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合同戦闘訓練 ~市街戦~

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合同戦闘訓練 ~市街戦~

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 1章 10時〜13時


『よし。Bチームの拠点を確定できたな』
『にひひ〜っ、アニスの警戒網からは逃げられないのだ〜♪』
 訓練施設北東部ビル群。
 その中のビルとビルの間の小さな路地で、佐野 和輝(さの・かずき)アニス・パラス(あにす・ぱらす)の2人は情報収集に勤しんでいた。
 そして、敵チームの拠点を発見したのだった。
 具体的な方法としては、アニスの【殺気看破】【ディレクトエビル】で、とあるビルに複数人の反応を感知。佐野の【戦闘用イコブラ】の映像で、敵の姿を確認、という感じである。
『さて、アニス、俺はこの情報を【テレパシー】で味方に伝える。警戒しておいてくれ』
『あ〜……、警戒する必要はないかも』
『?』
 佐野が疑問に思ったのもつかの間。
 ゴガァッ!! と2人の元に雷が降り注いだ。
 アニスは、反応に遅れた佐野の服を引っ張って避けようとするが、遅かったようで、二人共それぞれ一つずつバルーンが割れる。
『うぉッ! くそっ! 警戒する必要はないって、そういうことか! もう見つかってたのか!』
『みたいだね〜。これはちょっちマズいんじゃないかな』
 2人の目線の先には、3人の少女(?)、神崎 輝(かんざき・ひかる)レナ・メタファンタジア(れな・めたふぁんたじあ)神崎 瑠奈(かんざき・るな)がいた。
『諜報してたのかな? それなら情報をまわされる前に止めてやる!』
 レナが叫ぶ。
 それを見て佐野は、
『2対3はきついな。バルーンも割られたしな。逃げるぞ』
『合点!』
 2人は、分が悪いと判断したようで、即座に逃走に移った。
 路地の奥へ突き進む。
『あッ! 待てェ!』
 輝たちも後を追おうとする。
 しかし、
『行かせませんわッ!』
 と、ジュンコ・シラー(じゅんこ・しらー)マリア・フローレンス(まりあ・ふろーれんす)永井 託(ながい・たく)の3人がどこからか現れ、その行く手を阻んだ。
『佐野さんたちは、情報伝達を優先して下さい! ここはわたくしたちが預かります!』
 ジュンコが佐野らに叫ぶ。それに対し佐野は、
『了解! あんたらも頑張れよ!』
 と、言い残し、逃げて行った。
『むぅ〜、ボクたちの情報が相手に伝わるのは防がなきゃね。突破させてもらうよ!』
『それをさせない為にわたくしたちが来たのですよ!』
 ジュンコとマリアは叫び、攻撃に移る。
(ここは道自体が狭いし、エアコンの室外機などがあって移動が困難。ならば、障害物を盾にして攻撃! そして隙ができたら永井さん! お願いします!)
 ジュンコとマリアは近くの障害物に身を隠し、それぞれ銃と魔法を撃ち込む。
 それに対し、輝たちは。
(片方の女の人の拳銃は回転式拳銃。再装填に時間がかかる。弾切れになったところを突くのがセオリーなんだろうけど、もう一人が再装填中に魔法を撃ち込んでくる。これじゃ隙がないし近づけない。どうしたもんですかね)
 などと、輝がごちゃごちゃと考えていると。
『むぅ、近づけないな。よし! 輝! ちゃんと防御しといてよ?』
『うん? レナ何する気?』
『いひひ〜。【六連ミサイルポッド】! ここなら狭いし、多少外しても爆風や破片でバルーンくらい割れるでしょ!』
『え? いやちょっとまってレナ!?』
『いっけぇ〜☆』
 レナが撃ったミサイルはジュンコたちの隠れている室外機に着弾。
 ドゴォ!! という轟音が響く。
 そして同時に。
 とてつもない爆風と硝煙が、路地いっぱいにたちこめる。
 爆風は周囲の壁や物を削り取り、それが凶器となり、ジュンコとマリアに襲いかかった。
『くぅっ!!』
 結局、着弾点に近かった、ジュンコとマリアは2人共バルーンを割られ、リタイアとなった。
 しかし。
 爆風と煙は彼女たちでだけはなく、輝たちにも襲いかかる。
『けほっ! うぅ……、だから言ったのに……。狭いんだから爆風はこっちにも来るし、爆風は盾でなんとかできても煙が……』
『ありゃ。考えてなかった。ごめん、輝』
『いや、それより警戒して。この煙で視界は無しに等しい。まだ生き残りがいるかもですよ。奇襲されかねませ――…』
『そうそう。こんな風にねぇ』
『―ッ!?』
 輝が声に反応し、後ろを振り返った時に目にしたものは。
 2つのバルーンを割られたレナと瑠奈、そして、自分に突っ込んでくる永井の姿だった。
『しまっ……』
 咄嗟に身構えるが、遅い。
 気づけば、輝のバルーンも2つとも割られていた。
『やってくれたねぇ。ジュンコさんとマリアさんはやられちゃったよ。僕も【イナンナの加護】と【行動予測】が無かったらやられてたところだ』
 永井は一息ついて。
『さて。さっきのは分身か何かだったか。出て来なよ』
 言った瞬間。
 やられたはずの瑠奈が煙から飛び出し、永井に特攻する。
『にゃー。ばれてたか〜』
『やれやれだよ。やっぱりか』
 永井は2つのチャクラムを投げつける。しかし、簡単にはじかれてしまう。
『にゃー。この程度ではボクは倒せない…よっ!』
 瑠奈は鉤爪【建御雷】で永井に切りかかる。
 永井はそれをかわしながら体術で応戦した。
(むぅ。【ゴッドスピード】で体術の速度を上げてるんだけどなぁ。それでも当たらないか。ならッ! さらに手数を増やす!)
 永井は一旦距離をとり、
『降霊【嵐のフラワシ】!』
 永井の側に聖霊が出現し、瑠奈に向かって突撃する。
『にゃ!? このッ!』
 瑠奈は聖霊の攻撃をかわし、受ける。だが、
『僕も忘れないでほしいな』
 さらに永井自身の攻撃も加わる。
『!? くっ…!』
 瑠奈は攻撃に耐えるが。
 結局、力尽き、バルーンを割られてしまった。
『にゃ〜。残念。全滅かぁ〜』
 瑠奈は悔しそうに言う。
『いやぁ。僕も楽しかったよ。……ん!』
『?』
『新手かな?』
 永井の視線の先には、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)がいた。
 しかし、紫月は、何もせず、すぐにその場を去った。
(偵察か? 今の戦闘を見られてたか。しまったな。手の内を全て明かしてしまった。対策を練られるかもしれない)
『でも、ま、面白くなりそうだからいいか♪』
『お兄さん? 誰かいたの?』
『ん、あぁ。ちょっと僕の方が偵察されてたみたいだね。まぁいいさ。さて、さっきの諜報組は無事かな?』

   ■   ■   ■

『よし』
 カル・カルカー(かる・かるかー)の視線の先には、佐野とアニスの2人がいる。
 そしてたった今、カルは彼らのバルーンを割り、リタイアに追い込んだところだ。
 方法としては、佐野たちを発見し、【隠れ身】身を隠しながらで近づき、隙ができた時に【ブラインドナイブス】を利用して【スリング】で石を飛ばし、バルーンを割るという方法。
 【スリング】なら銃と違い、音が出ない。自分の居場所を特定されることなく、自分の存在も悟られることなく攻撃できる。
 さらに、何かあればすぐ逃走できるように準備し、常に生き残ることを優先していた。
 【勝つ】ことではなく【負けない】ことを優先する。
 彼はこの訓練で最も重要な、【生き残ること】を理解していた。
 カルは遠目から佐野たちのリタイアを確認したあと、居場所を特定されない為にすぐにその場を離れた。
 だが、カルは一つ失敗を犯した。
 それは、時間をかけすぎたことだ。
 彼は、確実に仕留める隙ができるまでのかなりの時間、付け回した。
 それだけ時間があれば、佐野の優先事項である【テレパシー】での情報伝達は容易に達成できる。
 つまり。
 時間をかけたおかげで2人を仕留めることはできたが、拠点の情報のリークを阻止することには失敗していたのだった。
 カルはそんなことは露知らず。
 次のターゲットを探しに、市街を駆けていった。

   ■   ■   ■

『10時から13時までのリタイア数を報告します
 
 A:佐野
   アニス
   ジュンコ
   マリア
   計4名

 B:輝
   レナ
   瑠奈
   計3名

 以上』