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【ぷりかる】メイド奪還戦

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【ぷりかる】メイド奪還戦

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プロローグ

 建物の広い一室。
 その中には若い女の人が所狭しと座りこんでいた。
 全員の顔には悲壮感が漂い、何人かはこれから自分の身に降りかかる不幸を感じ取って泣く者もいた。
 人攫いのリーダーはその光景を見ながらいやらしく口角を上げる。
「まったく同情するぜ……これからお前たちの境遇を考えるとな……でも安心しろ。お前らが不幸になった分、俺がお前らを売った金で幸せになってやるからよ……ケケケケ!」
 リーダーは甲高く笑い声を上げると、そのまま部屋を後にした。
 部屋に残ったのは悲しさしか含んでいない女性達のすすり泣く声だけだった。



一章 開幕


 コンロンとシャンバラの中間地点にある大きな建物。
 建物の前には校庭のようなだだっ広いグラウンドがあり、その上には機銃が乗った装甲車や飛空艇があちこちに並んでいた。
「よし、準備はいいか?」
 テレジア・ユスティナ・ベルクホーフェン(てれじあゆすてぃな・べるくほーふぇん)
憑依しているマーツェカ・ヴェーツ(まーつぇか・う゛ぇーつ)は隣にいる楊霞に訊ねてくる。
「ええ、ご指示された通りの場所に仕掛けさせていただきました」
 ニッコリと微笑む楊霞が取り出したのはボタンのついた小さな機械だった。
 二人──厳密には三人──は車両から離れ、隠れるように建物の影に隠れると、ためらわずボタンを押すと──グラウンドにあった車両が一気に爆ぜた。
 爆音が轟き楊霞とテレジアの顔に熱風がぶつかり、天に昇って黒煙が伸びていく。
「……これであいつらの逃走方法は無くなった」
「それに事態を把握するためにグラウンドに人が出れば建物に侵入しやすくなる。……まさに一石二鳥の作戦ですね」
 物陰から話しあっていると、建物から続々と男たちが姿を現してくる。
「様子を見て連絡するだけならあんなに人数いらねえだろ……噂以上に警備がザルだな」
「おい貴様ら! そこで何をしている!」
 二人が様子を見ていると、不意に後ろから声が聞こえ、
「っ!」
 楊霞は振り返ると、スカートが翻るのも気にせず男の持っていたアサルトライフルの銃身を回し蹴りの要領で思いっきり蹴っ飛ばした。
「ナイス楊霞!」
 叫ぶなり、テレジアは男の背後に回りこみ首筋にかぎ爪を当てた。
「ひ……た、助け……!」
「喋るな。俺達の質問に答えたら命までは取らないでおいてやる。この誘拐を企てた首謀者の名前を答えろ!」
「し、知らない! 本当に知らないんだ! 取引はリーダーが一人でやるから、俺達は誰が命令してるかなんて知らないんだよ!」
 テレジアは舌打ちをすると、
「じゃあ用はねえよ。寝てろ」
 男に当て身を喰らわせて、男の意識を奪った。
「しょうがねえ、俺達も建物に入るか」
「ええ、そういたしましょう」
 二人は短く会話を交わすと、建物の中に侵入する。