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第二章 大地にそびえるイコン喫茶 1

 イコン喫茶。
 それは明らかに地上の本家・秋葉原にはないものであり、メイド喫茶や執事喫茶のノウハウを応用しているとはいっても、やはり未知の領域である。
 それだけに、このイコン喫茶が成功するか否かは、いわゆるアキバ文化がパラミタにうまくとけ込めるかの一つの指針となってくるだろう。
 そう考えると、相当責任重大な話である、のだが。

 そのはずなのだが、もう、何というか、来客以前の問題として、店員の顔ぶれが完全にカオスであった。

 厨房でものすごい手際で料理を作っているエプロン姿のイコンは紫月 唯斗(しづき・ゆいと)絶影
 といっても、今回はやることがやることであるため、メインパイロットは唯斗ではなく、彼のパートナーであり、葦原明倫館の食堂の厨房で活躍しているエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)である。
「エプロンつけたら可愛いかと思ったんですが、確かにこれはなかなかですね」
 エプロンつけた玉霞が可愛いかどうかについては個人の感覚に任せるが、少なくとも唯斗は満足なようである。

 一方、執事服から上着を外したようなベスト姿で接客に当たっているのは、グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)シュヴァルツ
 肩部分の装甲が大きすぎるため、上着なしでの接客という苦肉の策を選択したのであるが、これはこれでなかなかどうして様になっている。

 メイド服を来た三頭身の少女、のような姿をしたイコンは、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)の猛撃滅虫!Eジェットさん。
 搭乗者のエヴァルト曰く、「見た目はもとからメイド風だし向いていると言えば向いているだろう」とのことだが、なまじかわいらしい少女の姿をしているだけに、一切表情も変わらず、口パクすらしないのが逆にひどくシュールな図になっている。

 その後方、くいっくいっと独特のリズムで腰を振りながら歩いている、なぜかくちばしのついたピンク色の二足歩行するウサギ型イコンは、舞衣奈・アリステル(まいな・ありすてる)農場兎ストマックアサルト
 外見といい動きといいどう見てもアレであり、まあ、何て言うか、その……、いっぱい聞いたりしゃべったりできそうな感じである。
 そう考えると、確かに接客向きであると言えなくもない気がしないこともない。
 ちなみに舞衣奈は操縦に専念するため、接客やら何やらはサブパイロットのネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)の担当である。

 さらにその横にいる執事服……ではなくて、執事カラーに塗り直されてしまっているのは龍心合体ドラゴ・ハーティオンコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)と合体した姿である。
 アシスタントのラブ・リトル(らぶ・りとる)がこの仕事を受けてきた理由はひとえに「ハーティオンに執事の格好をさせてみたいから」であり、ドラゴランダーはともかくハーティオンが快諾したのをいいことに、小谷 友美(こたに・ともみ)を巻き込んで早速執事風へのカスタマイズを行ってしまったのだ。
「色を黒くして〜、胸元は白〜♪」
 もともと黒・白・赤・黄がメインカラーなのだが、それを執事服風にダイナミックに塗り替える。
「ネクタイつけて〜♪ 丸メガネを顔面につけて〜♪」
 ネクタイはともかくメガネは必須なのか? いや、単なる趣味である。
「ツンツン髪の毛はオールバックよね〜♪」
 なるほど、確かにこれでそうとう大人しそうに……見えるわけがない。
「手元のカフスボタンの絵がワンポイントよね♪」
 細かいデザインにも凝って、ラブ自身は非常に満足そうなのだが……。
 まあどこからどう見ても重装備であり、カラーリングと小物の限界というものを思い知らせてくれるデザインであった。

 そして最後に、接客にまんまるな身体で駆け回っている巨大な黄色い鳥はアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)ジャイアントピヨ
 パラミタでも伝説的に珍しい巨大生物であるらしいのだが、何にしても、もはやイコンですらない。
 一応サイズの合う特注のメイド服と巨大なカチューシャを身につけ、くちばしの先に口紅まで塗っていたりするのだが……まあ、何というか、完全にマスコットである。

 ……こんな店員で大丈夫か?
 YesでもNoでも死亡フラグ確定なのだが……この場合の返事はどちらでもあった。