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少年探偵と蒼空の密室 A編

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少年探偵と蒼空の密室 A編

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ANOTHER ハロウィン小隊イレギュラーズ結成

 メロン・ブラック博士の危険な実験に、志願して、参加したという理由で、桐生景勝、リンドセイ・ニーバー、須藤雷華、北久慈啓、狭霧和眞、ルーチェ・オブライエン、榛原勇らは天御柱学院の一室に軟禁されていた。
「こういうゲームみたいな展開のリアルもおもしろいよな。バッドエンドと思わせといて、こっから景勝ちゃんたちの逆転がはじまるとかさ」
「おもしろがっている場合では、ありませんよ。ぷんぷん」
「ゲームは本物だったけど、私たちは村にも住民にも被害を与えなかったから、無罪ではないかしら」
「雷華のその態度は、反省の色がみられない、と取られるだろうな」
「博士はもう学院を去ったって、マジっスか。あの人、絶対、ヤバイっスよ。俺たちより、あっちを捕まえないとダメなんじゃないスかねぇ」
「招待されてゲームをプレイしていただけの私たちをこんなに長時間、拘束するのは、おかしいですね。事情は、校長先生にお話しましたし、なぜ、解放してもらえないのでしょう」
「僕の機体は、もう少しで学院が目視できるところまで、きていました。つまり、博士は、ああして全国の蒼空の絆を使って、遠隔操作イコンで各地で作戦を行わせていたのでしょうか」
「被験者のみなさん、お待たせしたわね。コリマ校長のみなさんへの処分を伝えるわ」
 ドアを開け入ってきたのは、魔女の異名を持つ黒髪、黒い瞳の少女、茅野 茉莉(ちの・まつり)だ。
 彼女は、実験参加メンバーの操る機体を捕獲&撃墜した、天御柱学院、ハロウィン小隊の小隊長である。
 茉莉の横には、パートナーの天才肌の芸術家、美青年レオナルド・ダヴィンチ(れおなるど・だう゛ぃんち)、小隊の隊員で温和そうな矢野佑一(やの・ゆういち)、佑一のパートナーで、ネコを抱えたアリス、ミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)がいた。
「あれだけ派手に撃墜した相手がこうして普通の顔で、目の前にいるのは、不思議な気分がするものなのだよ」
「ずいぶん物騒な実験でしたね。コリマ校長があれを黙認、放置する人でなくてよかったですよ。本人にそう言ったらニラまれましたがね」
「茉莉さんに校長から連絡があって、所属不明の怪しい小隊の作戦行動らしきものを調査に行ったら、きみたちだったんだ。この子はボクの猫のむ〜にゃ、よろしくね」
「にゃあ〜」
「カボチャ部隊の諸君、あいさつはそれぐらいにして、我々の処遇を教えてくれ」
 啓の要求に、茉莉は頷いた。
「コリマ校長は、あなたたちの責任を、これ以上追及しない。ただ、反省の形として奉仕活動を求めているわ」
「便所掃除ッスか」
「貴殿がどうしてもしたいのなら、自主的にどうぞ。校長が喜ぶかどうかは知らぬが」
 和眞に、レオナルドが微笑する。
「奉仕内容は、博士が残していった蒼空の絆の筐体の調査。校長は、実際にゲームをプレイしたデータが欲しいんですって。
つまり、みなさんには、プレイヤーとして新たなミッションを遂行して欲しいのよ。標的はメロン・ブラック。作戦内容は、マジェステイックにある彼の居城、城塞ロンドン塔の壊滅。どう、やってみる。ハロウィン小隊もプレイヤーとして、筐体に入るわ」
「これって、殺人の依頼だろ。このままだと学園のスキャンダルになるメロン・ブラックを、住処ごとブッ壊すわけだ。そんなことしていいのかよ。すげぇな。もみ消し工作だぜ」
「景勝さん。よけいなこと言わない方がいいですよ」
「ロンドン塔は、博士の私有地らしいから、私有地内でなにかトラブルがあっても、地主からの通報でもなければ、軍、警察は動きにくいわね。それに、これ、ゲームだし。どう? 乗る、乗らない」
「乗らないと今日、体験した出来事の記憶を強制的に消去されるんですよね」
「きみの得意な噂話のタネを増やすためにも、乗ったほうがいいんじゃないかな」
 佑一は勇に皮肉を言う。急な話にとまどっている面々に、ミシェルが語りかけた。
「迷う時間はないよ。きみらが乗らなくても、ボクらの小隊は、五分後には出発するんだ」
「二分だけ待つわ。公式ではないとはいえ、校長に貸しをつくりたい人はここに残って。それ以外の人は、二分以内にこの部屋から退室、と、いうことで」
 茉莉が提案してから、きっかり二分後、ハロウィン小隊のメンバーと実験の被験者たちは、全員、揃って部屋をでたのだった。