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第1章 授業の前に免許チェックですねぇ♪
祓魔師の強化合宿を終え、魔法学校に帰還したエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)は校長室のテーブルの上にパソコンを置いて起動する。
「ふむふむ…」
現場での生徒たちの活躍を小型カメラで録画したデータを、パソコンに保存して映像を眺める。
「被害者の救助については、報告してもらいましたからぁ問題ないとして。これを見る限り、魔性はあの町で悪いことをしないはずですぅ。…あっ!もうこんな時間ですかぁ〜」
ふとパソコンの時間を見ると、授業開始の時刻が迫っていた。
特別訓練教室の前では、早くも生徒たちが扉の前で教師を待っている。
「先生!きちんと忘れずに持ってきたのですよ」
ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント(べりーとえろひむ・ざてすためんと)はエクソシスト免許を、ラスコット・アリベルト(らすこっと・ありべると)に堂々と見せる。
「1時間はもちろん、次の時間はとても重要なのでチャイムが鳴るまでいますからね!」
「いつになく燃えてるね」
「はいっ。今回はテスタメントたちが考えた章が、使えるようになるかもしれないのですから。ではお先に、教室へ入らせていただきますっ。ほら真宵、早く入ってください」
そう告げるとパートナーの背を押し、教室へ入っていく。
「この免許を見せればよいのですか…」
「きみも参加するんだったね?うん、ちゃんと持ってきてるね」
「これが…教室というものなんですの…?」
教室に入ると観光巡りや本でも見たことがない光景が広がった。
「やっほーオメガちゃん。スペルブックのことで分からないことがあったら、オイラに聞いてよ!」
クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)は友達の手をきゅっと握り、駆け込んでいく。
「お〜い、免許見せたのか?」
「もう見せたにゃんっ」
大はしゃぎしながら告げる少年に、パートナーは“いつの間に…”と小さな声音で呟いた。
「私も免許の所持チェックするですぅ〜♪あれれ〜、淵さん。そんな顔してどうしたんですかぁ?」
パソコンを手に訓練教室へやってきたエリザベートの瞳に、クマラに先を越されて若干ムッとした顔をする夏侯 淵(かこう・えん)の姿が映る。
「―…あ、いや…なんでもない」
校長の存在に気づいた淵が免許を見せる。
「確認しましたぁ。今日もいっぱい学んでいってくださいねぇ♪」
「(くっ…。こうなったら、オメガ殿の隣は誰にもゆずらぬっ)」
彼女の隣をキープしようと教室内に目を向ける淵に、元気に告げるエリザベートの声すらもすでに耳に入らなかった。
「ルカも持ってきたよ」
「はい♪」
「ていうか淵怖っ。ルカが隣とっちゃったら、突き飛ばされちゃうかな?」
言葉ではそう言いつつも、可笑しそうにパートナーを見つめる。
「よお、隣空いてるか?」
空気を読んでいないのか、あえてからかうためなのか。
カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が隣に座ろうとする。
―…が、殺気立つ淵に押し退けられ、鋭い眼光で睨みつけられた。
「じょ、冗談だって。そんな顔すんなよ」
彼が“ずっと狙っていた隣”を譲ってやり、どっかりと後ろの席へ座った。
「なんだ淵、遠慮なく座れって。そこがいいんだろ?」
ガッチガチに緊張している淵の姿に、顔をニヤつかせながら言う。
「…〜ぇっと、―…ぁ……、その…っ。オメガ殿、隣……良いか?」
「さっき、カルキノスさんに聞かれましたが」
「あー、俺はやっぱいいや。淵にブチキレられそうだったしなぁ」
「え…?」
「そ、そのようなことはっ」
余計な一言にムッとしながらも、しっかりとオメガ・ヤーウェ(おめが・やーうぇ)の隣を確保した。
「ルカはオメガさんの前にしようかな♪」
授業中の会話のことを考えて席をチョイスし、メモ用のノートやシャーペンをテーブルに並べる。
「オメガ・ヤーウェ、お久しぶり。ハロウィンパーティー以来でしたわね?」
見慣れた顔を発見したエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は足を止める。
「えぇ、来ていただいてありがとうございました」
「祓魔術を学ぶ者同士、共に頑張りましょう。わたくしとノーンは向こうの席にいますわ」
にっこりと笑を向け、挨拶をすませると踵を返す。
「ねぇーねぇー。オメガちゃんは本と使い魔とペンダント、何にするか決めてる?」
「いいえ、まだ決めてませんわ」
「そっか!分からないことがあったら、オイラに聞いて。ハイリヒ・バイベルのこと教えてあげるにゃんっ」
「ありがとうございます」
「自分が良いなって思う物を、じっくり考えて決めるといいよ?」
エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)はクマラの小柄な体を持ち上げて退かし、オメガにガーベラのミニブーケを渡して激励する。
「魔物だからって痛い目にあわせたり来る歳目に遭わせたりして祓うのはやりたくないからね、俺の場合」
「わたくしに…?とてもキレイですわね」
「エースさんは何の魔道具を使っているんですの?」
「前はクマラと同じハイリヒ・バイベルだったよ。今日は木の聖杯を使って、使い魔を呼び出す予定だよ」
持ってきたニュンフェグラールをオメガに見せる。
「実技で方法を見せてあげるから覚えてね」
「はい、見学させてもらいますわ」
オメガは筆記用具をテーブルに並べ、にっこりと微笑む。
「…ほら、ヴェルレク、こっち来なさいよっ!」
嫌がるヴェルディー作曲 レクイエム(う゛ぇるでぃさっきょく・れくいえむ)の背を押し教室へ入る。
「ちょっとセシル、何でアタシがここに来なきゃいけないのよっ!」
セシリア・ノーバディ(せしりあ・のおばでぃ)によって、強引に連れてこられた彼が怒鳴る。
「お、ツェツェ。やっぱり来たか」
「やほー、タイチ、元気にしてたぁ?」
「何言ってんだ、ほぼ数日ぶりだろ」
「え、あれ?そうだっけ。まぁ、どーでもいいじゃないそんなこと」
細かいことは気にしない!という態度で、元気な笑顔を見せる。
「…ねぇセシル、このむさ苦しい男。…アンタと同じように、未来から来たとかいったりしないわよねぇ」
「ん?…そのまさかだったりして〜♪しかも同じ未来なんだな〜これが♪」
「…ベタすぎて、返す言葉がないわ」
“同じ未来から来て同じ時代に来ただけじゃなく、同じ学び場に突撃とか。どんだけ縁繋がってんのよ、繋がりすぎよ!キモッ、キモイわッ!”と不快そうな顔をする。
「あ、タイチのお父さんお母さん、お久しぶりです!」
「―…おや?小娘か…それとそっちは…」
林田 樹(はやしだ・いつき)は眉を眉間に寄せ、ヴェルディーに警戒の眼差しを向ける。
「…何の用ですか、先生の所の魔道書さん」
「あ、親父、お袋。オカ魔道書なら大丈夫、俺たちの未来では味方だったから。…って、この呼び方は禁句だった。―…イテッ!?」
“それは秘密!”とセシリアに小声で言われ、脇腹へ肘鉄をくらう。
「オカ魔道書?…言い得て妙だが…今はそれどころではないな」
「そぉんなに警戒しなくても、アタシは大丈夫よ。良くも悪くもアタシは中立なの。…今回はセシルに強引に引っ張ってこられただけだから」
「パパーイからメールが来ました!これで何かしようとか思ってないこと、分かってくれました?」
樹と章の警戒心を解こうとセシリアは、アルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)からの証拠のメールを見せる。
-授業、頑張ってますか?-
『本日は、成績判定会議で遅くなります。
準備して貰った、生物の粗点データは確認させて貰いましたよ。
今回はヴェルも参加していると聞きました。
彼は初心者なので、色々と無理はさせないで下さいね。Alt』
「これで分かってもらえました?ヴェルレクにも、祓魔術を学んでもらおうと連れてきただけなんです」
「フン、まぁいい。今は、ここで騒ぎを起こすわけにはいかないからな。だが、私たちから把握しやすい位置にいてもらおうか」
「はいはい。わかったわよ」
めんどくさそうに返事をしたヴェルディーは指定された席へ座る。
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