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夏合宿でイメチェン

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夏合宿でイメチェン

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 男装も良いが、シャーロットは本当の意味でのイメージチェンジをしたいと考えていた。
 煌々と燃える炎を眺めながら、ナナへ相談を持ちかけてみる。
「ナナさん、私に似合う髪型って何でしょうか? ツインテールも良いのですが、イメージチェンジしてみたくって」
「髪型、ですか?」
 と、彼女をじっと見つめるナナ。
「今日の髪型も十分お似合いですが……下ろしてみるのはいかがでしょう?」
「ストレート、ですか?」
「はい。あ、でもイメージチェンジですし、肩くらいまで切ってみても良いかもしれませんね……」
 と、想像を巡らせるナナ。
 シャーロットは自らの髪に触れてみた。周りの人たちは驚くだろうけれど、そうして新しい自分を見せるのも面白いだろう。まだ決められそうにはないが、いつかその内……。

 その浴衣は白地に朝顔の柄がついていた。爽やかな中にも可愛らしさがあり、上でまとめた髪には艶やかな漆塗りのべっ甲櫛が入って大和撫子な色気を醸し出している。
「……どう?」
 と、少し恥ずかしがりながらパートナーへ問いかけるヤチェル。
 叶月は反応に困っていた。彼女の和服姿を見るのはこれが初めてであり、普段より大人っぽく見えて思わずドキドキしてしまう。
「ぃ、いーんじゃねぇの」
 と、視線を逸らす叶月。彼は濃紺に細縞の入った浴衣に伊達眼鏡をかけていた。いつもと違って、クールでカッコいい和装青年風だ。
 ヤチェルは彼の適当な返答に少し不満げだった。素直に似合うと言ってくれればいいのに、と心の中で文句を言う。
 ちょっと気まずい空気になったのを察知し、里也が口を開く。
「今夜はキャンプファイヤーですぞ。二人とも、行ってきたらどうですかな?」
「え、でも……」
 と、室内を見渡したヤチェルに翔が言う。
「部屋の片付けでしたらお任せ下さい。今日はお二人とも、お疲れでしょう? どうぞ、ゆっくりしてきてください」
 にこっと笑う翔を見て、ヤチェルは頷いた。
「分かったわ、ありがとう」
 そして叶月へ向き直り、その腕を引っ張る。
「行きましょう、カナ君」
「え、おい!」
 悲鳴にも似た声を上げながら、無理矢理外へ連れ出されていく叶月。
 二人の背中を見送って、里也と朔が満足げに頷き合う。彼女たちと同じ気持ちのエルザルドもまた、やれやれといった様子だ。
 同好会の手伝いをしてくれていた天音とブルーズに、翔が会長に代わって礼を言う。
「今日はありがとうございました」
 天音はにこっと微笑んで、横目にブルーズを見た。
「ううん、こっちこそ楽しかったよ。それより、片付けが終わったら僕たちも行こうか? キャンプファイヤー」
「ああ、そうだな。あの二人も、会長たちが気になる様子だしな」
 と、ブルーズは、カメラを準備している里也たちに視線を向けた。

 本日、二度目のバーベキューを楽しむセイニィは、プラチナムを思うように負かせることが出来なくて悔しがっていた。
「セイニィ、もう昼間のことなんか忘れましょうよ」
 と、隣に座ったシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)が宥めようと声をかける。
「忘れられるわけないじゃない、本当にあいつだけは許せないのよっ」
 と、離れたところでティセラやシリウスたちと談笑しているプラチナムを睨むセイニィ。
 シャーロットは苦笑しながらも、夜空が一層闇を濃くしていくのを眺めた。星たちもキラキラと輝きを増している……。
「ねぇ、セイニィ。少し周辺を歩きませんか? 気分転換に星空を眺めましょう」
 と、シャーロットは立ち上がった。

 グリムゲーテと戌子に挟まれた大助は左右から繰り出されるアプローチに困惑しつつ、焼きたての肉へかぶりついた。すかさずグリムゲーテと戌子が野菜を差し出し、大助がげんなりする。
 スカートに慣れてきたのか、レトとお揃いの服を着たアイリは両脚をきちんと閉じて座っていた。しかし食べる姿は女の子らしくなく、レトに注意されてしまう。
 アコースティックギターをつま弾いて、詩穂は一同へ聞こえるように言った。
「空京大学のアイドルにして秋葉原四十八星華のリーダー、騎沙良詩穂の生歌を披露しちゃいまーす!」
 拍手がわっと沸き起こり、詩穂がぽろぽろと弾き語りを始める……。
 その様子を見つめながら黙々と食事を進めるさゆみとアデリーヌ。夏の夜を彩る歌声は、聞く者に訴える何かを持っていた。
 同じように聞き惚れる勇刃と咲夜、セレアにカルミ。そばにいる想い人の隣を確保した咲夜とセレアは、いつもと雰囲気の違う彼の姿に改めてくすぐったくなり、微笑んだ。

「カナ君、今日はありがとう」
 賑やかな方へ向かいながら、ヤチェルは叶月へ伝えた。
「……別に」
 相変わらず素っ気ない態度の彼に、呆れて溜め息をつきたくなる。しかし、今日は本当に楽しい日だった。同好会を訪れた全員が笑ってくれ、満足してくれた様子だった。それは同時に、自分自身の良い経験となったように思う。
「それに、カナ君も楽しんでたみたいで何よりだわ」
「……」
「実は他人の髪の毛いじるの、好きでしょ?」
「は? ……いや、別にそんなことねぇよ」
 と、叶月は伊達眼鏡を押さえる振りして顔を隠そうとする。薄闇の中では隠す必要など無かったが、そうせずにはいられないのが彼だった。
 構わずにヤチェルは言った。
「カナ君って、やっぱり手先が器用よね。あたしもどちらかというと器用だけど、そっちのが全然上手いと思うわ」
「……まぁな」
 と、そこは否定しない叶月。機械いじりなどの細かい作業なども嫌いではなかった――否、そうした作業は彼の密かな趣味であることを、パートナーには知られていた。
 遠かった詩穂の歌声が近くに聞こえてきて、ヤチェルは一歩先へ進むと彼を振り返った。
「その浴衣、すっごくお似合いよ」
 にこっと笑ってぱたぱたと先へ行ってしまうヤチェル。
 叶月は呆然とその場に立ち尽くすと、少し呆れた風に口元を緩ませた。

 星明かりの下、せせらぎのする方へ歩いて行くシャーロットとセイニィ。
 ふと、セイニィは今朝のことを思い出して足を止めた。
「どうかしましたか?」
 と、振り返ったシャーロットの耳に、セイニィを待つ男の声がする。
「セイニィ!」
 牙竜だ。
 こちらへ駆け寄ってきては、セイニィの隣にいるシャーロットを見やる。せっかくの二人きりを邪魔されて微妙なシャーロットだが、それは牙竜も同じ気持ちだった。
 気まずい雰囲気になりかけると、セイニィが誤魔化すように口を開いた。
「ねぇ、三人で散策しましょうよ」
「はい、そうですね」
「ああ、そうだな」
 再び歩き出したセイニィの左右に二人が並び、遠くの星空を眺めながら川辺を行く。
 すると、三人の前をひとつの淡い光が通り過ぎていった。
「蛍だ」
 と、嬉しそうに声を上げる牙竜。それこそ、彼が彼女に見せたいと言ったものだった。
 それをきっかけにして、無数の蛍たちが周囲を取り囲む。
「へぇ、綺麗……」
 そう言って光に見惚れるセイニィを眺めて、シャーロットが言う。
「ええ、とてもロマンチックですね」
 そして顔を上げ、夜空に目を凝らすシャーロット。今の季節なら流星群が見られるはずなのだが――。
「セイニィ、あそこ!」
 と、牙竜が指さす先で星たちが流れていく。
「流星群です、セイニィ!」
 蛍の光に囲まれた中、木々の間から覗く流星群に心奪われるセイニィ。夏の夜風を身体で感じ、耳にはせせらぎの音。――今日は朝から夜まで、本当に遊び尽くした一日だった。
 セイニィは不思議と開放的な気分になって、呟いた。
「――たまにはいいわよね、こういう日があったって」

担当マスターより

▼担当マスター

瀬海緒つなぐ

▼マスターコメント

セミナーハウスでの合宿、お疲れ様でした。

ショートカットにしてと頼まれる方が何名もいらしてくださり、とてもありがたかったです。
久しぶりに同好会らしい活動が出来たように思います。
そして忘れてはいけないのが、キャンプファイヤーとバーベキュー! とてもおいしかったです、ありがとうございました。

それでは、またの機会にお会いしましょう。ありがとうございました!