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【新米少尉奮闘記】甦れ、飛空艇

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【新米少尉奮闘記】甦れ、飛空艇

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 風が、荒野を渡っていく。
 ヒラニプラの街、と言うには些か外れすぎているが、大荒野と呼ぶにはまだ人の街の気配を漂わせている、そんなギリギリのところに立つ一件の酒場。その前に、作業服姿の叶 白竜(よう・ぱいろん)が降り立った。
「あんま無茶すんなよ」
 白竜のパートナーである世 羅儀(せい・らぎ)がバイクに跨ったまま声を掛ける。
「分かっている」
 世の言葉に叶は、頭に被ったターバンを少し前にずらすようにして、酒場のドアをくぐる。
 ぎぃ、と軋んだ音がして、店の中に居た人々が一斉に視線を叶へ向けた。叶は俯いたまま軽く会釈をしてみせる。すると店の人々は新しい客に対する興味を失ったのか、各々の会話へ、酒へと意識を戻す。
 酒場は昼間だというのに静かな喧噪に満ちていて、そこここで数人の男達が酒を片手に無駄話で盛り上がっている。
 その中には、装飾過多の革ジャケットを着ている者も目立つ。パラ実生を名乗る蛮族たちだろう。
 叶はそんな男達に目を付けて、そのテーブルに近づく。男達は突然近づいてきた見慣れない男に警戒を見せる。
 が。
「飲み代くらいにはなるか?」
 ことり、と小さな音を立ててテーブルに置かれたルビーを見た瞬間、男達は顔を見合わせると白竜に椅子を勧めた。
「兄ちゃん、見ねぇ顔だなァ?」
 酷いダミ声の男の問いは適当に笑ってはぐらかす。どうせ此処に集まっているのは、脛に傷のひとつふたつは持っている連中ばかりだ。経歴を聞かれたくない、というのは良くある話なのだろう、男もそれ以上追求してこなかった。
「で、何が聞きたいんだ?」
「何か、景気の良い話は無いか?」

 纏まった金が要る、と問いかければ、男達はニヤニヤと笑って、いい話があるぜ、と簡単に話し始めた。
「近々、軍の輸送団がこの辺りを通るらしい。人手が欲しいって言ってたな」
 具体的に何をする、とは言わなかったが、襲撃計画があることは見え見えだ。
「美味そうな話だ。わた……いや、俺以外にも狙う奴はいるだろうな」
「ああ、そういやついさっき、見慣れない奴が顔を出してたな」
「おう、例の大将ンとこに行くらしいな」
「そうか……ありがとう、俺も行ってみるとしよう」
 そう言うと叶は軽く頭を下げてから立ち上がり、酒場のドアを開けた。

「……普段の白竜とはそうとう違うねえ。本来はああいう奴なんじゃないかなあ」
 酒場から出てきた叶を遠くから見守っていた世が、口の端を愉快そうに持ち上げて呟く。
 が、叶と目が合ったので慌ててバイクのセルを回した。
「どうだった?」
「……やはり、穏便な輸送とは行かなそうです」
 世の元まで戻ってきた叶は、溜息を吐きながら軍用バイクのサイドカーへと乗り込む。そして、銃型ハンドヘルド・コンピュータを開くと、情報を入力し始めた。