リアクション
再び、鍋交流会。
「そう言えば、代理だと言っていましたが……」
ロアが登場時にクオンが言っていた事を思い出した。
「本当は会長が来る予定だったんだけどね。あの特別なレシピの事やお兄さん達の依頼の事とかを頑張っているみたいで来られなくて。立候補したボクと危ないけど暇な黒亜お姉ちゃんが選ばれたんだ」
クオンは鍋を楽しみながら事情を改めて説明した。
「……確かに危ないな」
ベルクは鍋を楽しまず、実験したそうに周囲を見回している黒亜をにらみ見た。
「えぇ。二つになる時に彼女の魔法薬で両調薬会に結構な犠牲者が出たんですよ。とは言っても幸い死者は出なかったのですが」
ヨシノが黒亜を警戒しつつ二つに別れる間際の出来事を話した。
「……面白かった……揉めているばかりで……私に誰も気付かなかった……」
黒亜は無表情の一本調子でぼつぼつとつぶやく。
「やはり、危険な調薬をしたくて探求会にいるさね?」
「……薬作る事出来れば……どこでもいい……私が面白い……それ一番」
訊ねるマリナレーゼに振り向きもせず黒亜は答えた。調薬が出来ればどこでもいい。そもそも自分が面白ければいいという危険な考え。
「その気持ちは僕も分かる。体がこんなんじゃなかったら色々出来ただろうな」
シュオンは羨望の目で黒亜を見た。
「……両方に被害が出たのにまたどうして探求会の方に引き入れたんだ?」
ベルクが抱いて当然の質問をした。
「会長が腕がいいからって言ってこっちに入れたんだ。危ないけど気を付けたらいいだけだって。毒とか危ない物しか作らないし実験は自分以外で試すしでみんな迷惑してたりするんだよ」
クオンは黒亜から目を離さず、言った。
「そんな奴がこの場にいるのか」
ベルクは寛ぎとはほど遠い状況に溜息をついた。
「それよりこの鍋美味しいし妖怪の山って面白いね。妖力なんてすごく興味あるなぁ。後で女将さんにでも素材とか聞いてみようかな。ね、シュオン兄ちゃん」
クオンはにこにこと隣の兄に話しかけた。そうしていると普通の子供に見える。
「確かに妖怪の力を持つ素材での調薬は面白そうだ。クオン、これも美味しいから食べてみたらいい」
シュオンは実験狂らしくうなずき、美味しそうな具を弟の椀に入れたりしていた。
「……本当に似た者兄弟さね」
兄弟のやり取りを眺めながらマリナレーゼがぽつり。
「ほら、妖力に満ちている物って難しい調薬に色々使えそうだしさ。もしかしたらお兄さん達の依頼にも使えるかもだしね」
クオンは箸を進めながらロア達に言った。
それに関しては
「私達の依頼に使えるのでしたら嬉しいですが、調薬以外にも普通の生活にも活かせそうではありますね」
「……妖力がある分、健康促進の効果が高いという事なのか」
ロアや薬草や科学的な物を使わない薬品に疎いウルディカも同じだった。
この後、興味を持った三人は様子を見に来た女将に素材を訊ねていた。
「……妖怪で……実験も……いい」
黒亜は物騒な事を口走りながら魔法薬を鍋にぶち込もうとした。
「物騒な事を言いながら鍋に魔法薬を入れようとするな」
ベルクが皆の安全を守るべく止めて薬を没収していた。
とにもかくにも大人数での鍋を楽しんでから温泉を楽しだり土産を物色したりとそれぞれの時間を過ごしたという。ちなみに、『記憶術』を有するポチの助はシーサーと戯れている間も交わされる話はきちんと耳に入れていたらしく、鍋が終わった後、きちんとノートパソコン−POCHI−にて『コンピューター』を有する者らしく素速く情報を処理していた。
……温泉宿『のっぺらりんの宿』の開店初日は、大盛況であったという。
参加者の皆様、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。
宿を手伝って頂いたり、客として過ごして頂いたりと賑やかな皆様のアクションを読ませて頂きながら楽しく執筆させて頂きました。
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。