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抱きついたらダメ?

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抱きついたらダメ?

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「おおー、なんだこりゃ!?」
 黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)は、動き出した石仏を見上げながら叫んだ。
「これ……ゴーレムなんでしょうか?」
 ユリナ・エメリー(ゆりな・えめりー)が竜斗の体に抱きつきながら聞いた。
「そうだろう」
 たった一言、答えたのはミリーネ・セレスティア(みりーね・せれすてぃあ)だった。
 1体のゴーレムがゆっくりと足を上げ、竜斗達を踏みつぶそうとする。
 だが、ゴーレムの背中で突然爆発が起き、その足は竜斗達をよけて地面につく。
「ふんっ、こんなやつさっさと片付けるぞ!」
 ゴーレムの後ろ側で、セレン・ヴァーミリオン(せれん・ゔぁーみりおん)が手元に光条兵器による剣を振りかざしていた。
「あの……これだと私、竜斗さんの足手まといにならないでしょうか」
 ユリナは心配そうな表情を浮かべて竜斗に言った。
 抱きつきたくなる病が下手をすれば竜斗の足を引っ張るかもしれないと考えていた。
 それに対し、竜斗は少し考え込むと、突然しゃがんだ。
「背中でユリナを背負いながら闘うから大丈夫だぜ」
 竜斗の言葉に、ユリナは驚き顔を少し赤らめる。
「それじゃあ……」
 ユリナは、竜斗の背中に抱きつき、体重を背中に預ける。
 抱きつく腕はさっきよりも強めだった。
「よし、いくぜ!」
 竜斗はユリナを背負いながら、光条兵器でゴーレムに戦いを挑む。
 一方でミリーネはゴーレムの前からセレンは後ろから、攻撃を仕掛けていた。
 ミリーネはさらに、オートガードで全員を守りながらもせめていく。
「ゴゴゴゴッ」
 ミリーネが、動かなかった石像の前に立った瞬間突然、音が響き始める。
「まだゴーレムが!?」 
 もう1体ゴーレムが動き始める。だが、その突然の出来事にミリーネは動けずに居た。
 ゴーレムは腕を振り上げ、ミリーネに向けて振り下ろそうとする。
「ちっ」
 セレンは舌打ちをすると、小さな翼を使いミリーネを引っ張ってゴーレムから離れる。
「ったく、きをつけろ……へっくしょん!」
「え……セレン殿!?」
 突然、ミリーネはセレンに抱きつかれ驚く。
 ミリーネの手はしっかりとセレンを抱いていた。
「お、おい。俺もか!?」 
 セレンは慌てて離れようとする。だが、離れない。
 離れたいと思っても、体が動いてくれなかった。
「よりによってミリーに……」
「なっ!? なんですかその言い方は!?」
 セレンの一言にミリーネは眉間にしわを寄せて怒った。
「おい、ミリーネにセレン! 喧嘩してる場合かよ。ゴーレムを見ろ」
 竜斗の言葉に、ミリーネとセレンは我に返り上を見上げる。
 ゴーレムが再び、その大きな腕を振り下ろそうとしているところだった。

 だが、その振り下ろされた腕はミリーネ達には当たらなかった。
「お嬢さんがた大丈夫かな?」
 風術を使ってミリーネ達を助けたのは、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)だった。
「微力ながら、私達も援護に入ることになったわ」
「おお、援護助かるぜ……携帯で闘うのか?」
 リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)が、竜斗とセレンのそばにつく。
「さあ、一気に片付けますよ。これ以上、綺麗なお嬢様方に怪我をさせないようにね」
 エースは、我は射す光の閃刃を使い、ゴーレム2体を倒すに居たらずとも動きを鈍らせようとする。
 リリアは、それに対して、全員をディフェンスシフトで守る。
「ゴオオオオオ!?」
 ゴーレム1体が全員の攻撃もあって、崩れ落ちる。
「あと一匹。ふふ、どうも簡単なお仕事でたすかりましたよ」
 エースは、余裕の笑みを浮かべながら闘っていた。
 だが、エースの足をゴーレムにとらえられてしまう。
「しまっ――」
 その瞬間、激しい音と共にゴーレムの背中に爆炎が上がる。
 少し、ずれればエースにも爆炎が当たるという場所だった。
 それを放ったのは、リリアだった。
「これで、どうにか終わりですわね。さ、はやく秘薬とやらをとって帰りましょう」
 リリアは、涼しい顔をしながら、崩れゆくゴーレムのど真ん中を歩いていく。
「……さっきから気になってたんだが、その手に持ってる携帯は一体何なんだ?」
「あら、ちょっと動画を撮っただけよ」
 竜斗の質問にリリアは平然と答える。
 だが、竜斗にはそれが何の動画なのかを聞く勇気は無かった。
 撮られた動画が、ミリーネとセレンの抱きついたものだと分かるものは誰も知るよしは無い……。