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最強アイドルへの道

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最強アイドルへの道
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「さっきも確か……。まさか」
 セレンとイングリットが場外に倒れている様子を見て、怪しく思ったのは美羽だった。垂とルカを交互に見る美羽に、垂は観念したように首を振った。
「そのまさか、さ」
 開き直り、がしっと拳を打ち付ける垂とルカ。
「こんなに早く見破られるなんてね」
「独りよがりの最強なんて意味がねぇ! 人は誰かと協力する事で真の強さを得られるんだ!」
 ルカたちがタッグで睨みつける美羽の隣に、愛美が立った。
「二人掛かりでくるなら、こっちも二人掛かりでいくよ」
 美羽が愛美に仙人の豆を渡した。二人は体力を一気に回復し、ルカと垂に向き合った。
「私たちでワンツーフィニッシュをきめるよ、愛美!」
「うん!!」
 刹那、リング上に電流が走った。セレアナの寝技に捕まっていたソフィアが、放電してその拘束から逃れたのだ。
『……』
 正子が淵を見ると、淵が頷いた。
『もう一人、追放するべき者が出たようだ』
 正子がソフィアの脚を掴もうとした、その瞬間。ソフィアは、全力で加速した。加速ブースターの制禦すら外し。その身体で、できるだけ多くの人を巻き込もうと、手足を伸ばし。
 全速力のソフィアは正子の手から逃れ、タッグで向き合っているルカと垂、美羽と愛美の方へと全力で発進した。すかさず横跳びに回避しようとする四人。
 その瞬間。美羽と愛美の足を掴んだ者がいた。……ライゼだ。ライゼはどさくさに紛れてマットの上に横になり、隙を狙っていたのだ。
 倒れているライゼをわざわざ場外に落とすより、目の前の相手を倒すことに集中するだろうと踏んでいた、ライゼの考えは当たっていたのだ。
 ソフィアは真っ直ぐに愛美たちの元へと吹っ飛んでいき……ライゼを含め、三人を巻き込んでリングの外へと飛び出していった。
『まさかの四人脱落!? 一気に残るは五人だ!!』
 残ったのは、ルカと垂、ブラックペガサス、セレアナ、詩穂の五名。五人はお互いがお互いを睨み合う。
 最初に動いたのは、ルカと垂だった。詩穂を狙い、ルカがフェイントをかけると同時に肝臓を狙った突きを入れる。ルカと二人掛かりで抑え込もうとした垂に、セレアナとブラックペガサスの攻撃が襲いかかる。セレアナがマットすれすれに、ブラックペガサスがロープから、それぞれ蹴りを放つ。
 そのままブラックペガサスに抑え込まれた垂。
『脱落!!』
 詩穂はルカの攻撃を受けながらも、関節技をかけてどうにかその打撃を収めようとする。ルカが手刀で詩穂を落とそうとするのと、詩穂が関節技でルカを落とそうとするのと、拮抗する力と力。
 ……だが、垂の脱落を聞いたルカが詩穂に込める力を一層強め、遂に詩穂を落とした。
『残り三人だ!!』
 セレアナとブラックペガサス、ルカの間に、言葉はなかった。誰からともなく、三人は三人に攻撃を加えた。一瞬でも隙があれば、残った一人に同時に攻撃を向けられ、脱落することは目に見えている。一瞬の気も抜けない時間が、永遠にも思える時間が、続いた。
 いつ終わるとも知れない攻撃は、確かに着実に三人の体力を奪っていった。ルカがセレアナに目配せをする。二人は、同時にブラックペガサスを狙った。
 同時に強力な攻撃を受けたブラックペガサスが倒れる、と同時にルカはセレアナの急所目掛けて必殺の手刀を繰り出した。が、同時にセレアナも同じことを考えていた。セレアナも、ルカの頭めがけて渾身の一撃を放った。

 ……三人が、それぞれに倒れた。カウントが取られる中、起き上がったのは……ルカだった。
『勝者が決まった!! 栄えある勝者は、ルカルカ・ルーだ!!!』
 大歓声を受けて、ルカはその場に崩れ落ちた。
 こうして、無事最強の女は決定し、異種格闘技戦は幕を閉じたのだった。