シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

春一番!

リアクション公開中!

春一番!
春一番! 春一番!

リアクション



恋人たちの戯れ

「ほっほ〜〜お!! それはすばらしい!! 
お、氷雨もパワーもらったの? じゃあ一緒にやりましょうか」

 鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)から、メクリパワーの話を聞いた中国古典 『老子道徳経』(ちゅうごくこてん・ろうしどうとくきょう)こと、通称シャオは、満面の笑みを浮かべた。ゴスロリワンピースの氷雨とは対照的な、チャイナ服に黒のだぼだぼズボンといういでたちの、活発そうな少女だ。

「春風でスカートをめくればいいの? へぇ、面白そう。ボクもやりたいなー。
あ〜、でもさ? 女の人めくるのはやっぱり失礼だよね」

「そのことなら問題なっし! あれを見て!!」

 少し離れた場所で、セルマ・アリス(せるま・ありす)が、無理やり着せられた蒼空学園の女子制服に白のニーソックスといういでたちで、ひどく落ち着かない気持ちでそわそわと空京の街路に突っ立っていた。

「シャオがまた悪い顔してたし ……嫌な予感しかしないな 
 ……とはいえ女の子だし、きつい態度取れないし ……参ったなぁ」

「あれ……セルマ君だよね…? なんでスカート履いてるんだろう?」

「そーりゃあもう、このために着替えさせたに決まってるじゃない」

「なーるほど!」

相変わらずもじもじしているセルマの背後から近寄ると、氷雨はおもむろに抱きついた。

「セ・ル・マ・君!こんにちはー! ねぇねぇ、何でスカート履いてるの?
 あ、もしかしてついに男の娘に目覚めた?」

ぎょっとして振り向いたセルマの目に、輝くような笑みを浮かべた氷雨の顔が映る。

(あああ ……女装させられてるときに氷雨さんに会うとか嫌なタイミング……)

「ひひひ、氷雨さんっ! 男の娘 ……なってない!! そんなのなってないですからっ!!
 この格好は! ……その、シャオに無理やり着せられただけですから!!」

「ふぅ〜〜ん」

「うふふふふふ」

いやな笑みを浮かべ、そこへシャオもやってくる。

「と、いうわけで〜。メクリからもらったこのパワーで、と」

「このタイミングでスカートってことはめくってイイってことだよね!」

「ひ、氷雨さんまで! やめてくださいよ」

あわてて駆け出すセルマだが、すでにパワーは放たれていた。

「ううー ……これの何が楽しいんだよ!!?
 ……着替えさせられた段階で勝敗は決していたのか ……うう」

めくられたスカートを手で押さえつけて、恥ずかしさでしゃがみ込み赤面するセルマに二人の少女は春の日差しのごとき笑みを浮かべて言った。

「あー、いい反応だわ〜! ふー楽しかったね、氷雨〜」

「大丈夫、弄るのは仲良しの証拠だからさ。ねー、シャオ」

 七尾 正光(ななお・まさみつ)は、パートナーで婚約者のアリア・シュクレール(ありあ・しゅくれーる)と、空京の町でデートをしていた。

「あ、ちょっと待っててね」

アリアは女性専用と言わんばかりの雰囲気を持つファンシーショップへと一人で駆け出していった。

「うーん。見えそうで見えないって ……目の毒だよな」

「ふーん。ならめくってみればいいじゃないか」

不意に横から声を掛けられた。小柄な少年がすぐ脇に立っている。

「……!! な、なんだよ」

「俺はメクリ。春風の精霊だ。そら。風を起こすパワーをやるよ」

「……こ、これで、アリアのスカートを?!」

そこへアリスが戻ってきた。

「なにしてるの?」

「い、いやなんでもない、あ、ほらあれ」

「ん?」

正光指差す方向を見たアリア。

(アリア、ごめん!)

意を決し、正光は心で謝罪しつつ思いきりスカートをめくるべく、パワーを送る。スカートがふわりと舞う。

(……白)

「きゃ」

アリアは嬉しそうに正光で抱きいた。

「もう、おにーちゃんったら〜。 ……パンツ見たんだよね?」

「う ……ごめんなさい……」

「「えへへ〜計画通り。実はスカートを捲ってもらうように仕組んだんだよー」

「なん……だと!? 謀ったな、アリアー! ……帰ったら抱き枕の刑な」

「楽しみにしてるよ♪もちろん今以上のことをしてくれるんだよね〜」

「あーあ、つまんねー」

一人つぶやくと、メクリはどさっとベンチに腰を下ろした。そんなメクリに、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が声を掛ける。

「ほぅ? 何やら楽しそうだな。
 その巻き上がる風の力、俺にも貸し与えてはもらえないか?」

同行していたベルトラム・アイゼン(べるとらむ・あいぜん)は、首をかしげた。

「あれー、軽いお色気もダメな男が、スカートめくりしてるやつと接触してるぞ?
 ……これは、絶対裏があるに違いない!」

メクリに近寄ると、

「オレが貰える分のメクリパワーも、エヴァルトに渡してもらうことってできる?」

「いいよ」

「んじゃ頼んだ」

エヴァルトは一人公園の片隅で、ぶつぶつひとりごちながら大量に積もった枯れ葉を舞い上がらせたりし始めた。

「ところで、めくりに行けるNPCにセイニィの名前があるんだけど、あいつ、ホットパンツじゃなかったっけ?」

「ベルトラム、それはちょっとメタ入ってるぞ。……まぁ、セイニィさんも、たまにはスカート穿きたくなる時もあるだろう」

「……んで? そのパワーどうすんだ?」

「決まってるだろう。不届きな輩に制裁を加えるのだ。正義の鉄槌だ!」

「せっかく楽しそうなのになー……」

「な・に・か・言ったか?」

「い、いや、なーんも……」