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ガラクタ屋敷攻略大作戦!

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ガラクタ屋敷攻略大作戦!

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「これは体験からの推測なのだけど、佐那具君の蒐集癖、過去に何か原因があるんじゃないかしら?」
 イーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)は書類を手に、佐那具に聞いた。
「過去、ですか?」
「ええ。蒐集癖って寂しさとか人恋しさを紛らわすためってところがあるらしいのよ。……私も親を亡くした後、研究所の人を苦労させたわ。何でも集めて離さなくて……それが高じて研究者になっちゃったのだけど。まあ、今となっては過去の話ね」
「あれ?過去って言うか今でしょ?現在進行形よね、この隠れイコプラオタクは」
 傍でイーリャの話を聞いていたジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)は何とはなしに言った。
 途端、イーリャは「え、な、なんのことかしら!?」としどろもどろになる。
「げ、現在進行形とか言わないの。部屋に積んでるイコプラはいつか組むんだから!」
「えー、極東新大陸研究所の研究室に積まれたイコプラの箱数、言ってほしい?第一世代が……」
「きゃー!ちょ、ちょっとここでそんなこと言わないでよ!」
「第二世代が……」
「もー、わかったわよ!後で好きなの買ってあげるから……」
「第三世代その他限定レアもの、ガレキもあわせりゃ全部でひゃくは……むぐぐ」
「もういいわ、このまま口塞いでてあげるから……!」
 イーリャはもごもごと何か(余計なことを)喋ろうとするジヴァの口を押さえつける。
 しかし、それで彼女が身が守られたわけではなかった。
「まだ甘いですよ失敗作!」
 唐突にドアを開けて部屋の中に突入してきたヴァディーシャ・アカーシ(う゛ぁでぃーしゃ・あかーし)は叫ぶように言う。
「ボクは知ってるです、ママが研究室にも隠し切れなくて貸倉庫まで借りてることをです……もうイコプラ博物館が開けるくらいの数があるですよ……」
「ちょ、ヴァディーシャ!あなた片付けは!?」
「なんだか面白そうな空気を感じたですので、中断してきたのです!」
「あなたねぇ……」
 頭痛に見舞われたようにイーリャは頭を抑える。
 もう佐那具と依那子もぽかん、と3人のコントのような掛け合いを見ているしかできなかった。
「もういいわ……とにかく、案外佐那具君の蒐集癖を治すカギは依那子ちゃんにあるのかもしれないわよ?」
 気を取り直して講義を再開するイーリャ。
 いきなり真面目へと変わった空気に依那子は戸惑いながら「私ですか?」と聞いた。
「そうよ。佐那具君がメカにこだわる理由、ガラクタを集める理由、もうちょっと突っ込んで聞いてみたらどうかしら?ふたりっきりで身の上話なんてしてみるといいかもしれないわね」
 こうしてイーリャは講義を終了した。
 そして、
「まったく2人とも、口だけは達者なんだから……」
 彼女はパワードスーツを装着して片付けに向かう。
 その目前にはヴァディーシャの乗り込むイコンイーグリットIIIが不用品を抱きかかえる形で家の敷地を出ようとしていた。
 その先には広い道路を利用して着陸していたローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)の大型イコン応龍弐式【爆撃型】が搬入口を開けて待機している。
「オーライ、オーライ!」
 ローグは手を振ってヴァディーシャのイーグリットIIIを誘導する。
「お願いしますですー」
 ヴァディーシャは誘導に従い、格納庫の一角に不用品の山を置いた。
「しかし、よくもまぁ此処まで溜め込んだもんだ」
 再び不用品を取りに行ったイーグリットIIIが去ると、ローグは関心したように言った。
「俺からしてみると、なんでいつまでもこんなの溜め込むのかまったく理解できないな」
「人それぞれ、ということではないのか?」
 コアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)は唐突に不用品の山から顔を出し、ローグの言葉に応えた。
「我らギフトにも色々いるのでな」
「そんなもんかねぇ……ところで」
 ローグはじたばたと不用品の山から出ようとしているコアトルの胴体を掴むと、思いっきり引きずり出しながら聞いた。
「おまえさん、なんでこんなとこにいるんだ?下手すると一緒に捨てられちまうぞ」
「いやな、我も少しは片づけを手伝おうと思ったのだが……」
 そもそも手も足もないコアトルは、なんとか不用品を押して廃棄場所に持って行こうとしたらしい。
 しかし……。
「どうやら、ガラクタと間違われたらしいのだ。気づけばイコンの手に掴まされ、此処まで来たというわけだよ」
「おいおい……」
 妙に冷静なコアトルにローグは苦笑いを浮かべるのであった。
 と、
「わー、いっぱい集まったねぇ!」
 格納庫の奥から楽しげな声をあげてフルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)があらわれた。
「これならイコン用に色々使えそうだね」
 瞳を輝かせながら不用品を見る彼女に、ローグは心配げに「おい」と声をかけた。
「まさかこれ、持って帰るつもりじゃないだろうな?」
「あたりまえだよ。ボクだってイコン乗りとして機械工作は得意なんだから、ジャンクだって有効活用できるんだよ」
「おまえのことだからそれはいいんだが……どこに置くんだ?」
「え、ローグの家に決まってるじゃない」
 何を今更、とでも言うようにフルーネは言う。
「……俺はガラクタ屋敷に住む気はないぞ」
「大丈夫だよ。ボクだって自宅をガラクタ屋敷にするつもりはないし、この中から『本当に』使えそうなものしか貰わないもん」
「ならいいんだがな……ま、ここは頼んだぜフルーネ。俺はちょっとブリッジに行ってくる」
「わかったー」
 そうしてローグは格納庫を後にする。
 通路に抜ける直前、
「んー、これは分解すれば使えるかな……あ、これも……あれも使えそうだね。コアトル、ちょっと手伝ってー」
「……おぬし、やはり片っ端から貰う気ではないだろうな?」
 なにやら彼を不安にさせるような会話が聞こえてくるのであった。
 ブリッジに着いたローグは計器のチェックをしているユーノ・フェルクレーフ(ゆーの・ふぇるくれーふ)に「お疲れさん」と声をかけた。
「あ、お疲れ様ですローグ」
「ようユーノ。もうこれだけ積んだんだが……」
 そう言って彼はこれまで積んだ不用品の重量を図ったメモを渡す。
「そろそろ一杯か?」
「そうですね……あまり積みすぎると操縦に支障をきたしかねませんし……」
 ユーノは応龍弐式のスペックを確認する。
 積載限界量と積んだ不用品の重量を見定めると、彼女は「うーん」と唸り声をあげる。
「やっぱり頃合ですね。一度業者さんに引き渡しましょう」
「了解。長曽禰中佐に伝えてくるわ」
「わかりました。私はみなさんと一緒に起動準備をしておきます」
 こうしてユーノの操縦の元、不用品を大量に積んだ応龍弐式は飛び立っていった。
 機体が空の彼方へ見えなくなる。
 そして次の瞬間、もう1つの機影が近づいてくるのが片付けに参加した者たちの目に入った。
 上空を滑るように飛行するのは浮遊要塞。
 伊勢であった。
 そのままずんずんと近づいてくると……、
「うわぁ!?」
「な、なんだ!!??」
 エンジンにより激しい轟音と突風、そして激しい振動が住宅街を襲う。伊勢は地面スレスレでホバリングするように停止するのであった。
「おいおい、なんだ!どうした!?」
 広明は慌てて家の外に飛び出す。
 そして同時に一本のロープが伊勢から垂れ下がったと思うと、ひとりの女性が降下してきた。
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)である。
 彼女は涼しい顔で広明に敬礼すると、
「これで一気に運んだ方が早いであります」
 不用品の運搬に手を貸すのであった。
「インパクトが大きいにしても限度ってものが……ねぇ?」
 吹雪のパートナーであるコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)は苦い顔をしながら、作業員達と共に不用品を伊勢の中へ積み込んでいった。
 格納庫へ次々と不用品を積んでいく彼女であったが、
「あれ、こんなコンテナあったっけ……?」
 ふと、妙な位置に複数のコンテナが置かれているのが目に入った。
 まるで他と隔離するように置かれているコンテナのうちひとつの扉を開けると、
「……なにこれ?」
 中には大量のガラクタが積まれていた。
「これって業者に持っていくもの……よね?なんでここに?」
 不思議に思っていると、背後から「あっ」という声が聞こえてきた。
 振り返ると、そこには澄ました表情を見せる吹雪がいた。
「ちょうどよかった。ねえ吹雪、このコンテナってなんでここ……に……」
 言って、気づく。
 吹雪はいくつかのガラクタを手に持っていた。
「あーいや、そのでありますね……」
 妙にあたふたとした彼女の様子に、コルセアは「ねぇ」と声をかけた。
「そのガラクタさ、どうする気?」
「こ、このコンテナに積む気だってあります……よ?」
 そう言いつつ口笛を吹きながらどこか他所を見ている吹雪であった。
 しかし次の瞬間、
「すいません吹雪さん!ガラクタの量が思ったより多くてこれ以上持ち帰り用にコンテナを割くことができないんですけど……」
 コンテナの外から伊勢の乗組員が声をかけた。
「ちょ、ちょっと吹雪!あなた『持ち帰り用』ってどういうことよ!?」
 コルセアは吹雪の肩を掴んでまくし立てる。
「も、持ち帰りは持ち帰りでありますー!」
 ガクガクと揺さぶられながら吹雪は白状する。
 彼女は業者に持っていく不用品を入れたコンテナとは別に、ガラクタお持ち帰り用のコンテナをこしらえていたのであった。
 コルセアは頭痛に見舞われたように頭を抑え、ため息をつく。
「まったく、自宅を新たなガラクタ屋敷にするつもり?こんな大量のガラクタ置く場所なんて……」
 言って吹雪を見返す。
 すでに吹雪は持ってきたガラクタを持ち帰り用コンテナに積み込み、さらにガラクタを入手しようと出て行こうとしていたのであった。
「待ちなさい吹雪!だからガラクタもって帰ろうとしないの!!」