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リアクション
「見たい夢を見せる夢札、これは使わざる得ないな。使って楽しい夢を見よう……見たい夢は決まってる(シェリエと過ごす夢一択だ)」
フェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)は手に入れた夢札を迷い無く使った。決定済みの恋人のシェリエ・ディオニウス(しぇりえ・でぃおにうす)との素敵な夢を楽しむために。
■■■
『カフェ・ディオニウス』。
「いらっしゃいませ」
フェイとシェリエは入って来た女性客を迎えた。
ここはシェリエ達のカフェで恋人のフェイはお手伝い中だ。
そのフェイのお手伝いぶりはというと
「……注文の品は以上で」
注文品をテーブルに並べたり
「オススメは……」
オススメを聞かれて客に教えたりと接客を頑張っていた。ただし、注文を取るのはほとんど女性客のみだが。
時には
「……(ふふん、練習したからコーヒーも並ぐらいには上達した。これもシェリエを助けるためだ)」
コーヒーを淹れる事も。顔は無表情だが胸中ではシェリエの手伝いが出来ると満足。
とにもかくにも忙しく頑張って無事に一日を終える事が出来た。
閉店後。
フェイは店の片付けはやるからとシェリエの他の姉妹に言って先に仕事を上がって貰い
「……(これでシェリエと二人きりだ)」
恋人だけの時間を作りいちゃいちゃしようと企んだ。
「フェイ、コーヒー入れるの上達したね。お客さん、美味しいって言ってくれてるよ」
シェリエは楽しそうにフェイに話しかけながら片付けをする。
「……そうか。シェリエの役に立っているのなら嬉しい(散々練習して最低限コーヒーを入れられるように頑張ったんだ。当然だ)」
フェイはコーヒー練習の日々を振り返っていた。練習のために試飲をさせた地球人の契約者から“お湯に焦げカス混ぜたような味”とか“極限まで薄めたアメリカンコーヒー”とか散々な事を言われて、その度にボコボコにして苦労に耐え抜いた日々を。
「ありがとう、フェイ」
シェリエはフェイに礼を言った。
この後、二人は今日一日の事をお喋りしながら片付けを続け、あっという間に終わらせた。あまり現実と変わらない幸せな時間を過ごしていた。片付けも二人にとっては大事は恋人の時間なのだ。
片付け終了後。
「……片付け終わりっと。フェイ、お疲れさ……」
シェリエが振り返り、労いの言葉をかけようとした瞬間、
「シェリエ、今日もお疲れ様」
後ろから自分を抱き締める温かな感触と労う優しい言葉がふんわりとシェリエを包み込んだ。
「フ、フェイ!?」
シェリエは突然の事にびっくりするも悪くないと言った顔。
「……本当はもっと早くこうしたかったけど、仕事中にするわけにいかないからずっと我慢してた。だから今なら……」
フェイはそっと耳元で甘えて恋人を抱き締めたまま。仕事中は同じ空間にいても恋人としていちゃつく時間では無いので。
「……フェイ」
シェリエはそっと自分を抱き締めるフェイの手に自分の手を重ね、微笑んだ。
「……私ね、シェリエとこうして恋人として一緒に過ごせてる事がすっごく嬉しいんだ。だって、シェリエは素敵な彼氏がほしいって常々言ってたから、女の私じゃどうしたって無理な話でしょ?」
フェイは今がどれだけ幸せなのかを語り始めた。
「……」
シェリエは茶々を入れずに静かに耳を傾けている。
「だから思いを伝えても伝えなくても、良くてずっと友達。最悪そのままお別れになるって思ってたんだ」
フェイは伝えたくとも伝える事が出来なかった日々を思い出していた。あの時、こんなにも間近でシェリエを感じる事が出来るとは、思い描いていた事が現実になるとは想像もしなかっただろう。
「だから今はすっごく幸せ」
フェイは抱き締める手に力を込めた。欲しくて欲しくてたまらなかった幸せが今腕の中にある。それを離すまいと思うと力の一つくらい入る。
「……ワタシも幸せだよ。恋人と一緒にお店で働いて……お店が終わってもこうして……」
シェリエはフェイの語りと間近で感じるフェイの吐息に思わず頬を染め言葉も濁ってしまう。
「だって、なりたいから。私はシェリエの言っていた“素敵な彼氏”にはなってあげられないけど“ステキな恋人”って呼ばれるぐらいに。だから、隣で見守っててほしいんだ」
フェイはそう言ってシェリエを解放し
「……フェイ、ありが……」
シェリエが感謝の言葉を言い切らぬ内にキスの雨を降らせてから
「……シェリエ、愛してる」
深く口付けをした。甘いものが苦手なシェリエに甘い時間は好きになって貰いたいと思いながら。目覚めが訪れるまで恋人だけの甘い時間は続いた。
■■■
覚醒後。
「……喫茶店の手伝いはともかく……閉店後にあんな事……」
フェイは見た夢にびっくりしていた。確かに恋人と過ごす夢を見たいと思ってはいたが、
「……あんな事、は、恥ずかしくてできるわけない!!」
予想以上の内容に恥ずかしさ最大級。幸せな内容には違い無いのだが。
「こ、今度シェリエと会ったらどんな顔すればいいんだろうか……あうぅ」
閉店後の恋人との時間を思い出し思わず頭から湯気を出していた。
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