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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 7

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 7

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第12章 情報共有

「それじゃあ、集めた情報を出し合おう。町中での情報を聞きたい」
 一輝は記録用に、銃型HCの電源を入れた。
「僕が調べたのは、乱暴な人やネガティブな人が元々の性格だったのかの調査だよ。周りの人の聞いたら元々は温厚だった人が乱暴な人になっていたりして、初めから暴力的だったりする人は見かけなかったよ」
「性格が変わる前に、何か特別な共通点とかはないみたいだ」
「北都とラルクのほうは、グラッジについての情報だな。他に聞いたことはないか?」
「あぁそうそう、町の風習についてのことだ。この町の海に行って、独りで浜辺にいる女に見つかるとな。そいつに災いが起こるらしい。ぱっと見た感じは暗い雰囲気の女なんだと。で、そいつが“海を楽しむやつらなんて、大嫌い”って言うとな、水のように透明になって消えちまうんだと
「町娘に聞いたことろ、珍しいものは見ていないと言ってましたな。もう1種類の魔性はヒトガタのようですぜ。呪術で人格が変わることはないようですな」
 ガイはラルクの言葉に繋げるように言う。
「わたくしの情報は呪いにかかってしまうと、何もかも上手くいかなくなるってことよ。目覚まし時計が一度に5個全部、故障するとかありえないもの」
 真宵も町娘から聞いたことを話す。
「不幸になってしまった人は、同時期にたくさんいるらしいわ」
 月夜はアクセサリーショップで聞いたことを話した。
「呪いにかけれた者は、不幸が次々と襲ってくるようですわ」
「ワタシのほうは、死ぬような危ない目に遭ったって聞いたよ」
「俺たちは呪いの影響を見たが、死の不幸を招きかねないことがあった。工事中の足場の鉄骨が、対象者へ落ちてしまったら、重傷以上のことになっていた」
 生命の危機ほどではないものとバラつきがあるが、それでも被害者にとっては全て嫌なものなのだ。
「重複しちゃうところがあるけど、ルカが聞いたのは…。海の家の店主さんが友達同士でね、海で遊んでたら“海に入れるやつは皆死ね”って聞こえたらしいの。誰もそんなこと言ってなくって、浜辺のほうを見たら女の人が睨んでて追いかけたら消えてしまったらしいの。見た目は髪が長くって怖い感じの女で、着ている服が水で出来ていそうな感じだったんですって」
「儂は重複している箇所があるため、要点だけを話そう。話に出てくる女は、水のようになっていつでも姿を消せるそうだ」
「今回の相手も、水に関わりのある者…ということでしょうか」
 海に入らないという点を考えると、レイカは淡水の水属性かもしれないと考える。
「確かに。海に入りたくとも入れない、と考えれば海の魔性である確立は低そうだ」
「ん〜…グラッジと正体不明の魔性のつながりが、イマイチ見えないわね」
 ルカルカはエリザベートに聞いてみようと電話をかけた。
「もしもーし、ルカよ。複数の魔性が関わるとしたら、魔性同士にも相性のような物はあるの?」
「人が人同士で好き嫌いがあるように、ありますよぉ〜。多くは利害が一致しているという場合がありますけど」
「じゃあ、今回のはそれがあるってこと?」
「はい〜。皆さんの情報をまとめますと、グラッジは幸福な人を殺したい、正体不明の魔性は海に入って楽しく遊ぶ人を不幸にしたいため〜…。殺すことと不幸にしたいことを合わせて苦しめてやりたい、という考えて協力しているかと思いますぅ〜。不幸な者、明らかに性格が変わってしまった者が、互いの目印になるんでしょうねぇ〜」
 以上の点を考えると互いに利害が一致し、協力し合っているだけなのだろうと説明する。
「お互い同じような考えの魔性が、協力するってことだね」
 ノーンもチーズケーキを食べながら聞く。
「このスイーツ下の層はパイ生地で、チーズケーキとパイの間にチョコがあるよ。ルルディちゃんとビバーチェちゃんも食べてみて」
「いただきます…。私たちが住んでいる場所には、ないものですね…」
「人の食べ物もなかなか美味しいわね」
 こくこくと頷きながら味を確かめる。
「陽太からメールですわ」
「何々?」
「えっと…」

 −合宿2日ですね−

 調子はどうですか?
 こちらの事業は、順調に業績を伸ばしています。

 ノーンたちのほうは、悪い魔性を相手に戦っているんですよね。
 怪我をしないように…、と言いたいところですが、そのような甘いものではないのでしょう。
 ですがあまり無理をせず、頼りたい時はお互いに頼るとよいかと思います。

 余談ですが。
 今日のデザートは、妻が作ってくれたミルフィーユでした。
 抹茶味ですがほのかな甘さが最高でしたよ。
 いつ戻ってくるか分かりませんが、また一緒に食事が出来るとよいですね。

 では、体に気をつけて任務頑張ってください。

 陽太

「わたしもおにーちゃんにメールしたい」
「どんなメールを送るんですの?」
「んとね、お仕事頑張って!って送るの」
 ノーンはスマフォを操作し、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)にメールを送る。
「俺からの報告は、青い髪の魔女さんについてだ」
「誰か分かったのかな?」
「―…それが……オメガさんだったんだ、涼介。浜辺で発見したんだが憑依による毒で、性格がまったく変わってしまってたよ」
「ふむ、どのように?」
「すごく暴力的な感じだったな…。言葉づかいもまったく違ったんだ」
 浜辺でのことを思い出してしまったエースは顔を俯かせた。
「今はどこに…?」
「いや、見失ってしまった」
「魔性たちは相手を苦しめることだ、町の外に出て行くとは考えにくい。捜索すればきっと発見出来るはずだ」
「あぁ……そうだな」
 なんとしてでも見つけ出さなければ、命を奪われかねない。
 しかし、単独でなんか出来るものではないことも現実。
 今すぐにでも探したい気持ちを必死に堪えた。



「ルカのおやつは?」
 ノーンたちが食べているのを見て、ルカルカは金色の瞳を輝かせる。
「今回のスイーツはバナナモンブランオムレットだ」
 ルカルカが“バナナもバナナもー。あとチョコは外せないのー”とリクエストをしたため、今回もババナとチョコの成分が入っている。
「チョコはどこ?」
「ココア生地に、チョコ成分が入ってるぞ」
「クリームはマロンなのね。うにゃ〜ん、甘い♪クマラは食べないのかな?」
「重傷らしい、精神的な面で」
「ぅーん…、食べなきゃ元気になれないよ。しょぼぼーんじゃ再会した時、元気に笑えないもん」
 オムレットを食べながら机の上に突っ伏しているクマラを見る。
「エリザベートはこっちこないのかな?」
「所要で忙しいんだろう。一応、立場上は教師だからな」
「じゃあコレはルカが…」
「残念だが、人にあげるものだ」
 食べられようとしてるオムレットを、ひょいっと奪い返す。
「エリザベートはいないが一緒に食べないか、明日香」
「はい、いただきます。んー…エリザベートちゃんと一緒におやつできないなんて、寂しいですね」
「向こうも我慢しているんだろう」
「エリザベートちゃんからメールが…」
 メールには“画面で見てましたけど、あまり無茶なことはしないでくださいねぇ?新婚早々、明日香に何かあったら悲しいですぅ〜。あと〜事件が終わったら、ちょこっとだけ買い物にいきたいですぅ〜”と書いてあった。
「なんて送ってきたんだ?」
「えっと、心配ごととプライベートな事情です」
 明日香は嬉しそうに微笑み携帯を閉じた。



「正体不明の魔性について、いろいろ分かったところですし。ちょっと訊ねてみましょう。…わたくしですわ、カメラを通して見ていたでしょうけど、正体不明の魔性は浜辺に出現するという認識でよろしいですの?」
 エリシアはパソコンのボイスチャットでラスコットに問いかける。
「海に対して執着心があるようだからそうだね」
「コレは、ヒトガタですの?」
「人のような姿を模っている、水の魔性だね。これは海に入れないはずだけど」
「入りたくとも入れない…ということですわね」
「そうだね。この魔性はニクシーといって、海岸側に好んで姿を現して、水の中で泳いでいる者を溺れさせることがあるよ」
「今回はそれがないと?」
 海に執着して離れないという点で、湧き水場のような場には現れないのか確かめる。
「この町にいるのは、砂浜辺りにしか姿を見せないと思うよ」
「溺れさせる…ということは、呪い以外にも何か術を使う可能性があるんですの?」
「魔性自身と同じ姿の水人形作って、引きずり込もうとてくるやつだね。可視にも不可視にもなれる魔性だけど、物理的質量がないから触れられないよ」
「物理攻撃及び、通常のスキルは効果がないと?」
「うん、ないね。グラッジと違って憑依はしないけど、本物じゃない水人形の分身を破壊すると体力を奪われてしまうんだ」
「判別する手段はありますの?」
「本物はアークソウルで生命体として探知出来るよ。殺気看破じゃ反応がかなり遅れるから厳しいかな。他にも氷結属性の魔法を使ってくるはずだから気をつけてね」
「なるほど。では実戦に戻りますわ。…ということですの」
 仲間の顔を順番に見て、理解出来たか確認する。
「―…口頭ですが、覚えておいたほうがよいですわ」
「リストにある半分ほど遂行されたが、まだ被害者は存在する。ただ、説得するにも悪事を止めさせることだけを考えたほうよい」
 共存うんぬんは二の次だと和輝が告げる。
「一番大事なことは死者を出さないことだ。それが出てしまったら、こちらも相応の手段を考えなければならない」
「その前に止めなければいけないということですね。ですが命を取る攻撃は、同じものが返ってきてしまいますよ」
「神代の言うことも一理ある。ゆえに、どうするべきか各々考えておくべきだろう。…悪い循環に流れないためにもな」
「言葉を理解出来るということは、言葉による説得も必要不可欠ですね。日が傾いてきてますから、宿屋前で準備が終わったら集合いたしましょう。…では後ほど」
 明日香はそう告げると部屋を出る。
 各々、夕闇の戦いに向けて準備に入った。

担当マスターより

▼担当マスター

按条境一

▼マスターコメント

長くお待たせしてしまい、大変申し訳ありませんでした。
次回は、臨海合宿・後編となります。
昇格の称号は、後編でも配布させていただきます。

今回、魔道具の能力が上昇した方々、アイデア術について、下記に記載いしました。

●敬称略

■ミリィ・フォレスト
・ホーリーソウルI
憑依メンタル治療:軽症の者を素早く治癒する。

・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲15mに拡大。

■エルデネスト・ヴァッサゴー
・ホーリーソウルI
憑依メンタル治療:軽症の者を素早く治癒する。

■涼介・フォレスト
・ホーリーソウルII
憑依メンタル治療、呪術の解除:精神を蝕まれた軽症の状態、呪術にかかった者の治療を同時に行える。

■ルイーザ・レイシュタイン
・ホーリーソウルII
憑依メンタル治療、呪術の解除:精神を蝕まれた軽症の状態、呪術にかかった者の治療を同時に行える。

■ベルク・ウェルナート
・ホーリーソウルII
憑依メンタル治療、呪術の解除:精神を蝕まれた軽症の状態、呪術にかかった者の治療を同時に行える。

■アニス・パラス
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲15mに拡大。

■日堂 真宵
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲20mに拡大。

■フレデリカ・レヴィ
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲20mに拡大。

■スクリプト・ヴィルフリーゼ
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲20mに拡大。

■セレンフィリティ・シャーレット
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲20mに拡大。

■佐々木 弥十郎
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲25mに拡大。

■レイカ・スオウ
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲25mに拡大。

■ルカルカ・ルー
・哀切の章I
精神力の消耗軽減:術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲10mの距離。
範囲を広げるためには、相応の精神力を消耗。

・裁きの章I
精神力の消耗軽減:術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲10mの距離。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。

■ダリル・ガイザック
・哀切の章I
精神力の消耗軽減:術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲10mの距離。
範囲を広げるためには、相応の精神力を消耗。

・裁きの章I
精神力の消耗軽減:術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲10mの距離。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。

■カルキノス・シュトロエンデ
・哀切の章I
精神力の消耗軽減:術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲10mの距離。
範囲を広げるためには、相応の精神力を消耗。

・裁きの章I
精神力の消耗軽減:術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲10mの距離。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。

■夏侯 淵
・哀切の章I
精神力の消耗軽減:術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲10mの距離。
範囲を広げるためには、相応の精神力を消耗。

・裁きの章I
精神力の消耗軽減:術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲10mの距離。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。



■術名:レイン・オブ・ペネトレーション/和名:見抜き通す雨

メンバー:七枷 陣/ジュディ・ディライド/仲瀬 磁楠/遠野 歌菜
     月崎 羽純/カティヤ・セラート(計6名)

・魔道具
ハイリヒ・バイベル:裁きの章
エレメンタルケイジ:エアロソウルLvI/アークソウルLvI

・効力
半径25メートル範囲で、機械に憑くような魔性の魔法防御力を、一定時間下げる。
メンバー内の術者が得る効果:
エアロソウルLvI・アークソウルLvIがなくとも、その効力を得ることが出来る。
メンバー以外の仲間の効果:
はっきとは見えないが不可視の魔性を見ることが出来る。


一部の方に、称号をお送りしました。

それではまた次回、シナリオでお会いできる日を楽しみにお待ちしております。