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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別

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第三十六篇:四谷 大助×雅羅・サンダース三世

 幼少の四谷 大助(しや・だいすけ)は紛争地域に捨てられた孤児だった。
 そこで傭兵だった養父に拾われそのまま軍に入るのだが、幼い雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)の使用人として奇しくも軍人である彼女の父親に拾われたのだ。
 雅羅自身の不幸体質と悪い虫から守るため、大助は一般的な家政から銃器や格闘技術までを学び執事兼世話役として全力を尽くすが、やはり子供の身で全てを防ぐのは不可能だった。
 そのあまりの災厄の頻度に家族すら雅羅を遠ざける程だった。しかし、それでも大助だけは雅羅の側に居続けた。
 不幸が雅羅を容赦なく襲う度に、大助は身を挺して守った。そして、同時に彼女を見守り彼女の幸せを願い続ける。
「な、なんのこれしき……だ、大丈夫だよ雅羅さん、鍛えてるからね!」
 それは拾われた恩からの使命感もあるが、なにより許されないと知りながら、美しく育つ雅羅への密かな恋情から来るのだったのだ。
 大助は今日も雅羅を離れて見守る。しかし今、彼女の隣には別の男が……。
「PMC(民間軍事会社)の社長子息――マレク。私の許婚だ」
 雅羅は、隣に立つ男をそう紹介した。
 親同士が決めた婚姻。そして、その前段階として結婚前に生活を共にするべく、用意された家――マレクの家へと雅羅が引っ越す日「オレの我儘なのは分かってる、分かってるんだ。けど、言わずにはいられない」
 他の男が雅羅と結ばれそうになったことで嫉妬し、そして今まで自分の立場から抑えていた想いに気付いた大助。
 そして大助はずっと抑えていた自分の想いをぶちまけた。
「行かないでくれ、雅羅」
 そして、雅羅を抱きしめる大助。
 決して彼を拒否することなく、抱きしめ返す雅羅の腕が、何よりの答えだった。
 こうして立場を越えて結ばれた二人は厚く唇を重ね合うのだった。