シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

MNA社、警備システム開発会社からの依頼

リアクション公開中!

MNA社、警備システム開発会社からの依頼

リアクション

 C地点のフラッグが確保され、機動兵器側の防衛に更に力が入る。
 その中でも取り分けA地点は異彩を放っていた。
 機動兵器の数、機動兵器もスムーズに動けるだけのスペース、あらゆるものが程よい遮蔽物となっている。
「くくく、フハハハハハハ! おるわおるわ烏合の衆が! 見てくれは、まあなんだ、悪くはないじゃないか! 別にヘスティアより強そうだなーとか思っていないぞ!」
「つ、強そうですねー」
「……案ずるなヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)! お前にはこの俺が搭載したウェポンシステムがある! 奴等を停止させるなぞ動作もないことよ!」
 笑いながら、白衣を棚引かせて高らかに叫ぶはドクター・ハデス(どくたー・はです)
「クククッ、この俺様の存在を忘れちゃ困るぜっ! このダーク・スカル(だーく・すかる)の存在をなっ!」
 ハデスの首から下げられている【ドクロのペンダント】。今では立派にダーク・スカルの寄り代となっていた。
「しっかしだ、あの機動兵器の一台でも手に入れられれば、ちったぁ世界征服にも近づくんじゃねぇか?」
「ふん、あれが使えるものと決まったわけではないだろうに。使えるのであれば頂くのも悪くはない、がしかしだ! その前にやることがある!」
「あぁ? なんだよ、やることって?」
「ヘスティアを見ろ! このぽんこつドクロが!」
「誰がぽんこつだ誰がっ! ……んで? この機械娘が如何したんだよ」
「あ、あの。あんまり見られると恥ずかしいのですが……」
 背中に極大のウェポンシステムを背負いながらも、もじもじするヘスティア。
「ヘスティアは俺が持てる限りの科学を結集させたウェポンシステムを背負っている、云わば我等オリュンポスの科学力の結晶! そしてあの機動兵器もMNA社とやらの力の塊だろう?」
「まあ、そうなるのかね?」
「ならば当然! どちらの力が上なのかはっきりさせなければなるまい!」
「いや、その理屈はおかしい」
「この際ぶちまけて言ってしまうとフラッグ確保はどーでもいい! ヘスティアが上か、奴等の機動兵器が上か白黒つけられればそれでよいのだ!」
「俺様が言うのもアレだが、自己中だな」
「独善的と言ってもらおうか! さあヘスティア! このMNA社からの挑戦状、叩き伏せるぞ! 我がオリュンポスの技術力を見せてやるがいいっ!」
「かしこまりました、ご主人様…じゃなかったハデス博士!」
 ハデスの発した声を警戒し、先行して前に出てきた機動兵器が三機。
 ヘスティアは引くことなく、悠然と立ち続ける。本来の身長は機動兵器に及ばないものの、背負っているウェポンシステムがあるおかげでまるで兵器合戦の様だ。
「見るがいい、この俺が自ら開発した、ヘスティアのウェポンシステムの性能を!」
「まあいいか。宿主の力の結集、特と見せてもらうぜ! やったれ機械娘!」
「機械娘ではなくヘスティアです! ……ターゲットロック、いきますっ!」
 ヘスティアが【六連ミサイル】、全弾を発射段階へ移行。それを見た三機も迎撃態勢へ移る。
 うち一体が突撃、残りに体はライフルを構えて待機。
「ヘスティアのありったけ、撃ち尽くしますっ!」
 機動兵器に接近される前にミサイルを全門射出。18個ものミサイルが脅威を引き連れて向かう。
「……って俺たち側にかよ! ハデェス! どうなってやがるっ!?」
「我々は犠牲になったのだ。オリュンポスの科学の結集させたヘスティアの、ドジ属性の前にな……」
「言ってる場合かぁ!?」
 荒れ狂うミサイルたちがハデスとダーク・スカル、更には契約者たちを無差別に襲うことになる。
「は、はわわっすいませんっ!」
 景気よく誤射したヘスティアが頭を下げる。周りではミサイルが爆発しまくっているのでそれどころではなかった。
「きょ、今日は引き分けにしておいてやるぞぉ!」
「いいからさっさと逃げろぉ!」
 ハデスとダーク・スカルの断末魔に近い叫び声がミサイルの煙と共に空へと消えていくのだった。
 予測不可能な出来事に対して、動きが止まる機動兵器三機。
 それを好機と見た三人が立ち込める煙の中からその身を乗り出した。

「あは……素敵な……煙……」
「視界 良好 システム オールグリーン 火気管制 ロック解除」
「さあ……お仕事を……始めましょう………ククク」
「ミッション内容 敵機動兵器群ノ陽動、又ハ殲滅」
 煙から現れたのはネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)アーマード レッド(あーまーど・れっど)の二人。煙から出た途端にその存在は機動兵器を圧倒する。
 アーマードの全長は4m、機動兵器よりも一回りほど大きい。
 ネームレスも4mクラスの【魔瘴龍「エル・アザル」】に乗り、その周りにも3m程度の【瘴龍】が四体飛行している。
 ネームレス自身も身の丈をゆうに超える大斧【要塞崩し】を持っていた。
「さて……蜂の巣に……される前に……殲滅ね」
「中距離支援モード 援護スル」
 ネームレスが乗る魔瘴龍がその巨躯からは考えられぬほどのスピードで行動を開始。
 狙うは遠くからライフルを構えて動かない射撃型二機。
 ライフルを使い狙いをネームレスに定め、応戦する機動兵器だが周りを跳ぶ瘴龍に阻まれる。
 ライフルの弾に当たった二体の瘴龍はやられてしまう。しかし、ネームレスは止まらない。
「……まずは……一機」
 尋常ではない速度を維持しつつ射撃型へと滑空を開始。風が悲鳴を上げているかのように嘶く。
 これを見た射撃型の一機がブーストを使い後方へ離脱、それを援護するためもう一機はネームレスにライフルをもう一度放つ。
「その程度……主公の足元……にも……及ばない」
 風を切りながら、ゆっくりと【要塞崩し】を構え、そして機動兵器の横をすり抜ける瞬間。スピード、更に人外の膂力を持ってして大斧を振るう。
 その一撃は、機動兵器を腰元から真っ二つにするほど。
 偵察型が修復することすら適わぬほどの馬鹿げた威力の一撃だった。
「存外……脆いのね」
 しかし、地上近くに来た為他の機動兵器に狙われてしまう。
 この二人が危険だと認識した機動兵器たちはこの一点に集まり始めたのだ。
 当然、ネームレスにも強行型が向かう。その数は二機。
 いかに魔瘴龍と言えど、強行型のブレードを浴びれば無事では済まない。
「ソウハ サセナイ」
 いつの間にかネームレスの近くまで移動してきていたアーマードが向かってくる強行型を【大型アサルトライフル】と【誘導爆雷「狂犬」】を使い進行を阻止。
 更に脚部に攻撃を集中させることで強行型のメリットである機動力を削ぐ。
「アーマード……後ろ」
「接敵確認 迎撃スル」
 煙を利用して、アーマードたちと同様その身をギリギリまで隠し、強襲を試みた機動兵器だったが上空に舞い上がる途中のネームレスからその姿を発見されてしまう。
 アーマードは襲い来るブレード攻撃を【三連装パイルシールド】でガード。そのまま、盾を胴体部に突き立てる。
「バイルバンカー 全射出」
 同時に盾にマウントされていた三連装のパイルバンカーが全て射出され、強行型の胴体部には風穴が開き、機動停止。
「ネームレス 感謝スル」
「いいえ……」
 しかし、まだ上空へ上がり切れてはいないネームレスに向け、足止めされた強行型二機がマシンガンを構える。
「足止めて悠長に射撃なんて、させるわけないってね!」
 そこへ遂に現れたもう一人の人物。
 実体を掴ませず、暗躍するかのごとく戦場の影となっていた緋王 輝夜(ひおう・かぐや)
 今までは『ミラージュ』、『実践的錯覚』を併用しつつ【ドッペルシャドー】で戦場にいながらもその姿を掴ませずにいたのだ。
「これは挨拶代わり、巨体をやるなら足からってね!」
 『ブラインドナイブス』を使い、アーマードの攻撃で削られた装甲を紙くずのように貫通して大破させることに成功する。
「でも、それが狙いってわけじゃないんだよね……アーマード! ネームレス!」
「わかりました……姉君」
「了解」
 ネームレスはもう一機のマシンガンの猛攻を振り切り上空へ。
 アーマードは後方へ、輝夜はアーマードの巨大の後ろに隠れ誰にも悟らないようにする。
 それを隙と見た偵察型の一機が、大破した強行型の下へ瞬時に駆けつけ修復を開始しようとする。
「焦りは禁物、機械に言ってもわからないかな?」
 アーマードの後方から少しだけ出て、偵察型を確認した輝夜は強行型の真下に仕掛けていた『インビジブルトラップ』4つを全て発動。
 強行型、偵察型を巻き込んだ大爆発が巻き起こる。その後には、黒焦げの鉄くずとなった二機があるだけだった。
「よしよし、これくらいラクにこなせないと、馬鹿親父を止めるなんてできないからね! この調子で行こう!」
「そう……ですね……」
「了解」
 これくらいできなければ、馬鹿親父ことエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)を止めるなんてできない。
 そう言って輝夜はその身をまた隠し、アーマードとネームレスは戦場で猛威を奮い、敵主力の注意を引き付け殲滅するのだった。