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リアクション
「さーって、お待ちかねのゲームの時間だよ!」
ルカルカ・ルーがマイクを片手に参加者達に叫びかけると、メイド姿の榊 朝斗が新しい蓋つきの紙コップをゲーム参加希望者達に回していく。
「このゲームは、桜酒の中に桜の花びらが入ってた人が命令できる王様ゲームだよ! 命令できる相手は、蓋の内側に書いてあるからねー」
「ただし、無茶なことは言わないようにな」
ダリル・ガイザックが補足しながら、配膳を手伝うとあらかた配り終わる。
「まぁ、お遊びの一貫だから気にしないでね〜嫌だったらやらなくってもいいわけだし」
「蓋のほうの名前は、あらかじめ参加希望者の中から抽選で選んでいるから気にすることはない。だが、命令をしないのもありだ」
「よ、ルカお疲れ!」
マイクで解説を終えたルカルカ・ルーのところに現れたのは紫月 唯斗(しづき・ゆいと)とプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)、そして紫月 唯斗とよく似た少年の紫月 暁斗(しづき・あきと)だった。
見慣れない少年の姿に、ルカルカ・ルーは目を丸くする。
「あれ?そのこは?」
「ああ、なんか未来から来たとか言う、俺の息子だ」
「暁斗様、ご挨拶しないといけませんよ」
「あ、は、はい! 紫月 暁斗……です。よろしくお願いします……父さんは、この頃から綺麗な人の知り合いが多いんだ?」
「やだ、綺麗だなんて正直な子ね!」
にっこり笑ったルカルカ・ルーは、「パパに似てるのかも!」といいながら、抱き上げてぐるぐるーと飛行機回しをして楽しんだ。紫月 暁斗はいきなりのことに驚いて目を回していたが……
「おい、そのくらいにしてやれ」
と、ダリル・ガイザックの言葉でようやく開放された。
「いいなー、ルカも子供欲しい……ルカも結婚したら、子供を、生んで生んで生んで生んで生んで、生みまくるわ!!」
「……何人産む気だ……」
紫月暁斗をおろしたあと、にっこり笑って言い放ったルカルカ・ルーに、ダリル・ガイザックは頭を抱え気味にため息をついた。「サッカーチームが作れるくらい! 夫婦でコーチするのよ(ぽっ)」と頬を赤らめ即答するルカルカ・ルーに、さらに頭を抱えた。
「監督がいないぞ」
「ルカに監督とか無理。ダリルがやってくれるって信じてる!」
「あー、ダリルが突っ込みどころ違う気がするなぁ」
苦笑する紫月 唯斗に、そうだ、と思いだし気味にダリル・ガイザックはゲーム参加者用の桜酒の乗ったお盆を差し出した。
「ゲームに参加するなら、これがゲーム用の桜酒だ」
ダリル・ガイザックからコップを受け取ると、三人は一斉に蓋を開いた。
桜の花びらが入っていたのはプラチナム・アイゼンシルトの手にするコップにだった。
「ふふふ、桜の花びらが浮かぶ桜酒だなんて、ロマンチックですね。それでは私の命令は、語尾に『でもそこが良い』にしましょうか」
「蓋の裏には、どなたの名前が書いてありましたか?」
実行委員の腕章をつけたディアーナ・フォルモーント(でぃあーな・ふぉるもーんと)は、プラチナム・アイゼンシルトのコップの蓋を見ると、そこには『ニーフェ・アレエ』とかかれていた。
ピンクの髪に、すずらんの髪飾りが印象的なルーナ・リェーナ(るーな・りぇーな)が、人に囲まれているニーフェ・アレエをどうにか連れてくる(その最中勿論お菓子やお料理をつまみ食いするのも忘れない)と、マイクで命令が発表され、命令先がニーフェ・アレエであることも発表される。
「え、わ、私がですか?」
「ごめんね、でもいやな命令だったら断ってもいいよ?」
「いいえ、大丈夫ですよ。でもそこが良い」
ルカルカ・ルーの気遣いの言葉に、そう返したニーフェ・アレエ。会場が一瞬凍りついたが、ニーフェ・アレエはすぐにえ、え、という顔になり「だ、だめでしたか?」と問いかける。プラチナム・アイゼンシルトは目をきらきらさせながらにっこりと笑った。
「いいわ! それでいいの! それじゃ、今日のイベントが終わるまでずっとね!」
「ええ! が、がんばります……でもそこが良い」
一生懸命にそう付け加えるニーフェ・アレエの姿に、会場はわいわいと盛り上がった。
ディアーナ・フォルモーントはマイクを引き継ぎ、優勝者への景品授与を担当していた。
「さて、次は句会の優勝者の一句を、改めて読んでいただきましょう。アルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)さん、お願いします!」
「あー、ううん、こほん。では一句。
桜酒 皆(みな)の行く道 桜咲け」
パチパチと拍手をし始めたのは、ルーノ・アレエだった。感動したのかその目じりには光るものがあった。
「この句にはある思いを込めてみた。なかなかに事件の多いパラミタだが、だからこそこんな平和な時間が際立つ。桜酒の香りと、桜の美しさと、皆との出会いに、感謝をこめて。皆に素敵な日々が訪れますように」
「アルさん、ありがとうございました。そして、優勝おめでとうございます」
ディアーナ・フォルモーントはピンクローズの花束を差し出して再度拍手をすると、会場全体から惜しみない拍手が送られた。
「やっぱり、なんかオヤジギャグっぽい」
むぅ、頬を膨らませたシルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)は、自身の毛先のくるくるを、指出からめとりながらパートナーの晴れ舞台を眺めていた。桜酒をストレートのまますぅ、と飲み込む。ゆっくりと目を閉じて心の中で、わずかに母のことを思い浮かべると、小さく呟いた。
「アル君のおかげで……私は元気です」
『よかった』
「え?」
返事が聞こえたような気がして、シルフィア・レーンは目を開けた。
桜の樹が、優しく母のように見守ってくれている気がした。
「どうしたんだ、シルフィア」
「ううん。なんでもないよ、アル君」
戻ってきたらしいパートナーに気がつかれないよう、シルフィア・レーンは知らずうちに流れた涙を拭った。
「アル君の詩にこめた思い、素敵だと思うよ」
「ありがとう。いやぁ、まさか優勝するとは思わなかった!」
振り返った先のパートナーが話しているのは、ディアーナ・フォルモーントや、南條琴乃ら別の女の子達だった。それを見てさらにシルフィア・レーンはむくれてしまう。
「って! もぅ、もてないって設定はどこに行ったのよぅ」
「そうだ、シルフィア」
思い出したようにこえかけても! なんて憎まれ口を口にする前に、ピンクローズの花が顔に飛び込んできた。それを受け止めて、小首を傾げて見上げた。
「その素敵な花は、シルフィアに。私は、どちらかというと花より団子だからな」
顔を赤くして、口をパクパクさせたシルフィア・レーンは、やっとこ君、と頷いたあとににっこりと笑って言葉を投げかけた。
「もう、アル君は団子よりお酒でしょ!」
それもそうだ、と笑いながら、ブランデーをたらした桜酒をグイっと飲み込む。落ち着いた二人ののんびりした時間を過ごしながら、桜の香りに二人は酔いしれていた。
ルーノ・アレエたちが食事をしている中で、とても早い勢いで食べ物を食べ続けるハーフフェアリーがいた。その手には、自分のパートナーが作ってくれたお弁当もあり、新しく出来た友人に分け与えていたところだった。
「このチーズフライとからあげ、ディアが作ったの! おいしーでしょ!」
「はい、おいしいですね! でもそこが良い」
「ニーフェさん、でしたよね。私は、ディアーナ・フォルモーントです。ルーナの相手をしてくださっていたんですか?」
「はじめまして、ディアーナさん。はい、ルーナさんには先ほどご挨拶させていただいて、お友達になりました! でもそれが良い」
「では、私とも友達になってください。私は、弓を得意としておりますので、もしよければお力になれることもあるかもしれません」
「弓……すてきですね、ディアーナさんの雰囲気にとてもあっています! でもそれが良い」
ニーフェ・アレエは忠実に罰ゲームをこなしながら、ハーフフェアリーのルーナ・リェーナと一緒にお花見弁当やディアーナ・フォルモーントの作ったお花見団子をほおばっていた。
喉をつまらせないようにお茶を勧めながら、お花見のひと時を過ごしていた。
「あ、いいなー。ニーフェ。私もお団子食べたい!」
「ノーンさん、どうぞ! ディアーナさんの手作りなんですって。 でもそれが良い」
「はじめまして、あたしはルーナだよ」
「私はノーン・クリスタリアって言うの、ニーフェのお友達だよ!」
「なら、あたしとも友達だ! よろしくね!」
「うん!」
二人のハーフフェアリーは互いに手を取り合うと、互いに抱えたお菓子や料理を交換し合いながら、無邪気な笑顔で恐ろしい勢いで消費していく。そこへベアトリーチェ・アイブリンガーが新しいお菓子を持ってきた。
「たくさんあるから、遠慮なく食べてくださいね」
「「うん!」」
半端ない勢いなのだが、あまりにも笑顔で気持ちよく食べつくしていくので、会場内の料理は二人のところへと集められていった。運んでも運んでも次々に消費されるため、料理が足りなくなってしまった。涼介・フォレストや、ネージュ・フロゥは再度追加分を造りに行ってしまうほどだ。その手伝いに、何人もが駆り出されていく。大きなイベントならではの出来事に、誰もがそのトラブルも楽しんでいた。
「お、混ぜてもらえないか?」
そこへ、赤い長いタオルを首から書けた姿の瀬乃 和深(せの・かずみ)が入ってくると、ディアーナ・フォルモーントは「ええ、喜んで」と場所を空ける。
見覚えのある地球の有名人のコスプレのはずなのだが、どこか違う。何が違うのかというと、正直筆者にもわからないが分かる人にはわかる。これは本人のコスプレではない。
「なんだって、春○番をしらないのか!?」
知ってます、知ってますけどそれってコスプレですか?誰のコスプレなんですか?!
「だから春一○だって!」
「和深、物まねしないと分からないかも」
上守 流(かみもり・ながれ)が既にノーン・クリスタリアやルーナ・リェーナとならんで、ほぼ同じ勢いで食事をしながらアドバイスを投げかける。
「よし、見てろよ!」
瀬乃 和深は気合を入れてステージに立ち、マイクを奪い取ると叫んだ。
「皆さん、元気ですかーーーー!!! 1・2・3、ダアアアァァァァーーーーーーーーーッ!!」
それだけやると、やり遂げた男の顔でパートナーたちのところへ戻ってくる。
会場は一同ポカン、としていたのだが、ルーノ・アレエだけはうつぶせて肩を震わせていたという。あまりに楽しませてくれたからか、ルーノ・アレエは挨拶に訪れた。
「はじめまして。とても楽しい催し、ありがとうございます」
「あ、いいや、あんなに笑ってくれたのはうれしいよ。ありがとう」
苦笑していると、上守流がひょこ、と顔を出す。ニーフェ・アレエとは既に食事中に挨拶したから、ルーノ・アレエにも挨拶をしようと思ったのだ。
「こっちは、流。俺の大切な相棒だ」
「あ、う……」
「よろしくお願いします。上守 流」
大切な、その言葉に反応して頬を赤らめるとぱっと立ち上がってすぐに食事に戻ってしまった。先程よりも速度が増しているのは、照れ隠しのつもりなのだろうか。ルーノ・アレエはクス、と笑ってしまった。
「なんだ? あいつはぁ……わるいな。ルーノさん」
「いえ、いいんです。そちらの方は?」
「あぁ、で、こっちがアルフィーさん」
銀色の上が特徴的な美少女のアルフェリカ・エテールネ(あるふぇりか・えてーるね)は、手にしていたお酒をカップに並々と注ぎ、ティーポットから桜酒をちゃぽん、と一滴だけたらす飲み方をしながら、ごきゅごきゅと飲み干してはサイドお代わりを注ぎ続けていた。ルーノ・アレエがじっとそれを見つめていると、アルフェリカ・エテールネはにやりと笑った。
「大丈夫だ。わしはこう見えても魔女でな。見た目どおりの年齢ではないのだよ。ただ背が低く、見目麗しいだけのババァなのだよ」
「あ、いえ。そうではなく……その、そんなに飲まれてはお体に触るのでは?」
む?と手を一瞬止めるが、にっこり笑って
「ああ、ありがとう。だが、無理に飲んでいるわけではない。安心するといい」
と答えた。
「それならば、私も少しいただけますか? 私はこちらに少したらすだけでお願いします」
「おお、よかろう。共に酒を酌み交わすのは、いいことじゃ」
瀬野 和深は、そんな二人を見て思わず笑ってしまった。ようやく頬のほてりを収めた上守 流がさらに分けてもらった料理やお菓子を持って、瀬野 和深の隣にちょこん、と座るとス、と彼が手に取れるように差し出す。。
コスプレ衣装のタオルをはずすと、ありがとうといいながら、桜酒を口にする。
「こういう待ったりした時間も、本当にいいもんだな」
「はーい、ゲーム2回目の命令者は、なんとエース・ラグランツだよー!」
「ってことで、メシエ。今日一日お前にルーノさんたちをレディとして扱ってもらおうか!」
「いつの間に私の名前を書いたのだ……っ」
OKを出したつもりはないのだが、蓋の裏に名前を書かれていたメシエ・ヒューヴェリアルは深々とため息をつきながら、ルーノ・アレエとニーフェ・アレエたちがたのしんでいた食事の場にいき、ティーカップにブランデーティを入れて差し出した。
「ルーノ、お前にはこちらのほうが良いだろう。ある程度、アルコールも飛ばしてある」
「え、メシエ・ヒューヴェリアル?」
「残りの数時間ではあるが、お前たちを『レディ』として扱うのが、『ゲームの一貫』だ」
少しばかりすねたような表情でプイ、とそっぽを向いたところに、丁度ニーフェ・アレエがたってそれを見ていた。
「でも、メシエさんはいつも私たちに素敵なプレゼントを下さるじゃないですか。私は、それだけでも十分嬉しいですよ? でもそれが良い」
「ええ。メシエ・ヒューヴェリアルの贈り物は、いつも気遣いがある上品で素敵なものが多いです。ダンスパーティにつけていっても恥ずかしくないアクセサリーをたくさん頂きました」
続けて感謝の気持ちを口にされて、メシエ・ヒューヴェリアルは困った様子で、まだ頬を赤らめていた。
「はいはーい、続けてゲーム3回目の命令者は、なんと……あ、ダリル?!」
「ならば、甘酒一リットルの一気飲みだ」
「……ダリル・ガイザック、それは、私がするということ、ですよね?」
ルーノ・アレエは酒瓶を差し出してくるダリル・ガイザックにやや固まり気味で問い直した。
「ああ、相手がルーノとなっている。だが無理はしなくてもいい」
「分かりました。では、せっかくですし飲ませていただきますね」
意を決したようにそういうなり、ダリル・ガイザックから瓶を受け取ると、瓶の口を開けて、唇を寄せる。
ぐびーっと一気に飲み干すと、頬を赤く染めたルーノ・アレエがふう、と一呼吸をいた。
「ご、ご馳走、さまれした……」
「姉さん!?」
ニーフェ・アレエがようやく気がついたように駆け寄ってくる。あまりのあわてっぷりに、ダリル・ガイザックが眉をひそめる。
「む、どうした?」
「ルーノはお酒くらい平気だったわよね?」
「姉さんは、お酒は大体平気なんですけれど、甘酒だけは飲むと酔っ払っちゃうんです!」
「え? あ、甘酒で?!」
一同が視線を向けると、ルーノ・アレエはふらふらとしながら、横にいたソア・ウェンボリスにぎゅーッと抱きついたかと思うと、ラグナ アインにぎゅーっと抱きついて、カチュア・ニムロッドの胸に顔を埋めるほど抱きついて、と出会う人々それぞれに次々とハグをしていく。
紫月 暁斗に至っては、ルーノ・アレエの胸が顔面に当たったようで酸素を求めてふくよかな胸を押してしまい、さらに混乱してそのまま気絶してしまった。
「あらあら、暁斗さまったら……」
「お、おい!? 大丈夫か?」
少しばかり幸せそうな紫月暁斗は、顔を真っ赤にしたまま倒れていた。
「ええと、酔うとハグをしまくる、のか?」
「だ、大丈夫、なのか……?」
「すみません。地球で甘酒を飲んだときに、初めて知ったものでお話しそびれちゃって……」
「……そっか、地球でそんなことがあったんだ……」
ルカルカ・ルーは少しさびしげに呟くと、ダッシュしてルーノ・アレエを押し倒す勢いで抱きついた。
「もー! 私たちが知らないこと、全部話しちゃいなさい! 甘酒以外に何を飲んだのとか、どんなものがおいしかったのかとか!」
「りゅかりゅかりゅー?」
「もう、今日はいっぱいいっぱい話しなさいよ!」
泣きそうな表情のルカルカ・ルーを、ルーノ・アレエは今度は慰めるように抱きしめた。
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