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葦原明倫館の食堂・秋の新めにゅ~開発企画☆

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第8章  御掃除談笑


「いままでお世話になったから、せめてものお礼に工房を綺麗にしたいな」

 今日の水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)の表情は、いつもと違っていた。
 真剣だが、焦ったり切羽詰まったりはしておらず、リラックスしているのだ。

「もう明倫館の生徒じゃないから、工房を使わせてもらえるかはハイナさんに訊いてみないとわからないけど。
 とりあえず、この節目に、いままで学ばせてもらったお礼をしたいの」

 お返しをどうするか、実はとっても悩んでいた緋雨。
 工房の宣伝や設備投資など、ほかにもいろいろと考えたのだが。
 最終的には、一番気持ちが伝わるのではないかと、掃除を選んだのである。

「ふむ、物や場所を大事にするのはよいことじゃ。
 そのような感謝の気持ちを忘れずになにかを成すということは、 必ず自分の糧となる。
 いつか、緋雨の役に立つときがくるじゃろう」

 そんな緋雨の想いに、天津 麻羅(あまつ・まら)も納得の表情。
 緋雨のことを一心に考えてきた、麻羅だからこその言葉だ。

「そういう想いは物や場所に宿りやすいのじゃ」
「へぇ〜」
「いわゆる九十九神じゃな」
「神様、か」
「ということで、緋雨は一人で掃除をがんばるのじゃぞ」
「え?
 麻羅、手伝ってくれないの?」
「うん?
 わしか?
 わしはだって神じゃもん」
「いや、それって……」
「それに工房を使っておったのは緋雨じゃしな!」
「あ、それは確かに……」
「まぁ感謝や誠意を表すのに人を頼ってはいかんぞえ」
「うん、そだね」
「のんびり眺めておいてやるから、さっさとがんばらんか」
「はぁい、ありがとう」

 とりあえず、窓くらいは開けてやって。
 窯の上に座り、麻羅は文字どおり高みの見物だ。
 笑って、緋雨は掃除にとりかかった。
 そしてしばらく。

「……ふあ〜ん、ただの掃除を見てもつまらんのう。
 暇つぶしに外でもぶらつくかのう」

 すたっ……と、窯の上から降り立つ麻羅。
 開け放したままの入り口から出たところを、ハイナ達がとおりかかった。

「む?」
「おや、ハイナに房姫。
 それにえっと……愉快な仲間達」
「おい、なんか俺達、まとめられたぞ?」
「まぁよいではないですか」
「本日も鍛錬ですか?」
「あ、いや……」
「ん〜?
 なんか違うみたいだヨ〜?」
「窯に火が入っていないでござるな」
「ふむ……休日だというのに掃除とは、精が出るでありんす」
「あっ、ハイナさんに房姫さんっ!
 えっとあと、お仲間の皆さん……」
「またまとめられましたな……」
「気にするなって、な?」
「あの……私……いままでっ!」
「なんダ?」
「急にかしこまったでござる」
「お世話になりましたっ!」
「あら?」
「出ていくのかえ?」
「えっとあの、もう私は、ここの生徒ではないので……」
「大学では、どのような研究をなさっているのですか?」
「あ、えっと、武器の素材について、研究しています。
 鉄以上の鉱石の発掘と、実用化を目指して……」
「ということは、まだ『ワンオブウェポン』とやらは諦めておらぬのじゃな?」
「は、はいっ!
 私の人生をかけても、つくってみせます!」
「それなら……妾は別に、構わぬがのぅ」
「えっ!?」
「夢追う者であれば、使いたければつこうても構わぬ、と言うておるのじゃ。
 なぁ、房姫?」
「えぇ、ハイナがよいと思われるのであれば」
「ってことは……」
「うむ。
 OGとしておおいに利用するがよい」
「後輩達にも、緋雨さんの技術を伝えてあげてください」
「俺達も……武器とか打ってみたいよな……ってティファニー、いいかげん離れろっ!」
「えぇ、もっと殺傷能力を高めた武器を……」
「ちょ、なに怖いこと言ってるでござるか!?
 匡壱もゲイルをあおらないで欲しいでござるよ!」
「佐保ちゃ〜ん!
 ミーもかっこいい刀をつくりたいのネ〜!」
「ぁ……ありがとうございますっ!」

 なにやらよくわからなくなってきたが、とにかく。
 工房の使用許可も出て、ますます掃除に身が入る緋雨であった。