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死んではいけない温泉旅館一泊二日

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死んではいけない温泉旅館一泊二日

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7、宿泊旅館 〜馬場校長のエクササイズと土産屋のまごころ〜

「ターゲットはゲームセンターよ」
「わかった〜」
 リカインが次の指示をするとミスノ・ウィンター・ダンセルフライ(みすのうぃんたー・だんせるふらい)が答えた。
 リカインは始終、カメラで不正が無いか監視するのと同時に罠を仕掛けるスタッフたちと連携をとっていたのだった。

 ミスノが支持された通り、ゲームセンターに向かうとそこには海と三月と柚姿があった。
 どうやら、海と三月がテーブルゲームでスコア―を競っているようだった。
「げっ! 三月め、それはずるいだろ!!」
「正攻法だよ、海。これで6対1だね」
「もう一回だもう一回!」
 どうやら、海は三月にほとんど負けながらも、再戦を申し込んでいるようだった。
 あまり見かけない形のゲームに三月たちは燃えていた。
「頑張れ海くん!」
 それを海の真後ろから、柚は拳をグーにして応援していた。

「ん?」
 ミスノは次のターゲットを定めかけたとき、別の人が入ってきたことに気が付いた。
「よし……爆弾はついてないなさあてやるか!」
 意気込んで輝石 ライス(きせき・らいす)がプレイし始めたのは、横スクロール型シューティングゲームだった。
 そして、そのすぐそばにはブラウン管テレビが備え付けられていることにミスノは気が付いた。
(これは使わない手はないよね)
「やっほ〜」
「ん? なんだ?」
 ミスノが軽く、ライスに話しかけてきた。
 ライスは一瞬敵だと思い警戒するが、ミスノは温泉の時から襲われる側として一緒にいたことを思い出し警戒を解いた。
「いやさ、テレビをちょっとみて良い?」
「おい、特訓もせずおまえはこんなところで油をうっているのか」
「げっ、見つかっちまったか」
 いつの間にか行方不明となっていたライスを探していたミリシャ・スパロウズ(みりしゃ・すぱろうず)がきつい言葉をライスに放ちながら現れた。
 せっかくの時間を邪魔されたとばかりにライスはげんなりとミリシャを見上げる。
 同時にミスノは有料チャンネルを合わせる。すると……
「馬場校長監修 ブートエクササイズ!!」
 軽快な音楽とともに、筋肉マッチョな人が二人も画面に映し出された。
 予想外のことにミスノも吹き出してしまいそうになる。
 なにより、ライスはもはやゲームどころではなくなっていた。
「なお、この映像を見ている人は最後までどんな内容だったか、最後に聞きますのでしっかり見ておいてくださいね」

 女性のアナウンス……紅鵡によるアナウンスがテレビから流れた。
「え、私もこれみなければいけないのか?」
 ミリシャがあわてる。するとアナウンスはまるでその言葉をまってましたとばかりに次の言葉を発した。
「もちろん、男女関係なく全員だよ!! じゃあ、みんな頑張って馬場校長みたいになってね!」
 そういうと、アナウンスらしきものは終わり再び、マッチョな男たちが写った。
 つまり、このチャンネルをみた全員が例外なく、最後まで映像をみることが必須だということだった。
「じゃあ、やっていくぜ! まず腕で逆立ちしながら、前転運動!」
「はじめから無理なのだ!? こ、これは特訓じゃないぞ!!」
 あまりの人間離れした動きにライスはおどろいた。
 画面の中のマッチョは、腕立ちから、まるで朝飯前だとばかりに前転して見せる。
「で、なんであなたは仕掛け人じゃなかったのか」
「えっ、あー。もちろん!」(どうしよ……)
 照れながらミスノは答えた。
 ちなみにミスノは本当に仕掛け人である。が、不器用なためこの後のことをまったく考えていなかったのだった。

「な……なんだ?」
 遠くにいたはずの海と柚たちも巻き込まれてしまい、テレビ画面を見るしかなかった。
「わわわ、裸の男のひとがいっぱいで――」
「柚!?」
 そういうと柚は突然意識を失い、後ろへと倒れてしまった。
 床に倒れ落ちそうになる柚を海はあわてて抱きかかえた。
「だ、大丈夫かな?」
 三月が不安そうに柚の顔を覗き込む。
 気が付けばいつのまにか最後の風船が割れてしまっているようだった。
「どうやら、気絶を失ってるみたいだな」
 安堵の深いため息を二人はついた。
「さあ、次は片腕で側転だ!」
「……これずっと見てないとだめなのか?」
「じゃないと後で、馬場校長直伝の罰がまってるのだよ……」
 海たちの質問にミリシャが、呆れた口調で答えてくれた。
 この後ライス、ミリシャ、三月、海、そしてミスノはおとなしく寝ておくべきだったと後悔したのだった。

         §

「は〜ははは〜くらえー」
「そんなのあたりませんわ!」
「僕だって負けないよ!」
 お土産屋の前の広間で、なぜかアデリーヌとさゆみは枕を持って互いの体にぶつけ合っていた。
 顔を真っ赤にしてあるあたり、どうやらお酒によりすっかり出来上がっているようだった。
 が、一寿に関しては純粋にまくら投げを楽しんでいるようだった。
「ここに枕投げしてる人を発見!!」
 突然廊下の奥からラブ・リトル(らぶ・りとる)は現れると、持っていた枕をさゆみのほうへと投げ込む。
 綺麗にさゆみの風船に直撃し、最後の風船はわれてしまった。
「あーっ、風船割ったわねえええっ!! 覚悟しなさい!!」
 突然眉間にしわをよせて、さゆみは枕を次々とラブへと投げつける。
「あたんないよ〜っ! えーいっ」
 軽やかにラブは枕をよけて見せた。
 そして、落ちた枕をつかみ上げると今度はアデリーヌへと投げつける。
「あっ! やりましたわね!」
 アデリーヌの風船がすべて割れてしまう。
 ついに、ラブはアデリーヌとさゆみに挟み撃ちにされてしまう。
「さっ、終わりよ! あなたの風船も残り1個。私たちの仲間入りね」
「ぬうううっ、まだやられないっ!」
「僕もっ!!」
 アデリーヌとさゆみ、そして一寿までもが枕を投げつけるモーションに入る。
 とたん、ラブはしゃがんだ。同時に3人は投げ合った枕が顔に直撃。
 アデリーヌとさゆみ、そして一寿は床にそのまま倒れ伏せてしまった。
「はーっはっは、してやったり!!」
 そういうとラブはそのまま廊下の奥へと、次のターゲット探しに消えて行ってしまった。
「って……僕はなにをやってるんだ」
 一寿は頭を押さえながらため息をついた。本来は早く寝るつもりだったのだが。
 気が付けば一寿の風船もさゆみ達の戦いに巻き込まれ、風船が残り1個となっていた。
「あははは、楽しいわ!!」
「ええ、楽しすぎますわ!」
 突然、酔いどれ二人組は寝転がって笑い始めた。


「おやおや、素敵なお嬢さんたち。そんなところで寝転がると風邪を――」
 2人のほうへとエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は向かって歩き出そうとするが、リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)がエースの服を引っ張った。
「お土産を買うのではなかったのん?」
「っと、そうだった」
 再びエースはリリアとともにお土産屋へとはいる。
 その最中リリアは、エースの背中につながっている風船がのこり1本であることに目がいった。
「風船、残り1個になってるわね」
「ああ、あんなごはんを無理に食わされたらなあ」
 話は数時間前、食事の時間に巻き戻る。
 エースはリリアに「発酵食品は食べられるかどうかわからないから……エースお願いっ!」などと押し付けられ、女性に恥をかかせられないだろと宿命を感じ、まずいご飯を一気食い。
 結果、最初は余裕をかましていたエースだったが、風船が割れると同時に失神していたのだった。

「あら、これおいしそうね」
 そんなこんなでお土産屋で良いものはないかと探していたエースとリリア。一つの小さなケーキを手に取る。
「まった」
「?」
 エースは突然リリアをケーキから押しのけるように話すと、箱の表裏を調べ始めた。
「何をしてるの?」
「やはり……機晶爆弾が仕掛けられている」
「なんですって!?」
 驚いた表情でリリスはお土産屋を見回した。
 今度は別の箱を手に取ってみる。そこには【旅館名物オリジナル饅頭】と書かれていた。
 振ってみるが、リリアには爆弾を仕掛けられているようには思えなかった。
 その箱を試しにエースに渡してみる。
「……爆弾はなさそうだ」
 何度も箱を振り回し、爆弾やその他の仕掛けが無いかをエースは深く警戒しているようだった。
「あら、試食もあるみたいよ。エース食べてみたら?」
「試食なら大丈夫そうだな食べてみるか」
 もしかしたらオリジナルと銘打つ、この饅頭はこの旅館の女将たちが作ったのかもしれないという期待をしつつも、それをぱくりと一口食べた。
 と同時にエースの最後の風船は割れた。
「えっ!? なんで?」 
 リリアは目を見張った。
 まさか、毒薬がなどと疑う。しかし、実際は違った。
 このお土産、実は今日の激マズ料理の犯人であるカノンが心をこめてつくったものだった。
 その先はお察しである。