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2023春のSSシナリオ

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2023春のSSシナリオ
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リアクション

 


 
 
「わあ、凄い、コイノボリ村なのだあ」
 キマク郊外のとあるオアシスの村にやってきたビュリ・ピュリティアが、家々の屋根高くにあげられているたくさんのコイノボリを見て歓声をあげました。
「今日は、地球の風習を真似て、子供たちの健康を祈っているのじゃよ」
 村長が、大勢の子供たちを前にしてビュリ・ピュリティアに説明してくれました。地球では五月五日の行事ですが、キマクでは日付はあまり気にしてはいないようです。
「ところが、あまり風がないので、ちょっとコイノボリたちも元気がないようですのじゃ」
「なら、このわしに任せるのじゃ。バッチリ、鯉のぼりが元気になる魔法をかけてあげるのだあ」
「おお、それは凄い。ぜひお願いします」
 まさか村長も、この後あんなことになるとはこのときは思いもしませんでしたので、自信満々のビュリ・ピュリティアに愛想よく魔法を頼んだのでした。
「ふふふ……。ようっし、行くのだあ。むにゃむにゃのぽんで、コイノボリは元気一杯なのだぁ!!」
 何やら空中に魔方陣を描くと、ビュリ・ピュリティアが呪文を唱えました。
 魔法が発動して、全てのコイノボリたちが妖しい光につつまれます。
 そして、コイノボリたちは元気がありあまって、好き勝手に暴れだしたのでした。
「し、失敗した……のだぁ!?」
 ビュリ・ピュリティアが叫びましたが、すでに後の祭りでした。魔法は解除できません。こうなったら、戦ってやっつけるしかなさそうです。
 
    ★    ★    ★
 
「うふふふふ、リンちゃん、一番乗りー!」
 パタパタパタと翼で飛びながら、リン・ダージが村に飛び込んできました。
 今日はこの村でコイノボリ祭りが開催され、たくさんの柏餅とかいうお菓子が食べ放題だと聞いて、ゴチメイたちで一緒にやってきたのでした。
 村がもうすぐそこという所で、先に行って美味しそうな柏餅を独り占めしようと、リン・ダージがスタートダッシュで真っ先にやってきたわけです。
 ところが、村では、空を自由に飛び回るコイノボリたちが、縦横無尽に暴れ回っていました。
「これが、コイノボリ祭りってやつ? ダイナミックだわね」
 そう感心していると、リン・ダージにも、コイノボリが襲いかかってきました。
「きゃあ!?」
 しゅぽぽぽんと、なぜか口から大量の柏餅をコイノボリたちが発射してきます。突然複数のコイノボリたちに襲われて、リン・ダージは逃げることができませんでした。
「はうあ、いた、痛い……」
 マシンガンの弾よろしく降り注ぐ柏餅に吹っ飛ばされて、リン・ダージがすってんころりとひっくり返りました。大股開きで、ちょっとあられもない格好です。
「もう、何をするのよ!」
 なんとか上半身だけ起こしたリン・ダージに、コイノボリたちがさらに攻撃を浴びせかけてきました。
 ボン!
 今度は、ちまきミサイルです。リン・ダージに命中すると、ぼんと爆発して、白い煙で身体をつつみ込みました。
 ぷしゅるうぅぅぅ〜。
 なんだか、嫌な音が聞こえます。気がつくと、リン・ダージお気に入りのゴスロリ服が溶けてなくなっていきます。
「いやあ、何これ!?」
 かろうじてパンツ一丁になったリン・ダージが、あわててないぺったんの胸を両手で押さえました。その頭の上で、別のコイノボリが脱皮します。蛇の皮のように綺麗に抜け落ちたコイノボリが、すっぽりとリン・ダージの頭の上から被さりました。そのままワンピース型のコイノボリの貫頭衣になります。とはいえ、ぶかぶかですから、手で口の部分を押さえていないと、簡単にずり落ちてすっぽんぽんになりそうです。
「こ、これは、私もコイノボリの仲間にされちゃったの!?」
 あわてて、リン・ダージが周囲を見回しました。
 周りを飛び交っているコイノボリたちからの攻撃は止まっています。むしろ、なんだかうやうやしくリン・ダージを取り囲んでいるようにも見えました。
「はっ、これは、まさか、あたしはコイノボリの女王!? 恋の女王!? こ、これは……」
 何やら、衝撃を受けるリン・ダージなのでした。
 
    ★    ★    ★
 
「これは、どうなってるんだ?」
 遅れてやってきたココ・カンパーニュたちが、村の様子を見て驚きました。無数のコイノボリが飛び回っては、村人に柏餅やちまきを浴びせかけて暴れ回っていたのですから。
「もしかして、コイノボリ祭りって喧嘩祭りのことだったのか? だったら楽しませてもらうぞお」
 なんだか勘違いしたココ・カンパーニュが腕をブンブン振り回して身体をほぐします。
「ははははは、あたしの名は、秘密結社・端午の節句の首領、リン・ダージ! さあ、行くのよ、コイノボリ怪人たち!」
「ちょっ、リン、何やってんだあ!?」
 突然現れたリン・ダージを見て、ココ・カンパーニュをはじめとするゴチメイたちが目を白黒させました。
 なんだか、コイノボリにすっぽり全身を突っ込んだリン・ダージが、巨大コイノボリの上に立って、暴れまくるコイノボリたちに命令を下しています。
 
    ★    ★    ★
 
「きゃー、どうしてこんなことに……。いやー、服が溶ける……」
 コイノボリたちから、ちまきミサイルを喰らって、高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)が叫びました。
「早く、コイノボリたちの皮に潜り込むのです。すっぽんぽんを避けるには、もうこれしか方法がありません」
 そう言うと、アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)が、脱皮しながら巨大増殖していくコイノボリたちの抜け殻を拾って、それをすっぽりと頭から被りました。見た目は、チューブドレスのようですが、結構ギリギリのきわどい衣装になります。
「あはははは、すっぽんぽんは嫌なのじゃー」
 元凶であるビュリ・ピュリティアも、真似してコイノボリドレスを着込みました。
「こばー」
 ちょうど遊びに来ていた小ババ様も、ちっちゃい手持ち用コイノボリの抜け殻を見つけて、楽しそうにそれに潜り込みます。
 村人たちも、次々とコイノボリの餌食となり、すっぽんぽんを避けるためにコイノボリを着込んでいきました。
「あはははは、全ての者は、あたしと同じコイノボリドレスになってしまえばいいのよ。パラミタ全土、コイノボリ計画の開始よ!」
 巨大コイノボリの上で、リン・ダージが勝ち誇りました。