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【琥珀の眠り姫】水没する遺跡に挑め!

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【琥珀の眠り姫】水没する遺跡に挑め!

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第一章 遺跡を調査せよ!

 パラミタ内海の沿岸、干潮時のみに洗われるその洞窟の奥に、石造りの遺跡があった。
 五千年前のヴァルトラウテ家の屋敷は長年の水の浸食にも関わらず、屋敷としての最低限の形はしっかりと保っている。
「でも、お宝がなかなか見つからないでありますね」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は屋敷の玄関近くの一室で、崩れ散らばる木々の破片を一つ一つめくりながら呟く。
 吹雪たちは他の皆より先行して遺跡に入り調査をしていたが、五千年という時の流れと海水の浸食によって、家具の大部分は原型をとどめていなかった。
「隠しておきたいお宝は、もっと奥の部屋にあるかもしれないのだよ」
 イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)が無数の足で木切れの合間を器用に漁りながら答える。
「そうかもしれないわ。聞いたところによると、この遺跡は……」
 コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が一歩を踏み出し、床の出っ張りをカチ、と踏んだ瞬間。
 地響きと共に、警告音のような轟音が鳴り響いた。
「な、何でありますか?!」
 咄嗟に地に伏せた吹雪が声を上げる。
「この屋敷、トレーニングのためにトラップだらけになっているんだとか!!」
 蘊蓄を語るというより叫びながら、コルセアがはっと頭上を見た。
「て、天井が下がってくるのだよ!!」
 イングラハムの言葉に、扉目掛けて部屋を駆け抜ける吹雪たち。

「早く、こっちに!」
 三人の耳に、誰かの声が聞こえた。三人は無我夢中で部屋から飛び出した。
 ずん、と鈍い音を立てて、三人の背後に天井が落ちた音がした。
「大丈夫?」
 三人を心配そうに見つめながら、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が訊ねる。
「どうにか助かったであります……」
 吹雪は、汗を拭うように額に手をおいた。
「それにしても、ノーン様はどうしてこの部屋に向かったのですか?」
 御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が首をひねる。
「うーん? 何となくこっちに向かった方が良いような気がしたから?」
「さすが、素晴らしい勘ですわね」
 ノーンの言葉に、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が感心したように何度も頷いた。
「もうこの付近の調査は終わったのでありますか?」
 そう訊ねて、吹雪は辺りをきょろきょろと見回した。危ない目にはあったものの、まだお宝を諦めてはいない様子だ。
「この辺りの調査は一通り終わりましたね。どの家具も完全に壊れていて特に何も見つかりませんでしたけど」
 舞花の言葉を聞いたイングラハムが、浮いている高度がくっとを落とした。
「この部屋もマッピングも完了したわ」
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)が近くの部屋から出てきた。舞花とさゆみは、お互いがマッピングしたデータを総合する。
「よし、この情報を調査に参加している皆に流したら、後は奥に進むだけね!」
「そっちはさっき調査してきた来た道だよ!!」
 玄関に向かって逆走し始めたさゆみに、慌ててノーンが突っ込む。
 その瞬間。廊下の左右で対になるように設置されていた二体のガーゴイルが、動き出した。
「これは……戦うしかなさそうね……」
 コルセアがイレイザーキャノンを構えながらじりじりと後ずさる。
「わたくしの出番ですわね」
 エリシアはそう言うなり、動き始めたばかりのガーゴイル一体に目掛けて魔導銃から縦断を放った。
 翼を打ち抜かれたバランスを崩したガーゴイル目掛けて、パンドラソードを構えたイングラハムが目にも留まらぬ速度で斬りつける。
「タイムリミットもあるし、さっさと片付けた方がよさそうね」
 フロンティアソードに爆炎を纏わせると、さゆみはもう一体のガーゴイルを牽制するように剣を構えた。
「こちらは任せて下さい!」
 そう言って、さゆみは牽制していたガーゴイルに二連の斬撃を放った。
 後方から吹雪とコルセアの放った銃弾が、ガーゴイルたちを着実に弱らせる。
 皆が二体のガーゴイルの気を引きつけている間に、エリシアの腕を黒い炎が覆った。
「これでとどめですわよ!!」
 腕の黒い炎は渦を巻いて具現化し、ガーゴイルたちを飲み込んだ。その隙に、一団は廊下を駆け抜けて屋敷の奥へと抜けていったのだった。

「本当に、至る所にトラップがあるのでありますね」
 吹雪が辺りを見回しながら呟く。
「とはいえ、お宝を守っているわけでもないのであろう」
 イングラハムは周囲を見回し、例によってほとんど崩れ落ちている調度品を眺めながら呟く。
 と、皆の小型端末にメールが届いた。
「キロっちからメールだね。どうする? 全員分の状況まとめて報告しておく?」
 ノーンが端末の画面を見ながら呟く。
「さっきのマッピングのデータと合わせて、報告しておきますね。データは暗号化しておきますので、傍受されても心配はないと思います」
 そう言って、舞花が一団の状況を打ち込み始めた。
「他の人たちは無事なのかな」
 遠くで時折聞こえる爆発音を聞きながら、さゆみが小さく呟いた。