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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!

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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!
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リアクション

「まぁ、確かにさ……。基本的にパレードを楽しみに来ている人が多いし、仮装したまま警備したほうが雰囲気を壊さないで済むかなと思ったんだけど」
「包帯巻いた事で裏目に出たな。佑一」
 三鬼が隣にいるゾンビ姿の佑一に話かける。二人は未だ燃え続ける琴音ロボに誰か近寄らないよう見張りをしているのである。
「……でも、こんなにリアルなゾンビの仮装はどうなんだろう。う〜ん、やっぱり周りの人も驚いてるなぁ」
「だから、リアル過ぎるんだよ!」
「三鬼の言う事も一理あるよね。ほら、ミシェルだって僕が仮装しているってわかってても、一瞬ビクッとしてるし、着替えた方が……」
 また一人、先ほどと同じヒプノシスで眠らせて静かにしてきたミシェルが佑一に謝る。
「あ……ごめんね、佑一さん! その格好って、慣れるまでまだ時間かかるかも……プリムラさん、やっぱりこれリアルすぎるよぉ……」
 やはり眠り花粉で観客を鎮圧したプリムラが口を尖らせる。
「リアルだからいいんでしょ? 佑一はそんなにゾンビの格好が嫌なの? 似合ってるのに……」
「いや、でも怖すぎるって! さっきも子供を数人泣かせちゃったんだけど……着替えていいかな?」
「……却下よ」
「って、やっぱり却下なのか。仕方ない、また包帯を巻いてミイラ男になっておこう」
 佑一がションボリと肩を落とし、木陰で包帯を自分の頭に巻き始める。
 哀愁漂う佑一の背中を見ていた三鬼の肩がトントンと叩かれる。
「何だ?」
 ミシェルが三鬼を見てにっこりと笑う。
「三鬼さん、お腹空いてませんか?」
「腹? ……あぁ、確かに。色々走り回されているからな」
「ボクね、さっき屋台で買ってきたものがあるから、よかったら一緒に食べませんか?」
 ミシェルがそう言って差し出したのは、スティック状のドーナツ。所謂、『チュロス』であった。
「!!」
 三鬼の目が輝く。
「お……おまえ、どうして俺の大好物を……!?」
 チュロスは揚げたてであり、程良いシナモンの匂いがしている。
「いいのか?」
「はい、どうぞ?」
 三鬼がミシェルからチュロスを受け取り、かじる。
「くっ……美味くてお手軽……まったく、イカした食い物だぜ!!」
 チュロスをかじる三鬼を見ていたプリムラが、彼がむせるのを見て、
「もしよかったら、温かいほうじ茶があるんだけど、飲む?」
「飲む!! チュロスには何でも合うんだ!!」
「少し待って……」
 プリムラが水筒から、湯気のたつほうじ茶をコポコポと入れる。
「はい。思ってたより熱かったから、気をつけて飲んで」
「悪いな……」
 ほうじ茶をすする三鬼。
……。
…………。
………………。
 三鬼のリーゼントが気になる様子のプリムラ。
「(触ったら怒られるかしら……)
 じーっと見つめていると、三鬼がプリムラを見返す。
「(……? 目が合った? これは、いいよってサイン?)」
 見つめ返すプリムラに、三鬼から差し出されるコップ。
「ああ……お茶のおかわりが欲しいの。遠慮しなくていいのに」
 コップを受け取るプリムラが再びほうじ茶を注いでいく。
「ん?」
 注がれたほうじ茶の水面に、何かが映る。
 プリムラが空を見上げると、外縁を回転させて飛行するセントリフューガに乗ったマント姿のパンプキンヘッドの男が高速で飛んでいく。
「あのジャック・オー・ランタン……誰だ?」
 三鬼が上を見上げて呟く。
 三鬼達を見下ろしたジャック・オー・ランタン姿の戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)が、ふいに空を指さし、また下へ手を下げる。
「何でしょう?」
 ミシェルが呟く。
「何か、落ちてくる……て言いたいのかしら?」
 プリムラが言うと小次郎は無言で数度頷いた後、ベルフラマントを翻し高速で何処かへ飛んでいく。
「やれやれ、お待たせしました三鬼さん。やはり自分で包帯を巻くのは難しいですね?」
 またミイラ男に戻った佑一が歩いてくる。
 振り返ったプリムラが上空に何かを見つける。
「何かしら?」
「え?」
 佑一が見上げると、上空から巨大昆虫達が燃え盛る琴音ロボめがけて一斉にやってくるのであった。そして、その後ろをノーンのステキ大自然やネフェリム三姉妹、淳二、和輝が必死に追い、未散もTVスタッフを連れて急降下してくる。


「こらぁ!! これは追うっていうより殆ど墜落じゃないかぁぁ!!」
 小型飛空艇に必死で掴まる未散。ちょっと前にまた起こった攻防戦にてTV局の小型飛空艇は小破させられていた。片手の腕力で掴まりつつも、マイクが持たれたもう片方の手はしっかりとスカートをガードしている。
 落下する船内でも平然とした態度の神楽が不敵な笑みをこぼす。
「旬のアイドルと言えば、ドッキリ大作戦の餌食になるものだ。寝起きは無理だが、予想外のハプニングは大歓迎なのだよ。おい、そこのカメラ、何を逃げようとしている! ちゃんと回すんだ!」
「神楽さん……あなたという人は……」
 ハルが既に超人プロデューサーの域に突入した統に、尊敬の念と同時に恐怖を抱く。
 そんなハルの手には残り一枚になったカンペのスケッチブックがある。その最後のページは、統の指示無しでは開けられぬ謎のページである。

 そんな危機的な展開を迎えていても、846プロの一員であるレオンと朱里は寧ろ喜んでいた。レオンは視聴率の上昇に、朱里は売店でのツンデレーショングッズの売上にである。
 朱里が開く846プログッズの売店には、大勢の人だかりが出来ていた。
 行列を掻き分け何とか先頭に辿り着いたガリガリの痩せ身の男が眼鏡を光らせ、その品定めをしている。ハロウィンということで仮装した客が多い中でも、いつもの黒いシャツに黒のパンツ、黒いリュックというポリシーは変えていない。
「特別イベントは別注品が出る可能性が高いからな……けど、未散の落語CDに衿栖の人形、そしてツンデレーション写真集か……」
「シン? お前も来ていたのか?」
 シンと呼ばれた男が振り返ると、日本刀を腰に一振り挿し、銀髪を後ろで括った軍服姿の男が、精悍な笑みを浮かべている。軍服と言っても教導団のソレとはデザインが異なるものである。
「これは……加藤少佐……夜は動けないものだと思っていたぜ?」
「フッ……確かにな。悪夢ばかり見ているこの私に睡眠導入剤は欠かす事が出来ん。だが、今日はツンデレーションの二人のご尊顔が拝めるとあっておちおち寝てもいられん」
「加藤少佐、じゃあパレードの方は見たのか?」
「語ることもあるまい。白猫と黒猫のあの神々しい姿はこの瞼にしかと焼き付けてきた。更に自宅での録画もバッチリだ。ファンとしては当たり前過ぎるがな!」
「……だが、相変わらずツンデレーション同士での百合妄想はしているんだろう?」
 クワッと目を見開く加藤。
「当然だ!」
「フッ……流石は加藤少佐。近所の幼女同士のお遊戯からおばあさん同士の井戸端会議まで、百合好きファンの中でも伝説的な守備範囲を持つという噂は本当みたいだな?」
「惜しいな……シン。私は、母親の胎内にいる双子の女子から既に萌えているのだ!」
「……あのぅ。買わないで話すだけなら、他所でやってくれないかしら?」
 赤ずきんちゃんのコスプレをして売り子をしている朱里が言う。
「ああ、済まない……だが、俺は全部持っているんだ……」
「私もシンと同じだ。自分用・保存用・布教用と三セットずつある。いつも通りのラインナップだからな」
 加藤の言葉にピクリと朱里の眉が反応する。
「……聞き捨てならないわね。いつもどおり? 今回は違うわよ!!」
「「何ッ!?」」
「これは、あなた達みたいなプロが現れないと、売る気にはなれなかったんだけれど……いつも買っているグッズとは一味ちがうって、見せてあげるわ!」
 そう言って朱里が売店のテーブルの上に、衿栖製作の『新作人形・ハロウィンVer(技術協力:レオン・カシミール)』を置く。
 白猫の未散と黒猫の衿栖という今回の衣装に合わせたものである。
「おおお! これはツンデレーションの魂の具現化か!」
「くッ……流石846プロだな! 俺の財政にエグい角度で攻めてきやがる!」
 食い入るように見つめる加藤とシンの前で、朱里が赤い瞳を不敵に光らせ、それぞれの人形の頭を撫でる……と、録音されたそれぞれのボイスが再生される。
 未散ちゃん人形「き、気安く触ってんじゃねぇっ!(ツン」
 衿栖ちゃん人形「な、なんか照れますね。でも……ありがとう(デレ」
「「「おおおおぉぉぉーー!!」」」
 二人の背後にいたモノノフ達も歓声をあげる。
「お値段は少ししますけど、いかがかしら? 皆さん?」
 朱里が微笑むと同時に、売店は注文と札束とクレジットカードが飛び交う戦場と化したのであった。
「欲望を爆発させるファンて怖いわね……」
 朱里がそう呟きながら、客を処理していると……。
「ぅてぇぇぇーーッ!!!」
 剛太郎の大声が聞こえたかと思うと、一斉に射撃する音が聞こえ、煌々と燃えていたモモの琴音ロボが大爆発を起こす。