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 一行は、海賊船に乗り、上空からネバー・リリーの園に向かいました。その方が早いからです。
 森をすぎると、確かに見渡す限り、淡い色のユリの花畑が見えてきます。一行は、船を降りて空から花畑へと向かっていきました。そして、散り散りになってティンカー・ベルを探します。
「ふあぁぁぁ! きれいです、きれいです……」
 オルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)が、色とりどりのユリの花に感動して叫びました。
「本当だね」
 アゾートが笑顔でうなずきます。
「オルフェは感動してるんです。ネバーランドに来られるなんて。ピーター・パンにティンカーベル! オルフェ、童話で何度も読んだですよ♪」
「しっ!」
 アゾートが言いました。
「どうしました?」
 オルフェが首をかしげると、アゾートがそっと指をさします。前方のユリの花の中に、何かがキラキラ光っているのが見えます。
 そーっと近づいてみると、ティンカー・ベルが蜜を飲んでいるところでした。
「ティンカー・ベル」
 オルフェの瞳が輝きます。そして、オルフェは色紙&ペンを用意するとティンカー・ベルに駆け寄っていきました。
「ティンクさん!」
「きゃ!」
 ティンカー・ベルが驚いて振り返りました。そして、オルフェに気がつくと、慌てて逃げようとします。
「待って、逃げないで下さい! 何も意地悪しませんから」
 しかし、ティンクは知らん顔して行ってしまいます。オルフェは後を追いかけながら言いました。
「あの、ティンクさん! オルフェはずっと小さい頃から童話とか小説とかとにかく本が大好きで! だから今童話の世界にいるのが凄く嬉しいのですよ! だ、だから童話の世界の住人さんからサインもらえないかなって、思っていたのですよ!」
「何言ってるのか分からないわ」
 ティンクは振り返って言います。
「童話とかサインとか、一体なんなの?」
 すると、アゾートが言いました。
「向こうの世界では、キミや、ピーター・パンの活躍している『お話』があるんだ」
「『お話』って、昔、ウェンディがみんなに聞かせていたあれの事かしら? シンデレラや、白雪姫とかいう……」
「そう。それ! 子供たちはみんな、その本が大好きなんだよ。特にティンクカー・ベルはかわいいから、人気者で……」
「あたしがかわいいから人気者ですって?」
 その言葉に、ティンクは振り返りました。
「本当に?」
「うん。一番の人気者だよ。だから、この子は……ついでにボクも……大好きなキミのサインが欲しいって思ってるんだよ」
「サインってなーに?」
 すると、オルフェは言いました。
「この色紙に名前を書いてくれればいいんです。駄目でしょうか?(首かしげ)」
「いいわよ。それくらいなら……」
 ティンカー・ベルは、ペンを受け取ると、色紙に花のような文字で名前を書きました。
「ありがとうです! ついでに握手してもらいませんか? あ、握手っていうのは、手と手を握る事です」
「いいわよ、それくらいなら」
 ティンカー・ベルは、手を差し出しました。そして、オルフェと握手します。
「ねえ、ティンクさん」
 アゾートが言います。
「ピーターの居場所を教えてよ」
「また、その話?」
 ティンクがうんざりしたように言います。
「それは、ダメだっていってるでしょ? あなた達にピーターの居場所を教えたら、ピーターをひどい目にあわせる気でしょ? ピーターを裏切るような事はできないわ」
「違うよ! ここにいる、オルフェさんと同じで、ここに来たみんなも本当はキミやピーターが大好きなんだよ。だから、本当は争いたくないんだ。でも、同じぐらいここに来た子供たちの事を大好きな人もいるんだよキミだって、ピーターがさらわれたら悲しいだろ?」
「そりゃ……そうだけど」
「だったら、子供たちがいなくなって悲しんでる人の気持ちも分かってあげてよ」
「……分かったわよ! ピーターの居場所を教えてあげるわ」
「うわあ! ありがとうです! ティンクさんならきっとそう言ってくれると思ってたです!」
 オルフェは飛び上がって喜びました。
「だって、童話の中でもティンクさんは意地悪に見えても、本当はとってもいい子にだったですもの!」
「バカ……」
 ティンクは赤くなってうつむきました。

 それから、一行はティンクに案内されて島の北の岸壁に出ました。岸壁の下では、大きな渦が巻いているのが見えます。
「こんなところにピーターの隠れ家が?」
 ウェンディは首をかしげます。
「そうよ!」
 ティンクはうなずきました。
「ピーターの隠れ家は、あの渦の下にあるの。さあ、ウェンディ、早く飛び込んで」

「騙されちゃダメだぜ!」
 甲板長のスミーが言いました。
「俺は、よく知ってる。あの渦の下はサメの住処だ。俺のじいさんは、あの渦の下でサメに食われて死んだんだ」
 その言葉に、フックが怒りだしました。
「また、騙しやがったなこのチビ」
 すると、ティンクはケタケタ笑って「その通りよ」と答えました。
「何度騙されれば気が済むの?」
 ティンクはそう言って笑い続けます。けれど、ふとオルフェを目が合い、とても気まずそうな顔をしました。
「なによ」
 ティンクは、オルフェに向かって言いました。
「本当は良い子でなくて、がっかりしたんでしょう? 私、また、嘘ついたのよ」
 すると、オルフェは答えました。
「そうなのですか〜♪」
 あまり、ダメージを受けていないようです。
「でも、次こそピーターさんのところに連れて行って下さいね。オルフェは、ピーターさんのサインももらいのです」
「ああ! もう!」
 ティンク叫びました。
「どうして怒らないのよ!」
「だって、オルフェ、ここにいるだけでわくわくするのですよ♪ 大好きなティンクさんと一緒にいるだけで嬉しいのです」
「……分かったわよ! 私の負けよ! 連れてってあげるわよ。ピーターの本当の隠れ家に」
「本当ですか?」
 オルフェが目を輝かせます。
「本当よ。そのかわりお願いがあるの」
「なんですか?」
「お友達になってくれる?」