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番長皿屋敷

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「お帰りなさいませ、御主人様」
「おお、ほんとですね」
 アルディミアク・ミトゥナに迎えられて、店に入ってきた月詠 司(つくよみ・つかさ)がニマニマする。ゴチメイたちがキマクの食堂にいると聞いて、見に来たのだ。
 その月詠司の肩先から、何か白っぽい毛玉がぴょんと飛び出した。
「きゃっ。な、何!?」
 あわてて叩き落とそうとしたアルディミアク・ミトゥナが、それが生き物だと気づいてぎりぎりのところで受けとめた。
「あっ、もう出てきてしまいましたか。ココくんが可愛い物好きと聞いてプレゼントしようと思っていたんですが。よろしければ、あなたがもらってくれませんか?」
「ええと……。とりあえずお預かりしますね」
 まとわりついて離れないぷちわたげうさぎに、アルディミアク・ミトゥナが月詠司に言った。そのままテーブルに案内すると、注文をとってぷちわたげうさぎと共に奧に姿を消す。
「うまいことやりやがって。よっしゃあ、俺もナンパするぜえ」
 勘違いしたと言うよりも、本来の目的を顕わにしてパラケルスス・ボムバストゥス(ぱらけるすす・ぼむばすとぅす)が叫んだ。
「ちょっとちょっと、勘弁してください。私は、ただのんびりと食事がしたいだけなんですから」
 巻き添えはごめんだと、月詠司がパラケルスス・ボムバストゥスに言った。
「何言ってんだ。ツカサは、俺がナンパしている時間稼ぎのちゅどーん要員だろうが。せいぜい、頑張ってくれ。ふふふふふ、それにしても、ここは、ぱーらだいすかよ。可愛い女の子がよりどりみどりじゃねえか」
 この世の天国とばかりに、パラケルスス・ボムバストゥスが両手を広げて高笑いした。
「おいたはいけませんですわ。めっ!」
 パラケルスス・ボムバストゥスの言葉を聞きつけて、エイボン著『エイボンの書』が注意した。
「おっ、可愛いじゃねえか。どうだ、こっちの席に来いよ」
「きゃっ」
 パラケルスス・ボムバストゥスが、エイボン著『エイボンの書』の手を乱暴に引っぱる。
「これこれ、そういうことをしては……」
「そういうことは、おやめください御主人様」
 近くにいたリネン・エルフトが、見かねて間に入る。
「なんだ。ここはそういう店じゃないのか」
「もちろん違いますわよ。長原、フェイミィ、やっておしまいなさい」
 開きなおるパラケルスス・ボムバストゥスに、リネン・エルフトが仲間たちを呼んだ。
「おお、可愛い子がたくさん♪」
 駆けつけてくる長原淳二とヤンキー娘たちに、パラケルスス・ボムバストゥスがほくそ笑む。乱闘と称して、おさわりし放題だ。
 むぎゅっ。
「お、俺は……、男だぁ!」
 リネン・エルフトにメイド服を着せられていた長原淳二が、思いっきりパラケルスス・ボムバストゥスを殴り飛ばした。
「そうよ、そうよ」
 フェイミィ・オルトリンデの取り巻きのヤンキー娘たちがそーよ攻撃と共に適当に持っていた物をパラケルスス・ボムバストゥスに投げつける。
「ちょっと、私は関係な……うがっ!」
 無関係を主張する月詠司に、飛んできた椅子が直撃した。
「なんか、飛び交ってますぅ。でも、キマクの食堂では普通のことですねぇ」
 のんびりとお茶を飲みながら、アストリア・西湖が騒ぎに動じずに言った。そんな彼女の前に座って一緒にコーヒーを飲んでいた忍住京花の額に、飛んできたリンゴがごすんとあたり、下に落ちてコーヒーカップを粉砕した。
「大丈夫ですか?」
 心配して、アストリア・西湖がフェイミィ・オルトリンデに声をかける。
「た……食べ物を……そ……些末にするなあ」
 おでこにコブを作りコーヒーまみれになった忍住京花がキレた。フェイミィ・オルトリンデたちに加勢して、パラケルスス・ボムバストゥスたちを店の外に叩き出す。
「いらっしゃいませー。どうぞこちらへー」
 外で待ち構えていたクロセル・ラインツァートと魔鎧リトルスノーが、ほとんど拉致するように月詠司たちを自分たちの屋台へと連れ込んでいった。
 
    ★    ★    ★
 
 ずっと平和だと思われていた店内だが、そこはキマクに居を構える食堂のこと、女将さんに言わせれば可愛いらしいものだという小競り合いがあちこちで起こり始めていた。ただ、それも含めて、ここキマクでは、活気があるの一言ですまされているのがたくましい。
「うふふふふ。いい写真がたくさん撮れたのだよ。眼福、眼福」
 隅の席でカメラを構えながら、毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)がにんまりとした。
 格闘ともなれば、おパンツ見放題、撮り放題である。
「お嬢様、店内での撮影は一応許可をとってからにしてくれませんか」
 シュリュズベリィ著・セラエノ断章が、シャッターを切りまくっている毒島大佐を注意した。
「何? ここって撮影禁止なわけなの。どこよ、どこにそんなことが書いてあると言うのだよ。さあ、言ってみるのだ。何年何月何日何時何分何秒、いったい、いつそんな法律ができたって言うのだ。いい、ここはキマクなのだよ。パンツ番長の本場だ。さあ、どこがいけないのか言ってみるのだ」
 高圧的に、毒島大佐がまくしたてた。
「よく分かりました。あなたの言うことももっともです。さあ、気がすむまでこの私をお撮りください! 笑顔と共に癒しましょう!!」(V)
 むんとポーズをとると、ミニスカメイド姿のルイ・フリードが、ずいと毒島大佐に近づいた。
「さあ、お撮りください。さあ、さあ、さあ!」
 ずずずずーいと近づくルイ・フリードに、毒島大佐よりも先に彼女のカメラが音をあげた。なぜかぶすぶすと煙をあげ出す。
「きゃあ、我のカメラが」
「ならば、脳内記録をお願いいたします」
 悲鳴をあげる毒島大佐を、ルイ・フリードががっしりと押さえ込んだ。分厚い胸板に顔を押しつけられた毒島大佐が、則天去私を叩き込む前にくったあっとなった。