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ブラウニー達のサンタクロース業2023

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ブラウニー達のサンタクロース業2023
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リアクション

 夜、葦原島。

 長屋で賑やかな大宴会が繰り広げられてる間、獣人姿の忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)完全魔動人形 ペトラ(ぱーふぇくとえれめんとらべじゃー・ぺとら)は仲良く雪降る外を歩いてた。

「クリスマスにポチさんとシーサーさんと一緒に過ごせて嬉しいよ。ありがとう♪」
 ペトラは嬉しそうに隣のポチの助と雪と戯れるつつ歩く雌雄のシーサー達を見ている。
「たまたま、用事が無くて仕方無くなのですよ」
 いつものように返答するポチの助。言葉とは裏腹に一緒にクリスマスを過ごせる事が嬉しいのは言うまでもない。ペトラと合流し今し方、シーサーと落ち合ってぶらぶらしている所である。

「今日はクリスマスだし、いっぱい遊ぼうね!」
「ペトラちゃんがそうしたいなら付き合うのですよ」
 楽しく今日の予定を話し合おうと互いの顔を見ながらお喋りをするペトラとポチの助。
 その瞬間、
「……」
 二人は互いの顔を見つめて固まった。
 続いて
「ポチさん、大人になってるよ!!!」
「ペトラちゃん、大人になっているのですよ」
 わき上がる驚きを勢いよく言葉にした二人の声は見事に重なった。
 驚きが少し落ち着いてから
「凄いね。どうしてかな? やっぱりクリスマスからかな? 何かそんな気がするよ。ほら、クリスマスの奇跡」
 ペトラは口元をゆるめ矢継ぎ早にこの不思議に説明を付け始めた。ちなみに外見は大人だが中身は子供のまま。
「……僕は奇跡なんて非科学的な事は信じないのです。僕はありえない事を実現させる優秀なハイテク忍犬なのですから。これぐらいの事、僕に掛かれば科学的に実現出来るはずなのですよ」
 ハイテクを駆使する者として非科学的な物を信じたくないポチの助。
「ポチさんの大人の姿、格好いいよ♪ とっても素敵!」
 無邪気なペトラは唐突に科学的に云々を語るポチの助の姿を褒めた。
「……当然なのですよ」
 褒められたポチの助はいつもの調子で返すもどうも照れが見え隠れ。外見は立派な凛々しい青年だが中身は子供。
「ポチさん、ひょっとして、照れてる?」
 ポチの助の照れを見抜いたペトラは口元ニンマリ。
「……照れてはいないのですよ。優秀な忍犬ですからね」
 ポチの助は言葉を重ねるが余計にバレバレに。
「にひひひー、ポチさん、照れて可愛いー」
 ペトラはきゃらきゃらと可愛く笑うばかり。
「……だからですね。それは(……それよりペトラちゃんは)」
 言葉をさらに重ねつつも気になるのはフードで隠れた可愛い子供バージョンがどう変化しているのかだ。そして、きっと美人さんだと意識しまくる。
 意識し過ぎて困ったポチの助が視線を逸らそうとした時、目の前でペトラはゆっくりとフードを外した。
「……ペトラちゃん」
 びっくりするポチの助。ただしそのびっくりはフードではなく、露わになった赤い瞳を持つ綺麗な顔。ポチの助の予想以上に綺麗で言葉が無い。フード以上の衝撃だった。
「どうしたの? ポチさん? あぁ、フードだね。ポチさんと一緒なら大丈夫だよ。それより、どう? 大人になった僕」
 自分の顔を確認出来ないペトラはフードを外した事に驚かれているのだと思い説明してから笑顔で感想を訊ねた。
「……綺麗なのですよ」
 ポチの助は困り成分といつものツンを含ませて答えた。その綺麗な顔で笑顔を向けられ困るなと言う方がおかしい。しかも気になる子の笑顔なら尚更。
「えへへ、ありがとー」
 ペトラは嬉しそうに更に笑顔を咲かせた。
「……思った事をただ言ったまでです。さっさと遊びに行くのですよ」
 ポチの助はそう言うなり歩き始めた。
「そうだね。せっかく大人になったから雪を見ながらお喋りをしたりロマンチックに過ごそうよ」
 ペトラも歩き出し、ポチの助の隣に並んだ。
「ペトラちゃんがそうしたいなら別にそれでいいですよ」
 ポチの助は即答。ペトラが楽しんでくれる事が一番だから。
 雪を見ながらのお喋りという事で付近の広場に向かった。
 広場に到着するとかまくら団体によって作製されたかまくらがあちこちに建ち並んでいた。ペトラの希望で二人と二匹はかまくらの中に入ってクリスマスを過ごす事にした。

 広場。かまくら内部。

「……甘酒にお餅って、ちょっとクリスマスじゃないねー。まるでお正月だよ」
「……確かにその通りなのですよ」
 ペトラとポチの助は団体が用意した火鉢で餅を焼いたり暖を取ったり甘酒を飲んだりして楽しんでいた。まさにお正月の風景そのもの。
「ポチさん、そのお餅焦げちゃうよ」
 ペトラはポチの助の近くで焼く餅を指さした。
「大丈夫なのですよ……お前達、甘酒が飲みたいのですか」
 ポチの助は餅を回収しつつ甘酒に興味を持つシーサーに気付いた。
「こっちにお椀があるから甘酒入れるね」
 ペトラは二つの椀に甘酒を注いでシーサーの前に置いた。
「♪♪」
 シーサーは嬉しそうに甘酒をぺちゃぺちゃと飲み始めた。
 ペトラとポチの助はここで食べたり飲んだり雪を眺めたりしながら朝までお喋りをして過ごす事にした。
「……今日はこうやってポチさんと一緒に大人気分を味わえて嬉しいな」
「…………(大人と言えば……)」
 ポチの助は大人を満喫するペトラの姿を見ながら漠然とした寂しさを感じた。自分は獣人でペトラは機晶姫、同じようには大人になれないと。
「……ペトラちゃんが望む事は僕が必ず叶えてみせますよ」
 ポチの助は思わず口走った。自分達はまだ子供でまだ未来はある。そうである限り諦めたくない。例え、一緒に大人になれなくともペトラが笑顔でいられる未来を。
「……ありがとう」
 ペトラはにっこり。ポチの助の胸中は知らなくともポチの助の優しさは分かるから。
「礼はいらないのです。その……当然の事ですから(友人……ですからね……でも……本当に……)」
 ポチの助は内心当然の理由に自問自答するもペトラを喜ばせたいのには迷いがない。
 この後もお喋りは続き奇跡が終わる朝をここで迎える事となった。

 朝。

「……元に戻ちゃったけど楽しかったね」
「ペトラちゃん、フードは被らないのですか」
 ペトラは奇跡終了に少し残念そうにし、ポチの助は被る気配のないフードが気になる。
 そんなポチの助に対し、
「昨日、僕言ったじゃない。ポチさんと一緒なら大丈夫だって(……マスターや、シルフィア、エメリー。それにポチさん。他の皆も。僕が大好きな人の前なら、フードがなくたって大丈夫)」
 ペトラは笑みながら昨日口にした言葉を繰り返した。沢山の大好きを心に浮かべながら。
「……それならいいですが」
 ポチの助はそれ以上何も言えなかった。
 寝てしまったシーサーが目を覚ましてから二人は仲良くかまくらを出た。