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友達が欲しいメデューサ

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友達が欲しいメデューサ

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「――というわけでメデューサの目を見て石化しちゃったわけ」
「なるほど、それで武尊さん」
「「なんだ? (なにかの?)」」
 マビノギオンが呼ぶと二人が同時に返事をした。どちらも武尊だった事に気付き、なんて呼ぼうかマビノギオンは一瞬戸惑った。
「えっと……スプラッタ殺人鬼さん」
 迷った挙句、そんな風に呼ぶマビノギオンだった。
「オレの方か? てかスプラッタ殺人鬼って……まぁ、その通りではあるけどよ……」
 ちょっとへこむスプラッタ殺人鬼の方の武尊だった。
「はい。どうしてその様な格好を?」
「あぁ。その事か元々は先に来ているであろう百合園生を驚かせるためのものだったんだよ。でも驚かせたのがメデューサでな……」
「ミルディアを襲っていたわけではないのね?」
「ふぇぇぇぇぇん!!」
「可愛いですー。すりすり♪」
 未だに泣いているミルディアと抱きついてすりすりしているヴァーナーをちらりと見ながら言うブリジット。
「そんな事しないぞ! というより目の前で石化していたことにオレ自身びっくりしてんだよ!」
「あぁ、ミルディアが勝手にびっくりして目の前で固まってただけよ」
 弁明してくれるイシュタンにほっと安堵した武尊だった。
「まぁ、何事もなくてなによりですわね」
「そうですね……あら?
「どうなさいました舞様?」
「向こう側に何かが……」
 舞の言葉に全員がそちらを注目する。
「だれか……いるの……?」
 どうやらミルディアの泣き声を聞いてメデューサのほうから姿を現したようだった。全員がさっと角に隠れる。
「あれが噂のメデューサさんです?」
 ミルディアをハグしながら様子を伺うヴァーナー
「みたいね。殺気は……ないみたいね」
 いつの間にか『殺気看破』で気配を探っていた郁乃。
「よし、行くよマビノギオン」
「了解です」
 そして、郁乃とマビノギオンがすぐさま行動を開始する。
「郁乃殿、どうするつもりかの?」
「捕まえるだけよ。これ以上被害増やすわけにもいかないしね。殺気がないとしても何があるか分からないから……と」
 『隠形の術』で気配を消して接近していく郁乃。
「(綾瀬、聞こえる?)」
 みんなで様子を見守る中、魔鎧の状態の漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が綾瀬へと呼びかける。
「(ドレス? どうかしたのかしら?)」
「(あのメデューサ、どことなく私と似ている気がする……。長い間……ずっと独りで居て、自分の存在理由とかそう言った物がどうでも良くなり、誰かと触れ合いたくなってる……)」
「(なるほど……)」
「(綾瀬、あのメデューサの事をどうにかしてあげられないかしら?)」
「(もちろん、そのつもりですわ)」
 ドレスの願いに綾瀬はふっと微笑んだ。
「もう少し……」
 その間に着実に近づいていた郁乃。殺気はないとは言え相手はモンスター。抵抗された場合対抗できるように手には刃。
「石化には気をつけないと……」
 後数歩。そこから間合いを一気に詰めようとした郁乃だったが、歩みを進めたとき、足元にあった小石を蹴り飛ばしてしまう。
「しまっ……!」
「ひっ!」
 驚かされたメデューサはそこで郁乃の存在に気付いた。郁乃も顔だけは合わせないようにサッと視線を下にそらす。
「え……」
 普通なら話かけようとするメデューサだったが、武尊に思いっきり驚かされた後。そしていきなり姿を現した郁乃。それが仇となった。
「おばけいやあぁぁぁぁぁ!!」
 怖がったメデューサの手から魔法が放たれた。
「っ!!」
 それをすんでのところで回避する郁乃。その間にメデューサは逃走を始める。
「魔法を使ってくるなんて……! 攻撃してくるならこちらも……!」
「大丈夫ですか!?」
 後方にいたマビノギオンが慌てて駆け寄ってくる。
「平気よ! それよりも追わないと!」
「(綾瀬! 止めて! このまま追いかけてしまっては逆に人に恨みを持たれかねない!)」
 追いかけようとする郁乃達を見てドレスが綾瀬に訴えかける。
「皆さん待ってください!」
 綾瀬の言葉に全員が静止する。その間にメデューサは完全に姿をくらました。
「綾瀬殿?」
「どうかしたです?」
「メデューサの方は怖がっていましたわ。一度皆さん落ち着きましょう。これじゃあ話し合いどころか戦いになってしまいます」
「確かにそうですね……」
「ごめん……私のせいね……」
「いや、郁乃殿せいではなかろう。元気を出されよ」
 俯く郁乃を慰める武尊。
「そういえばメデューサさんおばけと言ってましたですよ」
「郁乃さんをおばけと見間違えた? なんででしょう?」
「私達の前に何か見たんじゃないかしら」
「怖い何か……そういえば、武尊殿。メデューサを驚かせたと言っておったの?」
 武尊の言葉を聞いて全員が何か閃いたように殺人鬼格好の武尊を見る。
「もしかして……オレのせいか?」
「納得はいくかと……」
「その格好でいきなり現れたら怖いよ……」
 思い出したのか再び泣きそうになるミルディア。
「大丈夫です。ボクがついてますよ♪」
 再びハグするヴァーナー。
「……すまねぇ」
 しょんぼりする武尊に首を横に振る綾瀬。
「いえ、誰のせいでもありませんわ。タイミングが悪かっただけです。少し時間を置いてから追いかけましょう。そうすればメデューサのほうも落ち着くでしょう」
 綾瀬の言葉に全員が頷いたのだった。