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今日はハロウィン2023

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今日はハロウィン2023
今日はハロウィン2023 今日はハロウィン2023

リアクション

 ホラーなオープンカフェ。

「ユルナちゃん、こんばんはー! それと、トリック・オア・トリート!!」
 ハロウィンサブレで和装の『雪女』になったノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は元気に顔見知りであるユルナに声をかけた。
「こんばんはー、可愛い雪女さん、お菓子をどうぞ」
 ユルナは笑顔でノーンにお菓子を渡した。
「うわぁ、ありがとう」
 ノーンはにこにこと嬉しそうに受け取った。
「ユルナさん、先日はお世話になりました」
 続いて御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が妖怪の宿の事も含めて丁寧に挨拶。
「ううん、こちらこそあの時は迷惑を掛けちゃって……はい、お菓子をどうぞ」
 ユルナは軽く頭を振った後、舞花にもお菓子を渡した。
「ありがとうございます……陽太様、環菜様、こちらがユルナさんです」
 舞花はお菓子を受け取った後、隣にいる御神楽夫妻を紹介した。
「初めまして、何度か二人がお世話になったみたいで……」
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)は丁寧にユルナに挨拶をした。
「いえ、こちらこそ、どうぞお菓子を……って、赤ちゃん? 予定日は?」
 ユルナは御神楽夫妻にもお菓子を渡した。当然、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)の膨らんだお腹にも気付いた。
「予定日はもうそろそろなの」
 環菜は幸せそうにお腹を撫でながら答えた。そのため陽太はいつも以上に環菜をさり気なく愛情いっぱいにいたわっていた。
「へぇ、元気な赤ちゃんが生まれるといいね。何かあったら気軽に声をかけてね」
 幸せそうな環菜にユルナの表情も優しくなった。
「ありがとう」
 環菜は気遣うユルナに礼を言った。
 お菓子を貰った四人はユルナの案内で適当な席に着き、ユルナを交えてのお喋りを始めた。ついでに外であるため冷やさないようにと環菜にはブランケットを貸した。

「妖怪もいるんですね」
 ふと舞花は和洋のモンスターが入り乱れている事に気付いた。以前行ったホラーハウスでは妖怪はいなかったので少し新鮮だったり。
「妖怪の宿の成果を発揮できるって張り切ってこんな感じになっちゃって」
 ユルナは肩をすくめながら答えた。ホラーが苦手な彼女は当然いつもの派手な姿。
「賑やかでいいと思いますよ」
 舞花は取り入れの素早さを称賛した。
「そう言えば、二人が妖怪の宿に泊まった話、メールだけで詳しく聞いていませんでしたね」
「確か入れ違いだったから聞けずじまいだったのよね」
 妖怪の宿の話になって陽太と環菜は直接土産話を聞いていない事を思い出した。実は、帰宅した舞花達と入れ違いに用事で不在にしていたのだ。そのため舞花達は土産も渡せずじまい。
「そうでしたね。まずはお土産をどうぞ」
 思い出した舞花は御神楽夫妻に土産のキーホルダーを渡した。
「……なかなか珍しい物ね。何か御利益でもあるの?」
 環菜は珍しいキーホルダーをまじまじと確認しながら訊ねた。
「厄払いの妖力が込められているそうです。きっと守ってくれますよ」
 舞花は環菜の大きなお腹に目を落とした後、笑顔で答えた。
「素敵なお土産をありがとうございます。確かメールには……」
 陽太はメールに土産の他にも色々書かれていた事を思い出しつつ画像を出そうとするも
「シロウちゃんにも会ったんだよ!」
 元気なノーンが先に言った。
「元気そうにしてた? 前は食いしん坊の親分が腹痛を起こして大変そうだったけど」
 環菜は花見の事を思い出しながら訊ねた。少し笑いながら。
「してたよ。今度は捜してたよ。あと、他にもたくさん妖怪さんがいたよね?」
 ノーンはキャラキャラと答えながらユルナに話を向けた。
「……うん」
 ユルナは暗い顔でこくりとうなずいた。宿での事を思い出しているようであった。
「私達と別れた後、何かありましたか?」
 ユルナの表情の変化に何かを察した舞花が問うた。
「……実はね、部屋に戻ったらスタッフが山から連れて来た妖怪がたくさんいたのよ。まさかいるとは思わなくて」
 ユルナはゆっくりと舞花達と別れた後の事を話し始めた。
「それは大変でしたね」
「それからどうしたの? 大丈夫だった?」
 舞花は労い、ノーンは少し心配も含みつつ訊ねた。
「……妖怪を交えた鍋パーティーに出席になって……はぁ」
 ユルナはその時の事を思い出してか青い顔になって大きな溜息で話を締めた。
「ねぇ、ねぇ、ユルナちゃん、あのパフェある?」
 ノーンは思い出したように例のデカ盛りパフェの事を訊ねた。
「あるよ。今日はハロウィンだから通常版とハロウィン版がね」
 ユルナは指を二本立てながらニヤリ。ノーンの明るさですっかり宿の事は吹っ飛んだようだ。
「もしかして以前メールで送ってくれたデカ盛りパフェですか?」
「そうだよ。あのパフェおいしいんだよ。おにーちゃんも食べてみて」
 陽太に教える間もノーンは食べたくてうずうず。
「……そうですね。写真でしか見た事がありませんから興味はありますね。ただ、食べ切れるか……環菜も食べませんか?」
 陽太は食べる事に決めるもパフェの画像を見て食べ切れるか気になったり。そこで思いつくのは環菜と分け合う事。
「食べるってデカ盛りでしょ。無理よ」
 ただし環菜は一人一個と考えているのか即無理発言をした。
「だから、二人で一つはどうですか?」
 陽太は食べ切るための最高の提案を教えた。パフェも食べ切れるし二人で楽しめるという。
「それなら大丈夫だけど……でも」
 一つならばと答えた後、環菜は二人で一つという事にはっとしたように頬を赤くして照れた。
「決まりですね。こっちもデカ盛りパフェをお願いします」
「わたしはハロウィン版!」
「私は温かいスープをお願いします」
 陽太、ノーン、舞花は料理を注文した。
 ユルナは注文を料理スタッフに伝えるために席を外し、そのついでに何やらスタッフと話を始めた。
 その間、陽太達は妖怪の宿やホラーハウスでの出来事が綴られたメールや画像を見ながらお喋りを始めた。
 しばらくして料理は運ばれ、
「……大きいわね」
「やはり実物の迫力は凄いです」
 環菜と陽太はホラーなデカ盛りパフェの現物のデラックス感に感嘆していた。
 デカ盛り具合をよく目に焼き付けた所で
「いつまでも眺めていても仕方が無いから食べましょ、陽太」
「そうですね」
 二人は食べるべくスプーンを手に持った。
 そしてまずはどきどきの一口目。
「……見た目はホラーだけど美味しいわね」
「本当に美味しいです」
 自宅ならば互いに食べ合わせたりしていちゃつくのだが、さすがに衆目がある中では出来ず、それぞれのスプーンでパフェを制覇していく。
「このスープも美味しくて温まります」
 舞花は不気味な色ながら体の芯から温まるスープを堪能。
「ん〜、ハロウィン版もおいしいよ、ユルナちゃん」
 ノーンはバクバクとパフェを食べ進めていた。ハロウィンという事でカボチャのクリームにお化けをかたどったチョコが点在したオレンジとブラックを基調としたパフェであった。
「ありがとう」
 席に戻って来たユルナはノーンの感想に嬉しそうにした。
「今回は兄妹主催と聞きましたが、仲良く頑張っているんですね。今日は来ているんですか?」
 舞花は思い出したように主催の事を話題にした。
「……兄さんとは相変わらずだし、見ての通り別の仕事で今日は来ていないよ。お母さんは呑気に旅行みたいだし」
 ユルナは肩をすくめながら答えた。
「もしかしたら、気になって来ているかもしれませんよ」
 舞花はこれまでの事からヤエトが来ている可能性を口にした。
 途端、
「それはちょっと……また腹立つ事言われるから嫌かも」
 ユルナは忌々しそうな表情をした。しかし、その奥にちょっとした親愛があったり。
「でもヤエトちゃんもいたら楽しいよ」
「……いや、楽しくないと思うよ。空気が淀むというか、息苦しいというか」
 パフェを食べながら無邪気に言うノーンにユルナは口をひん曲げながら悪口ばかりを並べるのだった。
 その時、
「ほぅ、人の陰口叩いて気楽なものだな」
 ユルナの背後から青年の平坦な声。
「!!」
 驚いて振り向くユルナ。
「ヤエトちゃん」
「ヤエトさん」
 ノーンと舞花はユルナと違いやっぱりと言った感じでヤエトを迎えた。
「ホラーハウスの経営者ならサブレを食べて宣伝の一つでもしたらどうなんだ」
 相変わらずのスーツ姿のヤエトはいつもの口調。手に持っていたハロウィンサブレを妹の目の前に叩き付けた。
「……そんな事より何で来てるわけ」
 ユルナは苛立ちながら声を荒げた。今はハロウィンサブレなどどうでもいい。
「何でとは愚問だな。主催者なのだから来て当然だろう。あぁ、サブレを食べなくともその阿呆な格好なら十分か」
 ヤエトは妹を小馬鹿にしたように言い放った。それは心底ではなくただの意地っ張りで素直に妹を労う言葉が言えないだけ。
「ヤエトちゃん、来たんだね。ユルナちゃんがお仕事で来られないって言ってたよ?」
 ノーンがヤエトに訊ねた。何せ先程ユルナから来ないと聞いたばっかりなので。
「予定より早く終わったんでイベントの様子を見に来たんだ」
 ヤエトは素っ気ない調子で答えた。
「もしかして今来たばかりですか? ユルナさんが心配で一番にここに」
 ヤエトを知る舞花は少し笑みながら言った。
「……いや、菓子の配布具合を確認しに行く途中に騒々しい声を聞いてたまたま立ち寄っただけだ」
 冷たい調子で舞花の言葉を否定するヤエト。実は舞花の言う通りであるが意地っ張りのため真実は口にしない。
「……たまたまね」
「聞いてた通り、仲良しですね」
 環菜と陽太はキサラ兄妹のやり取りを微笑ましそうに眺めていた。
「ヤエトちゃんも一緒に少しだけお喋りしようよ」
 ノーンは邪気の無い可愛い笑顔でヤエトを誘うが、
「いや、遠慮する。まだ確認するべき所があるのでな」
 即断り背を向けてさっさと立ち去ってしまった。
「行ってしまいましたね」
 舞花はユルナの様子が気になって伺うと
「サブレを置いたまま行って……」
 じっとハロウィンサブレを見つめていたかと思うと食べた。
 そして、いつも以上に奇抜な格好をした魔女に変身した。
「……ユルナちゃん、似合ってるよ」
 ノーンは手を叩きながら変身したユルナを褒めた。
「そう? だったらいいけど。あのまま、小馬鹿にされたままは嫌だったから」
 ユルナは照れながらもヤエトに対して怒り顔を浮かべた。それも兄妹仲が軟化した今では心底の思いではなかったり。
「ねぇ、わたしと写真撮ろうよ」
「いいよ」
 ノーンの誘いでユルナは一緒に記念写真を撮った。
 この後、御神楽夫妻と舞花達は仲良くハロウィンを楽しみ、キサラ兄妹はそれぞれ仕事に精を出していた。