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雨姫様の恋雫

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雨姫様の恋雫
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 湖に出てきた御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽環菜(みかぐら・かんな)

「仕掛けを外して小舟で向こう岸に行かないとならないのね」

 環菜が仕掛けを解こうとすると、陽太が環菜の肩を叩く。

「こんなこともあろうかと思ってですね」

 携帯用救命ボートを取り出す陽太。

「さすがね」
「さ、乗ってください」

 環菜をエスコートさせボートに乗せると陽太がオールを手に漕ぎ始める。
 その間環菜が禁猟区で周囲を警戒していく。
 まるで事前に良い合わせた様に自然とその形となる連携に深い関係が見受けられる。



◇          ◇          ◇




「来るわよ」

 禁猟区にヒットし、そう呟く環菜に陽太が神威の矢で水魔にダメージ牽制をかけた。
 そのまま特技である要人警護で環菜をガードすることを常に意識しながら、銃撃で水魔を薙ぎ払っていく。

「これじゃ、キリが無いわね」

 数の暴力でなぎ払うよりも多くの水魔が水面から出てくるのを見てそう言う環菜。
 ボートを転覆させようと企む水魔に足場での行動が不利に感じた陽太は環菜をお姫様抱っこする。

「しっかり捕まっててください、翼で一気に向こう岸まで飛びます」

 我は纏う無垢の翼を生やすと陽太はこの不利な状況から脱出した。
 水魔も負けじと羽根を生やしたり、ジャンプすることで二人を捕らえようと躍起になっている。

「消し飛びなさい」

 追いすがって来る水魔に環菜がスプレーショットにクロスファイアを乗せた攻撃をして一瞬辺りが火の海と化した。
 火が消える頃には焼け焦げた水魔が数体残っているだけである。

 向こう岸の陸地に辿り着くと、そっと環菜を降ろす陽太。

「ありがと」
「いえ、あとは双樹の樹を探すだけですね。彼に乗って行きましょう」

 陽太は影に潜むものを出すと環菜を自分の前に乗せ、黒狼を走らせた。
 風を切るように走る黒狼の背では、お互いに互いの体温を感じながら双樹の樹を探していく。

 そうして探していき、二人は寄り添うように絡み合っている双樹の樹を見つける事が出来た。

「俺は世界で一番、貴女のことを愛していますよ」
「わ、私も愛してるわよ……」

 真っ直ぐそっと手を握って囁く陽太に照れを感じ、環菜は赤らめた顔を見られないよう横を向く。
 横を向いたとしても正面から見ている陽太には隠せずにいるという事に気付かない。

 そんな彼女を可愛く思っていると、樹から雫が垂れてくる。
 そっとすくうとタイミングよく正面で目線が合う。

「い、いつまで見てるのよ……」
「環菜が見ていて良いと言うのなら、いつまでも見ていたいですよ」
「見なくて良いわよ! ………………………嘘、もっと私を見て」

 雫が消えたもなお優しい表情で見続ける陽太に、環菜も正直に今の気持ちを告げるのだった。