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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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■試食■


 味付けのコツを教え込み、下拵えは冬山が全部やって――そして、出来たものが何故これなのか。
 その場にいた事の顛末が解ってしまったメンバーが頭を抱えた。
 すでに、食品の形を失くしてしまっていたそれ。
 隣に並ぶ料理がそれに見劣りしない現実が、美緒に自分の料理が下手という事実を隠させた。
 そして、また逆もしかり。
「さすが、私!」
 セレンフィリティは満足気に自分の作った料理を眺めていた。
 少し離れてその様子を見ていたセレアナは溜息をつく。
「……やっぱり、気付かなかったわね」
 しかし、美緒が自分の料理下手に傷つかないようにというラナの依頼は達成できたのだけれども。
「こ・これは……」
「テリーヌよ」
 美味しそうでしょ、と自慢気だ。
 ……まるで、今さっき殺してきたばかりのウジ虫モンスターだ。
 一体何が入っているのか、厨房においてあった材料にはウジ虫はいなかった。
 一口サンドやカナッペはできそこないのプラモデルのようだが、原型が解る分だけまだ食べられそうだ。
 ローストビーフの焼き色が玉虫色になってしまったのは、非常に不思議だ。
 真っ黒焦げのフライは中が全く焼けてない。虹色のゼリーを食べてみようとスプーンを入れると、くずくずとスライム状に形が崩れていく。
 この料理を食べようと言う猛者は、そうそういないだろう。
「――おいしくない」
 美緒の料理を食べて口をへの字にしているのは、シリウスだ。
「素材の原形がないな……」
 不味いというか、何を食べているのか全くもって解らないが、一生懸命作ったのとか、凝った料理を作ろうとしたぐらいは解る。
「料理下手の改善はすぐには無理だろうけど、道筋見つけるくらいならできるんじゃねーかな?」
「料理下手ですか、私?」
 それは初耳だとばかりに、美緒はきょとんと見返してくる。
 リーブラは、ガンバレと心の中でシリウスにエールを送る。
 確かにラナの依頼は美緒を傷つけないように、ともあって、お世辞が下手で舌鋒に遠慮がないシリウスである。
 スパッと、不味いって言わないあたり、言葉を選んでいる。
 ハラハラして皆が見守る中、
「食べてみるか?」
 丁寧に食べやすく切った美緒の料理を彼女に渡す。
(まず、根本的に味覚がおかし……好みがズレている場合。こりゃもうお手上げだな。好みはどうしようもない)
「オレも生魚とか全然ダメだし……ミソはいけるんだけど――って話がずれたな。まぁ共通で好きなもの見つけるしかないな」
 大概、料理をする時には味見をする。
 そして、味の調整をする。
 不味い料理を作る人は、味覚もズレている場合が多く、そういう人が人にも美味しいと言われる料理を作るには、他の人共通して美味しいと思える料理を作れば手っ取り早いのである。
 しかし。
「あら、美味しくない?」
 味覚は正しいっぽいらしく、彼女自身、自分の料理をそう評した。
「今回は失敗でしたわね」
 にっこりと。それはいい笑顔で作り直さないとと、美緒は言った。
 シリウスは、少々気が遠くなる気がした。
 この反応は自分の料理下手を自覚してない。食べてみたにも関わらず、自覚しなかったのである。
「仕方ないですわね。時間もあまりないですが、もう一度作り直しましょう」
 ごめんなさい、と、一緒に作っていたメンバーに声を掛ける美緒。
「美緒さんもよければ、お手伝いしていただけませんか? わたくしもそちらをお手伝いしますから……」
 今回は美緒がメインだからと、簡単なオードブルを作っていたリーブラが手を上げる。
 セレンフィリティの料理を見ても、手間暇少ない料理なら、まだなんとかなるはず。
 素材丸出しのカナッペが、何故プラモデルと見間違えそうな形態になっているか、本当に不思議だが、まだ食べれる……のではないかと思われる。
「料理の量が足りなくなるようですなら、私も手伝いましょうか?」
「是非! お願いします」
 この時間になって、作り直すだの話になったのだ。香奈からの申し出は美緒にとってとてもありたがかった。
 七色のおにぎりを作った人、となれば、美緒にとって咽から手が出るぐらい欲しい人材である。
 人によってはそうでない人もいるだろうが、美緒を含め殺人的料理を作るメンバーが何人もいる時点で、言わずもがな。
「リーブラ」
 自分の相棒を手招きするシリウス。
「無駄に手の込んだものを作ろうとしたりとか、アレンジしたがるとか、根気はあるんだ。だから、じっくりと時間かけて教えていけばなんとかなるはずさ。無理に手間暇かけなくても愛情は伝わるんだ、ってさ」
 そして、シリウスは気を失った。