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激闘! 巨大雪だるま強襲!!

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激闘! 巨大雪だるま強襲!!

リアクション

 そして、フィリップたちが救出された後の山頂は――
「クソッ……また自己修復か!!」
 再び、巨大雪だるまによる自己修復の影響で猛吹雪がおきてたい。
 しかし――
「でもまぁ、コレで心置きなく雪だるまをぶっ壊せるな!」
 最早、巨大雪だるまの中に誰もいないことがわかり、破壊しようとする人間達は総攻撃をしかけようとしていた。
 だが――
「お前ら、少し待つんだぜ!!」
 突然あがったの声に――いや……その声の主の姿に、その場にいた全員の動きが止まった。
「お前ら! これ以上この場所で戦うことは、俺が許さないんだぜ!!」
 声の主は空飛ぶ箒に跨っていたのだが、何処からどう見ても……ハロウィンの定番、ジャック・オランタン。つまり、カボチャの被り物をしていた。
 実は、このジャック・オランタンの正体は春夏秋冬 真都里(ひととせ・まつり)なのだが、彼は別に変装の意味合いでカボチャを被っているわけではなかった。
「お前らがこれ以上ここで暴れ続けたら、雪崩の危険だってありえるんだぜ。だから、戦うのなら場所を変えるべきなんだぜ! 戦うのは勝手だけど、雪山にロマンスをしに来た人たちを雪崩なんかには巻き込ませないんだぜ!! 大丈夫、巨大雪だるまの誘導は俺に任せれば良いんだぜ。なんせ、その誘導のための被り物なんだぜ!」
 実は真都理の中では、雪だるまの天敵=ジャック・オランタン。という図式がるのだが……もちろん、それを知らない人間達は全員がポカーンとしていた。
 しかし――
「さぁ、来い! ヒーホー☆ 魔法の石を装備したお前には意志があるはずだぜ!」
 周りの意見など一切無視……というよりは耳に入らずに、人気のない――ホテルとは離れた麓を目指して箒で飛び出す真都理。
 しかも――
「やい、巨大雪だるまのおたんちん! こっちだ! 憑いてくるんだぜ!」
 彼のジャック・オランタン天敵理論が正しかったのか、罵倒された巨大雪だるまは肥大しきった巨体でノロノロと真都理を追いかけ始めた。
「ヒーホー☆ 雪山のロマンスを邪魔する雪だるまは、嫉妬の炎に焼かれて溶ければいいんだぜ! でも、俺にはロマンスなんて関係ないんだぜ……あぁ、なんだか雪だるまを応援したくなっちまったぜ……って、いやいや! いくらロレッタとの仲が微妙だからって俺までそんな考えじゃ駄目なんだぜ。さぁー来い、デブだるま! ヒーホー☆」
 ところどころ自分の近況と私情を無意識に吐露しつつ、季節外れのジャック・オランタンは巨大雪だるまを人気のない麓へと誘導していった。

「おっきい雪うさぎ、ちゅうくらいの雪うさぎ、ちっちゃい雪うさぎ〜♪」
 人気のない麓では、ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)とパートナーのロレッタ・グラフトン(ろれった・ぐらふとん)が、ゲレンデの騒々しさを避けてノンビリと雪遊びに興じていた。
 しかし――
「あれ? なんだか、ゴゴゴ〜て変な音するけど……気のせい?」
 突然、聞きなれない音が耳に入ってきて首を傾げるミレイユ。
 だが、次の瞬間には――
「こっちなんだぜ、ノロマの雪だるま! ヒーホー☆」
 ミレイユたちにとって、聞きなれた声が聞こえてきた。
「あれ? もしかして、真都理くんかなぁ? わぁ……また変な事してる。何か、仮装しておっきい雪だるまに追いかけられてるよぉ?」
 真都理の様子をロレッタに伝えるミレイユ。
 しかし、当の本人ロレッタは――
「何だ……真都里のやつもスキー場に来てたのか。フンッ。でもどうせまた、無茶な事して巻き込まれて不憫全開になるのが目に見えてるんだぞ!」
 と言いつつ、最近とある事情でムッとしてしまっている真都理を見ずに、ギュムギュムと雪ウサギを作り続けるのだった。
「た……助けにいかなくていいの?」
「助けになんかいくわけ……って、何でロレッタがそこまで気にしないといけなんいだ……っ腹が立つ、非常に腹が立つんだぞ……!!」
 頑として真都理を見ようとしないロレッタ。
 しかし――
「ん〜〜ヒーホー☆ 整ったぜ! 俺とロレッタの愛の炎とかけてぇ、俺とロレッタが今後遭遇するであろう数多の問題と解くんだぜ!」
 山びことなって、スキー場中に響き渡る真都理の高らかな声。
「その心はぁ……とけ(溶け・解け)ないものなんて何も無いんだぜ! ふぅはははーーー! ふぅははー!! ヒーホー☆」
 もはやヤケクソとなった真都理の叫びは、エコーのように何度も何度も反響するのだった。
 そして――
「おおおおお、お前は……何を言っているんだぞ!? この、◎△$×¥●&%#!!!」
 結局ロレッタは声にならない叫びと共に、ほぼ攻撃といっても差し支えのないツッコミを真都理の頭部にお見舞いしたのだった。
「おぶっ!? な、何するんだぜ!?」
 真都理のカボチャの被り物は、見事な放物線を描いたあと、スキー場を転がりながらホテルの方へと飛んでいく。
「お前、お前が変なことを言うからだぞ!! ロロロレレロ……ロレッタとの愛がどうこうって――」
 顔を真っ赤にして抗議するロレッタ。
 しかし――事態はとんでもない方向へと動いてしまった。
「ま、マズイいんだぜ……巨大雪だるまが、ホテルに向かっていってしまったんだぜ!!」
 巨大雪だるまは、真都理のカボチャの被り物を追いかけてホテルの方へと向かって行ってしまったのだった。

 コロコロとホテルの方に向かって転がっていくカボチャの被り物。
 そして、それを追いかける巨大雪だるま。
 それは当然――
「おいおい、なんだアノ化け物!?」
「さ……さすがにデカすぎよ!」
「とにかく、ホテルを護りましょう!」
 ホテルを護っていた人間たちにとって、攻撃の対象となった。
「撃て撃て!! とにかく、ありったけの火力をぶち込め!」
「火術で溶かすのよ!」
 激しい炎が巨大雪だるまを溶かしていく――が。
「なっ……自己修復だと!?」
「何なの、この吹雪!?」
 ホテルの周辺に激しい吹雪が起こる。
「み、見てください! 額の石が光ってます。おそらく、原因はアノ石でしょう!」
「だったら、あの石を破壊すれば良いんだな!」
 防衛組みにも、魔法石の暴走が元凶だと言うことが徐々に広がり始める。
 しかし――
「ま、待っていただきたいでござる!!」
 巨大雪だるまを追いかけてきたスノーマンが、防衛組みの前に立つ。
「もう少し! もう少しで魔法石の暴走を止める術式が完成するんでござる! だから、魔法石を破壊するのは待っていただきたいでござる!」
 必死に、魔法石の暴走を止めようとするスノーマンだったが――
「だったら……てめぇは、この被害の全責任を取れんのか!?」
 スノーマンに向かって、ジガンがトマホークを振りかぶって襲い掛かる。
「くっ……」
 だがそれを、何とかギリギリで鬼崎朔が攻撃を受け止めた。
「あと一つ、あと一つの最小構成術式さえ修復できれば、魔法石の暴走は止められるのでござる!」
 戦いのさなかでも地道に地道に修復作業を続けて、ようやく完成の一歩手前まで辿りついていた修復チーム。
 しかし、ジガンの言葉を継ぐようにして、夜薙綾香がスノーマンたちに問いかける。
「だがな、被害はもう出始めている。これ以上時間がかかるならば、被害は拡大するだけだぞ? 貴様らに、全ての責任が取れるのか? 時は一刻を争うのだぞ!」
 綾香の言葉に、押し黙る修復チーム。
「これ以上被害が増えて打つ手がないのなら……あんな雪だるまと魔法石は破壊すべきだ!」
 完全に、ホテルの防衛組みも避難している一般客も、雪だるまと魔法石の破壊を求めて団結しはじめた。
 そして、駄目押しとばかりに――
「たしかに……そのとおりです」
「あぁ。元凶を作った俺達が言うのもなんだが……アレは、もう壊すしかねぇ」
 ホテルから出てきたのは、フレデリカと花音たちに支えられたフィリップと、狙撃銃を担いだレオンだった。
「実は雪だるまに埋って意識がある間、何度かアーデルハイト校長に教えていただいた魔法の言葉を唱えてみたのですが……魔法石は通常には戻ってくれませんでした。おそらく、術式が破損したときに魔法の言葉が無効化されたのでしょう」
 沈痛な面持ちで事実を語るフィリップ。
「だから、みんなには本当にすまねぇ。この始末は、俺たち自身がつける。あの魔法石は、破壊する!」
 サッと狙撃銃を構えるレオン。
 するとそこへ――
「だったら、俺がサポートしてやる。一応、ダンドリオン殿は病み上がりだからな」
 ルカルカ・ルーのパートナー、夏侯淵がやって来た。
「いいか、ダンドリオン殿。あの石の周りは強い風が吹き荒れている。だから、風の影響も上手く計算に入れて……って、なんだ? 何をジロジロ見てるんだよ?」
「いや……あんた、男……だよな? なんか、顔立ちが良くて髪も長いし……何より、そのミニスカ魔法少女服から見える生足が――」
「う、うるさい! 俺を見るな馬鹿者! 石を狙え!」
「いや、でも結構可愛い線行ってるし――」
「俺は男だ! 女でも男の娘でもないっ! 嘘じゃない。頼むから前を見てくれ。こっち見るなぁぁぁ! 前を向けぇぇぇ!!」
 必死に男の娘説を否定する淵。
 しかしレオンは一しきり彼をからかうと、急に真面目な面持ちになった。
「いや、まぁ……フィリップも今のやり取りを見て呆れたみたいだな。よかったよかった」
「え?」
「ま。アイツ、さっきまで石壊すことが心配で、今にも泣き出しそうな顔してたからな。緊張を解てやんねぇと、ってね。からかって悪かったな、先輩!」
 この瞬間、淵はレオンが二ィっと悪戯っぽく笑ったのを見て、友人思いの彼に心が温かくなるのを感じた。
「さてと……そんじゃ先輩、サポート頼むぜ。ぶっちゃけ、さっきからフラフラしてて視界も霞むんだわ。でも、これだけは自分でケジメつけてぇからさ。頼んだぜ」
「……あぁ。任せろ!」
 再び、狙撃銃を構えるレオン。
 その銃口は淵のサポートにより、しっかりと巨大雪だるまの額――魔法石を狙っていた。
「……いくぜ」
 レオンの指が引き金にかけられ、僅かに力が加えられる。
 そして――