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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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第2章 簡単に事が進むのもつまらないだろう?・・・気紛れなメガネの女 story1

「まさかの寄り道とかー・・・。あいつらが先についちゃわないか?」
 すぐにでも研究の続きをしたいゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)は、はぁ〜とため息をついてぼやく。
「いや、大佐が封神台の前で時間稼ぎをしてくれているからな」
 王天君たちと合流後、彼女は数人の魔女たちと封神台に入らず、生徒たちを待ち構えている。
「お姉ちゃん、お待たせ。やっぱり刀より、短刀のほうが使いやすいの・・・」
 悪人商会の簡易アジトに立ち寄った斎藤 ハツネ(さいとう・はつね)たちは準備を終えた。
「んじゃ行くぜ!」
「うん・・・もうすぐ、あの人たちが来ちゃうかもしれないの」
 懐に短刀をしまい、ブラックコートを羽織ったハツネは光学迷彩で姿を隠す。
 その頃、封神台にいる毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)は王天君からウィザードとコンジュラーの魔女を数人借り、焔のフラワシとファイアストームで森を放火している。
「やれやれ、風というものは気紛れなものだな。そよ風かと思ったら、突風が吹き荒れたり・・・」
「パラミタ内海が近いから仕方ないんじゃない?」
「まぁ、朝方じゃないしー。陸風だとこっちに火が来ちゃうからねー」
「ふむ・・・燃え広がるのは仕方ないということか」
 風に煽られて紅の炎が木々を焼いてる様子を魔女と眺める。
「―・・・むっ、森の方から冷たい風が流れてきたぞ?」
 夏場だというのに妙だな・・・と大佐はイルミンスールの森を睨む。
「な、何だ・・・突然吹雪が!?」
 視界を奪われ吹き飛ばされそうになるが、彼女たちは必死に踏み止まる。
「おや、あなたたちだけですか?」
「火が全て消されただと?―・・・お前は・・・・・・」
 ブリザードの吹雪が止み、ゆっくりと目をあけるとそこには氷雪比翼で空を舞う男が、こちらを冷たい眼差しで見下ろしている。
「はぁー・・・森に火をつけて足止めしようとでも思ったんですか?」
「炎の中で大人しくスモークにでもされてしまえばいいものを。わざわざもっと苦しみにやってくるとはな」
「まぁ、十天君たちはすでに中にいるかもしれませんし。そこを通してもらいますよ」
 緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は歯牙にも掛けない様子で通ろうとする。
「そう簡単に通すと思うのか?お前はここで焼かれて果ててしまえ」
「遊んであげる暇なんてないんですが・・・。凍らせて氷像にしますよ?」
「フンッ、勝手にほざていろ」
 大佐は口元をニヤリと笑わせると、コンジューラの魔女とミラージュの幻影を囮に迫る。
「(メンタルアサルトでもしかける気でしょうか?術者を吹き飛ばしてしまえば、何の意味もありませんけどね)」
「ちっ、役に立たなかったか」
 幻影では囮にしかならず、地面に転がされた大佐は悪疫のフラワシを降霊する。
「先を急ぐんで、失礼しますよ」
「―・・・あぁ、行けるものならな」
 ソリッド・フレイムの黒い炎で遙遠を囲み、いつ彼の表情が崩れるか眺める。
「その程度では、火遊びにもなりませんね。ヨウエンが知っている焔は、全て灰にしてしまいそうな焔でしたよ?」
「ほう・・・焼かれてみればわかるんじゃないか?」
「えぇそうですね。それくらいの痛みは平気でしょうから」
「だったら飛び込んでみろ。封神台はその向こうだぞ」
「―・・・え、いいの?行かせちゃっても」
「あぁ、構わない」
 黒い炎の中へ飛び込もうとする彼の姿に彼女は、私の勝ちだ・・・とほくそ笑む。
「やすっぽい子供騙しですね、やっぱり」
「なっ、私の炎が!?」
 ブリザードの吹雪にあっさり消されてしまい、がっくりと膝をつく。
「あなたが、ただの炎で足止めするなんて思えませんからね」
 少しも表情を崩さない彼は八卦型の台へ降りると、封神台の中へ転送される。
「―・・・その程度で勝ったと思うな」
 十天君の企みでそのすかし顔も崩れるだろうと吐き捨てるように言う。
「妖精を目の前で殺されたらどうなることやら・・・」
 ハツネたちと悪人商会のアジトへ王天君たちが立ち寄る前に聞いたのだが・・・。
 仲間を殺された恨みもあるが、アウラネルクを彼らの目の前で血祭りにし、戦意を失わせて2度と邪魔をさせないためのようだ。
 邪魔をするなら、お前たちの大切な者を1つずつ奪っていく、という警告なのだろう。
「魔女の方はもう2人もいらないみたいだからな。ドッペルゲンガーの方か、どっちかを残せばいいという考えか?」
 そして魔女を狙っていたのは自分たちの実験場が欲しいために、精神的に追い詰めて悪夢を見る様にしていた。
 しかし不老不死の実験がしたことで、それも不要になったのか、殺そうとしている。
「たまには悪が勝つのもいいだろう。フッ・・・ここで足止めしてやって、戦力を削いでやろう」
 ワイルドペガサスに乗った者たちが見え、クスリと黒く笑みを浮かべて見上げた。



「封神台が見えてきましたよ、陣さん!」
「今のうちにリュースさんに連絡しとくか」
 金光聖母が大量のゴーストを向かわせたことを、リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)に伝えようと連絡する。
「粗方ゴーストは倒しましたが、まだくるんでしょうか。あのおばさんたちは、かなりしつこそうですし・・・。おや・・・陣さんから電話がきましたね」
「もしもーし、リュースさん?これから封神台の中にいくんやけど、そっちは大丈夫なんか?」
「えぇ、今のことはですね」
「十天君がそっちにゴーストを向かわせたみたいや。しかも大量にな・・・。あいつら、オメガさんを殺そうとしているようや」
「はぁ〜、まったく懲りないおばさんたちですね」
「後、明らかに妙なやつは入れんようにしてくれな」
「あまり疑ってかかるのもよくありませんが・・・。状況が状況ですし、仕方ないですね。とりあえず、こっちは任せてください」
 散々くだらない玩具をぶっ壊されても、いらないプレゼントをまた贈りつけてくるのかと嘆息する。
「まだ帰れそうにないから・・・もう少しだけよろしく」
 それだけ言うと陣は、ぽちっと通話を切る。
「周りに誰かいるみたいだな」
「あいつはあっち側のやつや!」
 月崎 羽純(つきざき・はすみ)の視線の先を見ると、大佐と魔女たちが封神台の前で立ちはだかっている。
「退けやーーーーっ!」
「そう言われてどうぞとか言うやついるのか?ドアホめ」
 ゴォオオゥウッ。
 ソリッド・フレイムの黒い炎で、箒に乗っている陣を墜落させようとする。
「また邪魔する気か?燃えカスにしてやんぞっ!?」
「―・・・くっ」
 フォースフィールドのバリアーでも耐え切れず、飛び退き青紫色の焔を避ける。
「(私の攻撃が火だけだと思っているのか?甘いな・・・)」
 ギィイインッ。
 遠野 歌菜(とおの・かな)の槍に阻まれ、鈍い金属音を響かせる。
「戦う相手が欲しければ、私たちが相手になります!」
「だからといって、あいつを逃がすと思うか?」
 女でも容赦するつもりもなく、カイサカの切っ先で歌菜の手を狙う。
「どうしても退かないなら、傷の1つや2つ・・・覚悟してくださいっ」
 ふぅ・・・と息をつくと歌菜は、傷つけたくない・・・なんて甘い気持ちを捨て去り、くるくると螺旋を描くように突き出す。
 ヒュヒュッ、シュッ。
「どうして反撃しないんですか?」
「私も随分となめられたもんだな・・・」
 歴戦の武術しか技を使わない彼女の様子に苛立つ。
「私たちは皆を封神台の中へ行かせてあげたいだけですし。アウラネルクさんを連れ出してきてくれるまで、なるべくSPを温存しておきたいですからね」
「それまで持てばいいがな」
 大佐はバーストダッシュで歌菜の懐に飛び込み、ニヤリと黒い笑顔を向ける。
「この距離で槍を振るえるか?」
「―・・・・・・っ!」
「あらら、もうあの子お終いね。それに、その人数で私たちから逃げられると思ってるの?」
 歌菜と大佐の戦況を見て魔女は、勝ち誇ったように言う。
「数でいうなら、そっちと同じくらいだけど?」
 術を放つために間合いを取る魔女に、カティヤ・セラート(かてぃや・せらーと)はワイルドペガサスから飛び降り、絶望の剣を鞘に納めたままロッドを叩き落す。
「こいつ・・・私を斬る気!?」
「フフッ、どうしようかしらね?」
 焦るウィザードに不適な笑みを向け、鍔を指でくいっと持ち上げる。
 ドフゥッ。
「あ・・・がっ」
 腹を殴られた魔女が草の上へ倒れ込み、咳き込みながら苦しげに身を捩る。
「剣じゃなくっても、私は素手でもそれなりにいけるのよ♪」
「うわ、酷っ。何がそれなりなんだか・・・」
「えー?私がガンガンいこうなんてパワープレイできると思ってるの?」
「そうじゃなかったのか?」
 どの口で言ってんだと羽純は彼女を軽く睨む。
「陣たちを封神台へ行かせてあげなきゃいけないんだし。多少痛めに遭わせるのも仕方ないわよ?」
「そりゃそうだけどさ・・・。まぁ、俺も甘いこと言っている場合じゃないし」

 グォオオオァアアッ。
 羽純の龍の咆哮で、術を放とうとしていたウィザードたちは耳を塞ぎ膝をつく。
「くうっ、うるさぁああいーっ!!」
「うざ、うざいわぁあっ」
「フッ・・・そんなもので私は止められないぞ?」
「歌菜ーっ!?」
「フハハハ、沈めっ」
 ズバッ。
 猛毒の刃で裂かれ、パタタ・・・と零れ落ちた血が草を濡らす。
「―・・・くぁっ」
「真さん・・・!!」
「大丈夫かい・・・歌菜さん」
 歌菜を庇った真が片腕を斬られてしまった。
「私のことよりも真さんが!」
「あはは・・・・・・これくらい平気だよ」
「平気なわけないじゃないの。これを使って」
「ありがとう、カティヤさん」
 真は傷口の毒を口で吸出し、借りた天使の救急箱を使い博識の知識で応急処置をする。
「たが、その程度で毒は取り除ききれないぞ?」
「それでも動けないわけじゃないからね」
「フフフ・・・身体の自由を奪われたら、どんな恐怖を感じるのだろうな。―・・・あいつらを燃やせ!」
 彼女はソリッド・フレイムに命令し、どす黒い炎の餌食にしてやろうとする。
「悪いがいくら女が相手だからといっても、手加減してやらないからな!」
 大佐に気合の一撃・・・。
 パシィイッ。
「うぐ・・・」
 と、見せかけて行動予測していた左之助は、得物を持つ大佐の手から逃れ、片腕で相手の手首を押すようにガードする。
「ただの力技だと思ったか?」
 もう片方の手で彼女の腕を掴み、ギリギリと握り締める。
「このままでは私の不利だな・・・。降参しよう・・・と言うと思うか?」

「こんな状況で何が出来るっていうんだ?」
「ソリッド・フレイム、こいつの身体を蝕んでやれ!」
「なっ!?」
 火の粉を被ってしまった左之助は突然、倦怠感に襲われドッと地面に膝をついた。
「悪疫のフラワシか・・・」
「治療なんてしてやらないぞ?私に情けや容赦を期待するな」
 降霊したもう1体のフラワシの影響で、黒く染められたソリッド・フレイムの、炎の火の粉に病原体が含まれいてるのだ。
「ちくしょうっ、汚い手ばかり使いやがって」
「フンッ、戦いにキレイも汚いもあるものか」
「あんたたちも、ここで散りなさい」
「ざけんな、退かないならどうなるかわかってんのか!?」
「あんた1人の焔で、どれだけ耐えられるかしら?」
 戦いを楽しむかのようにウイザードたちはブリザードで妨害する。
「くそっ、あの中にアウラさんがいるっていうのに」
「陣くん・・・早くしなきゃ、アウラさんが!」
 リーズは彼の服を掴み、吹き飛ばされないよう必死に支える。
「わかってっつーの!」
「―・・・陣さんっ!」
「行かせないわよ?あんたたちの相手はこの私たちなんだから」
 彼を助けようする歌菜の行く手を阻み、魔女たちは必死な形相をする者に倒してクスクスと嘲笑った。