リアクション
――真実。
結局、アレイシャはイレイシアを助けたいが為に、鏖殺寺院の末端組織に入って、輸送部隊からのイコンの略奪行為をしたとのことだ。
狙いは勿論「単独搭乗システム」搭載のCHP003。しかし、第一輸送隊をではその機体が手に入ることはなかった。そこで、第一輸送隊から奪ったイコンを使い、今回の輸送部隊の襲撃を行ったのだ。
だが、このアレイシャの部隊に雇われていた、六黒たちは自分たちが不利と見るやいなや「では、ごきげんよう」と残して逃げてしまった。捕縛したはずの刹那もいつの間にか逃げていた。
アレイシャは縛られてもなお、九品寺が目の前に現れると彼を噛み殺しそうな勢いでコハクの束縛から逃れようとした。
「Q策!!」
組伏されるアレイシャを九品寺は申し訳ない感じで見下げた。
もう、彼の命を九頭切丸は狙っていないらしく、睡蓮の後ろじっと黙っている。
事実を知った睡蓮も鉄心も九品寺を捕縛しようとはしなかった。いや、する必要もなかった。
「アレイシャ……」
「返せ! 妹を! わたしのイレイシアを!」
「会わせてやる。でも、話を聞いてくれ……」
九品寺はコハクと美羽に頷いて、アレイシャを立たせた。向かうのは「単独搭乗システム」の搭載されたイーグリットのコックピット。
コックピットの中には円柱状の大きな機械が有った。外からは何も見えないが、この中にイレイシアが生きたまま入っている。
カバーが外れ女性の裸体が現れる。液体の中、無数の管と機械に繋がれたイレイシアがそこにいた。
「イレイシア……!」
アレイシャがガラス越しに縋りつく。
「初めに言っておくよ。……もしイレイシアをこの中から出したら、彼女は死ぬ」
「え……?」
アレイシャの表情が固まる。しかし、九品寺はその顔を見ずに続けた。
「彼女はね、事故で心肺機能を失ってしまった。彼女を助ける医療はない。人工心臓だって、体内に埋め込まれるようなものは作られてはいない。わかるかい? 今彼女は、イコンのエネルギーによって生きながらえているんだ。機械に心肺機能を代理してもらってね」
九品寺は初めっからイレイシアを実験の素体として使うつもりはなかった。彼女が事故に合わなければ、このようなことはしなかったはずだ。
しかし彼はイレイシアをなんとしてでも助けたがために、彼女を、自分の研究していた「単独搭載システム」に繋ぎ合わせ、何としてでも生きながらえさせようとした。
その結果、システムであり、イコンの一部である彼女がここにいる。
「それじゃなに? イレイシアはこのままじゃないと生きられないの? イレイシアをここから助けたかった私の行為は」
無論、アレイシャの行為は結果的にイレイシアを死なせる事となったであろう。
結局、アレイシャは八方塞がりだった。イレイシアを助けたいが為にしていた行為が全て最愛の妹を殺すことに繋がっていた。システムから助けようとしたこと、イコンを破壊しようとしたこも。
「君が決めるとイイ……、アレイシャ。イレイシアをここから出すか、それともこのままにしておくか……。俺には彼女を出す事はできない」
真実と、自分に託された選択の意味を知った時、アレイシャは大声で泣いた。彼女は妹をその手で殺すか、システムとして生かし続けるのか選ばないといけない。
トレーラーの中、嗚咽を交えた叫びが反響する。
――、そしてガラスの割れる音が響いた。
その後、護送は滞り無く完了した。
九品寺とアレイシャは美羽たちによってその身柄をシャンバラ刑務所へと引き渡された。二人のその後の処分は判官であるマーゼンが担当し、事件の詳しい全容が明らかとなった。
改良型イコンも各学校へと返却され、そのデータを下により効率のいいイコン製造が行われるようになった。
しかし、「単独搭載システム」については、非人道的故に全てのデータが破棄された。
そのシステムの概要を知る者は多くはいない。
このミッションに関わったもの以外は――。
最初に謝ります。ゴメンナサイ。
時期が時期で、こんな不謹慎極まりない、暗い黒い話でゴメンナサイ。 思考がとっても黒い、黒井威匠で御座います。
シナリオ案を出したときはこうなるとは思いませんでした。普通に護衛して、潜水艦ならぬ、潜砂艦で襲ってくる海賊との対決と成るはずでした。
ディレクターの「ドラマ性追加して」の一言がなければ!
更に言えばもっとひどいことを考えていました。今回のNPCを四肢切断して試験管にぶち込もうかとか考えておりましたが、辞めました。流石に不味いと。
そうやって、ちょっと柔らかくなったのがこれです。如何でしたか? え? 柔らかくない?
今回で3回目のシナリオの担当となりました。今回は多くのプレイヤー様に参加頂き、誠にありがとうございます。(MC,LC全95人ICN41機。すごい時間掛かりました)これが公開された後ほど、私のマスターページにて本シナリオの裏設定を公開したいと思います。
今後もこんな黒いシナリオを書いていきますのでどうぞよろしくお願いします。あ、勿論楽しいのも書きますよ!
それではまた、次のシナリオで会いましょう。