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子供たちへ



 自宅でのんびりとしつつ、鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)は二人の子供たちを見守っていました。
 まだ生まれて間もない双子の、真香と流一郎です。
 国軍の激務の中、子育ては結構大変なことなのですが、そのへんはうまく夫婦で手分けしてやっています。そのおかげで、育児も板についてきたというところでしょうか。
 本来ならば、片方が専業で育児をすればいいのでしょうが、なかなかそうもいきません。そのため、うまく交代しながらの育児ということになります。
 子供たちには多少の不便をしいてはいますが、そのうち分かってもらえるでしょう。
 とはいえ、そのうち、暴れる二人の怪獣たちをなんとかしなければならなくなるでしょう。そのときは、優しく諭すように、でもしっかりと躾けることにするつもりです。
「じゃあ、行ってきます」
「ああ、子供たちのことは任せておけ」
 家を出る妻を鷹村真一郎は笑顔で送り出しました。今日は、パートナーたちとの慰労会にでかけるとのことです。本来なら鷹村真一郎と子供たちも同行するべきなのでしょうが、まだ子供たちを連れての遠出は心配があります。そのため、鷹村真一郎が子供たちの面倒をみて留守番ということになりました。その方が、妻のパートナーたちの方も気楽でしょう。
 お互いの行動については、鷹村真一郎は寛容でした。
「さてと、今日はおとうさんとずっと一緒だぞ」
 鷹村真一郎は、そう子供たちに語りかけました。


慰霊碑へ



 パラミタ内海を見下ろす小高い丘の上。ここに、一つの慰霊碑がありました。
 かつて、海賊島での戦いで命を落とした者たちのための物です。
 そこに花を手向ける者たちがいました。シニストラ・ラウルスデクステラ・サリクスです。
「まっ、復讐はできなかったが、今のパラミタはそう悪いもんじゃない。綺麗事も、汚れ仕事も、契約者たちがやってくれるからな」
 慰霊碑の裏に自ら刻んだゾブラク・ザーティアヴァイスハイト・シュトラントの名を指でなぞりながらシニストラ・ラウルスが言いました。
「とりあえず、裏の配送業だけでも、昔の仲間は食っていけてるから。まあ、たまには、足のつかない同業者からいただきもしてるんで、相変わらずってところかしら。もうしばらくは、ここから眺めていてね、私たちを」
 デクステラ・サリクスがそうつけ加えます。
「さてと。それじゃあ、さっそく仕事に行くとするか。じゃあな、また来るぜ」
 そう言うと、シニストラ・ラウルスはデクステラ・サリクスと共に丘を下りていきました。
 途中、天気もいいのに、空で何か稲光のようなものが走りました。
「何かしら、今の?」
 デクステラ・サリクスが、怪訝そうに空を見あげます。けれども、それきり何も起こりませんでした。
「ただの雷だろう。行くぞ。あっ、坂道をなるべく気をつけてな、転ばないように」
「分かっているわよ♪」
 デクステラ・サリクスが、もう心配性なんだからと、シニストラ・ラウルスに微笑みました。