変わらず出番寸断ずったずたーなお客様が何人もいらっしゃいますごめんなさい。
 え、このページこのシーンだけ!? って思っても、次のページで平然と登場してるとかザラです。本当ごめんねー!

 そして今回も素敵デートやグループアクションをありがとうございました。
 お月見なんて風流なものとは縁のない寂しい灰島が、お月見した気分でニヤニヤしてました、相変わらずキメェ。
 そんで、団子団子団子月餅団子! って書いてたら団子が食べたくなりました。
 代わりに大福食べました。なんか違うよなぁ。まぁ、大きい団子だよなぁと思うことにしましょう。
 ……いや、やっぱ違うよなぁ。今度お団子作ろうかなぁ。
 とか、だんだん話がリアクションから、あとがきから、離れてきたし今回もグダグダ。
 というわけで、まとめに入りましょうか。

 今回もご参加いただきました皆様。
 素敵なアクションをくださった皆様。
 文字数制限のあるアクション欄で、わざわざ灰島に私信を下さったあの方やこの方。前回から火が付いた灰島人気に一番驚いてるのはわたしだぞこのやろー、みんな大好きだばかー! という感じの灰島です、ありがとうございます。
 ぜひまたお会いしましょう。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。